第19話 初めて共有したのは罪

文字数 4,491文字

 翌日から孔雀(くじゃく)はまたベッドに逆戻り。
螺鈿(らでん)宮を出て、来た道の水晶回廊《すいしょうかいろう)まで戻った時、「ちゃんとつっ返したのかい。それともひっかけてやったの」と問い詰めた緋連雀(ひれんじゃく)を見上げて、孔雀(くじゃく)は「ごめん、飲んじゃった」と呟いたのだ。
「なんか、やっぱり気持ち悪くなってきた」と青い顔で言われて慌てた緋連雀(ひれんじゃく)は大急ぎで孔雀(くじゃく)の私室の浴室に妹弟子を引っ張り込むと、口に手を突っ込んで吐かせて水を飲ませた。
「このバカ!」と孔雀(くじゃく)を怒鳴り、驚いて様子を見に来た(つばめ)に向かって黄鶲(きびたき)を呼んでこいと更に怒鳴りつけた。
燕《つばめ)に話を聞いて顔面蒼白で現れた黄鶲(きびたき)はぐったりしている孔雀(くじゃく)とヒステリックに叫んでいる緋連雀(ひれんじゃく)に一瞬身が竦んだが、すぐに浴室に飛び込んで処置をした。
一体全体何の毒物だったのかわからないままだが黄鶲(きびたき)の処置が早かった。
毒物が触れた舌と口内、喉、食道と胃は火傷したかのように(ただ)れていたが、緋連雀が吐かせたおかげでそれ以上は到達しなかったらしい。
高熱が出て、リンパが腫れた。
きっかり三日意識が無く寝込んだが、今はだいぶ良い。
そんな事実があった事は当然宮廷では知らされない。
総家令は体調不良でまた寝込んでいると伝わり、今度の総家令はなんと虚弱だ、まだ子供だから知恵熱ではないのかと噂された。
実際、よく熱を出すので、それは否定出来ないのだが。
今朝も緋連雀(ひれんじゃく)が朝一番に現れて、孔雀(くじゃく)の口に缶詰の桃を突っ込んで、バカ!と怒鳴って部屋を出て行ってしまった。
厨房を預かる白鴎に言われて、毎日孔雀(くじゃく)に缶詰の桃を運んで食べさせに来るのだが、まだ怒っているのだ。
「・・・緋連雀(ひれんじゃく)お姉様、まだ喋ってくれないの」
孔雀(くじゃく)はまだ掠れた声で呟き、しゅんとしながら痛む喉で桃を飲み込んだ。
採血をしていた黄鶲(きびたき)がため息をついた。
「仕方ないわよ。・・・桃、食べちゃいな」
孔雀(くじゃく)はなんとも悲しい気持ちで泣けてきた。
意地悪なところのある緋連雀(ひれんじゃく)ではあるが、話してくれないなんて初めてだ。
「お前も悪いよ。どうして飲んだの。形だけのものでいいって(ふくろう)お兄様が言っていたんでしょう」
「・・・芙蓉(ふよう)様の気が済むならそれでいいかもしれないと思ったの・・・」
孔雀(くじゃく)はそう呟いた。
「・・・甘いほうがいいでしょうってとても甘くしてくださって・・・。芙蓉(ふよう)様からしたら、そんなのどうでもいいはずよね」
口当たりをよくして飲ませやすく、とかそういう類のものではない。
もし、孔雀(くじゃく)が毒を飲むのなら、最後に口にするものは少しでも甘いほうがいいだろうという優しい気持ちがあったのだろうと思うのだ。歪んでいるけれど。
でもそんな事を行ったら緋連雀(ひれんじゃく)はきっともっと怒る。
「・・・孔雀(くじゃく)、あのね。二妃様・・・木蓮(もくれん)様がお倒れになった時、そばにいたのは緋連雀(ひれんじゃく)なの」
孔雀(くじゃく)は驚いて姉弟子を見上げた。
「だからね、緋連雀(ひれんじゃく)は怒ってるんじゃないのよ。悲しいの。・・・後でちゃんと話して仲直りしなさい」
黄鶲(きびたき)はそう言うと、孔雀の頬をつねった。

 美貌の宮廷育ちは、ぶすくれていてもきれいだった。
孔雀がごめんなさい、とカステラが二切れ乗った兎の形の皿を差し出して謝ると、緋連雀(ひれんじゃく)は釈然としないまでもカステラを掴んでぺろりと食べてしまうと頷いた。
「・・・何で飲んだのよ」
螺鈿(らでん)宮で何か出されても、飲むな、食うな、つっ返せ、出来るならひっくり返してやれ。
血の気が多い彼女は孔雀(くじゃく)にそう言い含めていたのだ。
なのに、と、妹弟子のバカさ加減というより、裏切られた気持ちと、昔を思い出して辛かった。
「・・・・木蓮(もくれん)様ってさ。変わった女だったのよ。そもそもギルド筋の妃なんて数合わせだけどさ。海外育ちの元小学校の先生だもの。後宮からしたら異例で異色で異常よ。でも結構お構いなしな感じで、宮廷にいる子ども集めてよく学校ごっこしてたの。書き取りに暗唱。サボると黒板を叩くの。えらいスパルタだった。・・・学校ごっこが終わると、おやつを頂くの。子供達がいつでも食べれるようにって、ボンボン入れにお菓子がいつも入ってた。あの時、私が食べたのは、赤いチョコレートボンボン。木蓮(もくれん)様が食べたのは、緑色のチョコレートボンボンだったの」
その後、木蓮(もくれん)はなんだか気分が悪いと言って、疲れたのかそれとも熱中症かしら、なんて言っているうちに、意識を失ったのだ。
緋連雀(ひれんじゃく)は驚いて、母である猩々朱鷺(しょうじょうとき)と典医である黄鶲を呼んだ。
猩々朱鷺(しょうじょうとき)と、黄鶲(きびたき)、女官長が駆けつけた時にはすでに木蓮(もくれい)の鼓動は止まっていたのだと思う。
(おびただ)しい出血の血だまりの真ん中に木蓮(もくれん)緋連雀(ひれんじゃく)は座り込んでいた。
「・・・何をどうやっても、血が止まらなかったのよ。・・・・あの時、二妃様はご懐妊されていたんだと思う」
「・・・黄鶲(きびたき)お姉様が言ったの?」
二妃が第二子を妊娠していたという公式文書は作られていなかったはすだ。
「・・・誰もそうは言わないけど・・・。あの時、私が触ったのは間違いなく胎児よ」
血の海で、血よりも赤く、青くて白いあの塊は、人間の胎児だ。
ああ、と孔雀は頷いた。
公式文書にそのどちらも記載して居なかったのは、きっと白鷹(はくたか)(ふくろう)の裁量だ。
「・・・当時はまだ、懐妊してその子を無事産めなかったら妃は処罰される決まりがあったからじゃない?生死は問わないで送検されるもの」
ギルド出身の妃である木蓮(もくれん)の立場はそれほど盤石なものではない。
彼女の実家からしたら娘を亡くし、更に処罰されたとあってはあまりにも酷といものだろう。
白鷹(はくたか)(ふくろう)は、木蓮(もくれん)とその実家、ひいてはギルドの立場を守ったことになる。
そんな話はどうでもいい緋連雀(ひれんじゃく)は舌打ちした。
「・・・皇后がやったのよ・・・」
それは、当時を知る家令の間では共有された秘密であった。
でも、そこまでする理由が孔雀(くじゃく)には見当たらないのだ。
そもそも圧倒的優位の立場の芙蓉(ふよう)正室が、それこそ数合わせの妃にそれほど興味感心を向ける必要もないのだから。
「・・・・皇后様に太子殿下がお生まれになった時、琥珀(こはく)様が翡翠(ひすい)様の次の皇帝は皇太子とするとお決めになったんでしょう。瑪瑙(めのう)様も了承されたって」
望まれた太子、恵まれた太子。幸福の太子。
王位を簒奪するような事実も多かったこの王朝において、これ程待ち望まれた王子は未だ(かつ)ていない。
公式文書に残っている以上、皇太子のその地位は揺らがない。
すでに二妃には長子もいたが、琥珀が彼の将来の即位を認めなった以上、今更、その子が王座に付くなど考えづらい。
「・・・二妃様を許せなかったんでしょうよ・・・。今度はあんただんて冗談じゃない・・・」
だから、許せないのはなぜだとは聞けず、孔雀(くじゃく)は姉弟子を抱きしめた。
「・・・泣かないで、緋連雀(ひれんじゃく)お姉様・・・」
「・・・泣いてないわよ、あんたでしょ。泣いてばっかいるの」
孔雀(くじゃく)が笑った。
「・・・お姉様は怒ってばかりいる」
緋連雀(ひれんじゃく)白鷹(はくたか)もそうなのは、泣けないからだ。
「笑わないでよ。今回はもう本当に怒ってんのよ、私。・・・翡翠(ひすい)様もよ」
孔雀(くじゃく)は、はっとした。
「・・・だって。翡翠(ひすい)様はご存知ないでしょ」
家令のうちで起こった事は家令の内で済ませる。
家令の事は家令が始末をつける。それが鉄則だ。
翡翠(ひすい)には黄鶲(きびたき)が「孔雀(くじゃく)はまた熱を出しました」とだけ言ってくれたはずなのだ。
だからこそ、翡翠(ひすい)からだという見舞いの品がテーブルにあったのではないか。
「・・・私がぶちまけたから知ってる。あんな腰抜け、そもそも嫌い」
孔雀(くじゃく)は飛び起きてベッドから降りた。
立てずにそのまま腰から床に尻餅をついた。
「・・・ちょっと!?
緋連雀(ひれんじゃく)が驚いて声を上げた。
孔雀(くじゃく)緋連雀(ひれんじゃく)の腕を引っ張った。
「お姉様、服着るの手伝って・・・!」
漆黒の家令服を指差した。
 
 たった数日で体力と筋肉が落ちて力の入らない腰を、普段は苦しいから嫌だと盛装と軍装備以外には絶対に使わない硬いコルセットできつく締めて孔雀(くじゃく)緋連雀(ひれんじゃく)螺鈿(らでん)宮に向かった。
出会う女官達の視線がどうも非難めいている。
今夜は翡翠(ひすい)皇后(こうごう)を訪れているのだ。
(ちょう)を得たとは言え、家令が何をしに来た、というところだろう。
もともと、女官と家令は相容れない。
さらに総家令が寵愛されたとあっては仕える主とは敵対する事になる。
ずっとそうやってきたのだ。
総家令が嫉妬して邪魔しに来たのだろうね、今度の総家令はなんと不敬、と女官達は囁き合った。
勿論(もちろん)緋連雀(ひれんじゃく)が一睨みすれば、そっと目は伏せるが。
皇后の部屋の前で老女官が出迎えた。
彼女もまた孔雀の姿を見て非難の視線を寄越したが、戸惑いの色もまた含んでいた。
雉鳩(きじばと)はどうしたのだろうと兄弟子の姿を探して、孔雀(くじゃく)は不思議に思った。
職務を放棄するような兄弟子ではない。
家令に指示できるのは総家令と、皇帝だけだ。
となれば、当然、翡翠(ひすい)が下がらせたのだろう。
孔雀(くじゃく)は小さく息を吐いた。
「・・・総家令が参りました。どうぞ皇后様にお取り次ぎをお願い申し上げます」
孔雀(くじゃく)がそう言うと、彼女は首を振った。
「今宵は皇帝陛下のお(いとな)いでございます。ご命令でありましても、どうぞお引取りを」
緋連雀(ひれんじゃく)が睨みつけた。
退()きなさい。押し入るわよ」
緋連雀(ひれんじゃく)は軍人家令だ。腕っ節も血の気の多さも知られている。
しかし、老女官はひるむ様子もない。
孔雀(くじゃく)は頭を下げた。
「・・・ならば、どうか翡翠(ひすい)様にお取りなしくださいまし。命令などではありません。押し行ったりもしません。どうか、これはお願いですので・・・」
老女官は困惑したように目を僅かに震わせた。
この総家令が毒杯を飲んだおかげで、孫娘は救われた。
だが、と老女官の葛藤が見て取れた。
中から、翡翠(ひすい)の声がした。
「入りなさい、総家令」
孔雀(くじゃく)は老女官と姉弟子に礼をしてから、するりと体を扉の隙間に滑り込ませた。
再び閉じられた扉の前で、老女官と女家令が押し黙ったまま対峙していた。

 部屋に入ると、孔雀(くじゃく)は息を飲んだ。
空気の質が違う。
間に合わなかった・・・。
皇后の私室の奥のベッドの天蓋の向こうに、確かに気配がする。
そして、奇妙な音。まるで壊れた木管の楽器を無理やり吹いているような音。
それが彼女の呼吸なのだとわかると、孔雀(くじゃく)はその前に泰然と座っていた翡翠(ひすい)を見た。
目が合うと孔雀(くじゃく)はそっと翡翠(ひすい)の手を取った。
翡翠(ひすい)孔雀(くじゃく)を横に座らせた。
それから、二人は一時間近くそうしていた。
初めて共有したのは、愛でもなく喜びでもなく希望でもなく、罪。
夜明けに皇后崩御の知らせが宮廷にもたらされた。

 それより二時間程前。
「陛下。この度は総家令の挨拶を受けました。おめでとうございます」
芙蓉がそう言って翡翠を出迎えた。
「あんなに可愛い総家令が来るのなら、私ももっと自重すればよかったかしら」
「何を飲ませた」
芙蓉は答えず笑った。
「貴方がここに来たということは、持ち直したんでしょ」
「三日昏倒して今朝目を覚ましたそうだ。黄鶲が成分検査すると言っていたけれど、確かな治療法は見つからないかもしれない」
「あら、そうなの。・・・ねえ、翡翠。あの子は貴方にとって、何」
「福音」
ふうん、と芙蓉は頷いた。
「私、もう待ちくたびれたわ」
自分の左手の青い宝石のついた指輪を眺めているばかりで、翡翠の質問に答える気はないらしい。
そうか、と翡翠は立ち上がった。
「ならば、自分で死ね」
そう言うと、彼は寝室に促した。
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登場人物紹介

⁂孔雀《くじゃく》  宮廷家令

十歳で問答無用で宮廷家令に召し上げられる。元は継室候補群十一家のうちの棕梠家の生まれ。(実績が低いので宮廷での信用は低い)。 本名は棕梠 杏花春雨《しゅろ きょうかしゅんう》。

皇帝である翡翠帝により、十五歳で宮宰である総家令を賜る。

実家は、ギルド筋と言われる商業経済活動を生業とする立場にある。砂糖商から身を起こし現在は製菓業。異種多種経営で建築資材、水産加工品、食品流通等様々であるが、今も昔もカステラが一番有名。通称カエルマーク。

国を超えて経済活動をするギルド筋の人間には珍しくないが、どこかで外国の血が混ざっていて、青菫色の瞳をしている。

棕梠家は双子が多く生まれる家で、孔雀はいわゆるバニシングツイン(周産期で双子が一人になってしまう。生き残り)。

その場合、名前を二人分つけるという習慣があり、杏花・春雨という変わった名前になっている。

海軍所属。十二歳から軍属に就く。

金糸雀、緋連雀と共に女官試験にパスしているので、宮廷では三人官女と呼ばれている。(陰ではゴーゴン姉妹と揶揄されている)。

小さな頃から軍で働いていたので、自国ではヒヨコちゃんやフラッフィー等と呼ばれていたが、後に悪魔の王《ルシファー》という渾名で敵国から認識されるようになる。

神殿の神祇官。大神官になれる素養があるとされる。

異能を持つ天眼(結構いる)の生まれ。

個性の強い大人に振り回されて奮闘中。

実用性のみの特技はいろいろあるが、マグロの解体が出来る。

頑健な者ばかりの他の家令より多少虚弱でよく寝込む。

⁂金糸雀《カナリア》  宮廷家令

母親が女家令の青鷺《あおさぎ》。父親が梟《ふくろう》。生まれながらの宮廷家令の身分。

海外の寄宿舎育ちで、幼少から天才少女と誉高く、家令の身分ながら、官僚試験の殿試を二位である榜眼《ぼうがん》でパスしている。また女官試験もパスしているので、孔雀、緋連雀と共に三人官女と呼ばれている。(裏ではゴーゴン姉妹と揶揄されている)

軍事法廷専門の弁護士。

陸軍所属。十ニ羽の五色鶸《トゥェルブ・ゴールドフィンチ》部隊を率いる。

渾名は、人食いワニ《マンイーター》。

宮廷では、報道官を務め、また後宮内の服飾の管理、軍の装備品の開発を担当している。

神殿《オリュンポス》の神祇官。

ボウルルームダンスのチャンピオン保持者であり、アスリートタイプ。

真鶴に唆されて、白鴎と一ヶ月だけ結婚していた。結婚生活は正味十日程度。

白鴎の浮気に激昂して、白鴎を半殺しにして病院送りにして、一人で新婚旅行を楽しみ現地でデートクラブを経営して荒稼ぎしていた。

結婚式の準備と離婚のお詫び行脚を丸投げされた孔雀から恨まれている。

⁂緋連雀《ひれんじゃく》 宮廷家令

母親が女家令の生まれながらの宮廷家令の身分。三代続く女家令。

祖母は大戦の折に戦歴を称えられ、当時の黒曜帝の公式寵姫でもあった美貌の女家令、巫女愛紗《みこあいさ》。

母親は、アカデミー長の猩々朱鷺《しょうじょうとき》。

宮廷で育った為、自他共に認める美貌と教養を鼻にかけている節があり、「宮廷育ちの根性曲がり」と陰口を叩かれている。

少女の頃から宮廷画家であり人間国宝の画聖・淡雪を師匠に日本画を修練し、雅号を持つ逸材。

宮廷に関わる男を手玉に取り一財産築きつつある。

孔雀、金糸雀と共に、女官試験もパスしているので、三人官女とも呼ばれる。(裏では、ゴーゴン姉妹と揶揄されている)

海軍所属の出世頭。渾名は、火喰蜥蜴《サラマンダー》。

聖堂《ヴァルハラ》所属の司祭。

バレエのエトワールであり、招かれて海外公演もこなす。

第二太子の天河曰く、「殺し屋のようなオデット姫」。

外見は華やかな美貌であるが、中身は中年男性に寄りがちな食生活と生活態度であり、軍隊の猛者がドン引く程の下ネタが得意。

⁂白鷹《はくたか》   宮廷家令

翡翠帝の母親である琥珀女皇帝の総家令であった。

現在は離宮で琥珀のもとに仕えているが、宮廷での影響力は未だ健在。

若き時代、皇女であった琥珀と共に大戦の前線を駆け抜けた強者であり、大戦で多くの家令が戦死した中で、数少ない生き残り。王族のうちでも皇統下位であった琥珀の帝位簒奪に尽力した。

後進に対して教育熱心であるが、性格は非常に自分勝手で激しいものがある。

大戦当時の神殿の神官長でもあった王族に、弟弟子である大鷲《おおわし》が監禁されていたのを不服に、報復の為に神殿を焼き討ちした過去があり恐れられている。

人肉を屠るダキニ、人肉を喰らうダキニと呼ばれている。

子供の孔雀に目をつけて、問答無用で召し上げた。

現在も家令達を統率している。

神殿《オリュンポス》の神祇官。

⁂梟《ふくろう》   宮廷家令

翡翠の叔父、琥珀の弟に当たる瑪瑙帝の総家令。

白鷹と共に、孔雀を宮廷家令に召し上げた。

金糸雀の実父であり、青鷺の元夫。

大戦の折に、若くして従軍した生き残り。

聖堂《ヴァルハラ》の司祭。

武闘派の白鷹に対して、梟は陰険な策謀家で知られていて、宮廷ではその情報を掌握して恐れられている。

渾名は死神。

⁂雉鳩《きじばと》    宮廷家令

父親が王族、母親が琥珀帝の父親である黒曜帝の総家令の白雁《はくがん》と黒曜帝の皇妹の娘。

宮廷では緋連雀と共に美貌を知られている。ウェストは緋連雀より細い。

アカデミーで医師の資格を取っているが精神科医で臨床経験はない。

海軍所属。渾名は大海蛇《シーサーペント》。

聖堂《ヴァルハラ》の司祭。

書道の大家。

本名 羽黒山 稼頭男《はぐろやま かずお》

自分の美意識に合わず、本名を隠したがる。


⁂白鴎《はくおう》    宮廷家令

ギルド筋出身。金融業を生業とする、ギルド長を務める百目木《どうめき》家の次男坊。

金融、マスコミ、宗教関係は正室、継室共に入宮は出来ない規則があり、継室候補群ではない。

海外に留学中に己の悪徳の致すところで勾留の憂き目に遭い、父親が梟に泣きつき、裁判にて無罪となる。

家令にする事を条件とされていた為に、放免後そのまま宮廷家令の身分となる。

陸軍所属。作戦中に部隊がほぼ壊滅状態となり、軍属から離れている。

聖堂《ヴァルハラ》の司祭。

真鶴に唆されて、短期間だが金糸雀と結婚していたが、すぐに離婚。

金糸雀に半殺しにされて入院した経験がある。

留学中に伝統ある料理学校と三ツ星シェフの元で修行をしたオーベルジュでの勤務の経験もあるシェフでもある。

本名 百目木 円《どうめき まどか》


⁂大嘴《おおはし》   宮廷家令

聖堂《ヴァルハラ》の教皇座を出している家柄の出身の三男坊。

大嘴を家令にする事を条件に、梟によって、議会に置いて大戦で失われた大聖堂の再建予算案が通った。

空軍所属。聖堂《ヴァルハラ》の司祭。

付き合いがよく、上の世代に育児放棄されつつも孔雀と燕とガーデンで自活した経験がある。

翡翠の第二太子である天河《てんが》と共に、一時海外で共に生活をしていた。後に正式な侍従となる。

本名 英 三郎《はなぶさ さぶろう》

⁂燕《つばめ》   宮廷家令

宮廷家令。

母親が女家令であり梟の実妹の木ノ葉梟《このはづく》。

宮廷育ちで、幼い頃から宮廷で使い走りをしていた。

家令の教育期間であるガーデンに行った途端に、上の世代から育児放棄されて孔雀と大嘴と自活する。

実母も、周りの姉弟子兄弟子も強烈な為、家令の中でもマイペースな孔雀と大嘴との擬似家庭を結構気に入っていた。

⌘翡翠《ひすい》   王族・皇帝

琥珀女皇帝と継室であった椿《つばき》との間の第二太子。

叔父の瑪瑙の跡を継いで皇帝となる。

琥珀の時代の皇帝であった長兄の真珠帝が背信罪となり、琥珀帝と当時の総家令の白鷹により、侍従であった家令の川蝉《かわせみ》と共に、討伐の命を受けた。

アカデミーでドクターの資格を修めたが、臨床の経験はない。

王族の慣例に則り、十五で婚姻。正室である元老院筋の芙蓉《ふよう》皇后。第二妃として、ギルド筋の継室の木蓮《もくれん》、三妃として、議員筋の紅小百合《紅小百合》がいる。

それぞれの后妃との間に、皇太子の藍晶《らんしょう》、第二太子の天河《てんが》、皇女の紅水晶がいる。


孔雀を総家令に任命した。

孔雀の若さに注目した宮廷の人間から、特殊な性癖の持ち主なのかと噂される。

半分、妹である真鶴、翠玉皇女への当て付けで孔雀を総家令に任命して、伽に招いた。

残り半分の、都合の人事としての総家令任命であったが、徐々に孔雀との間に真摯な関係を結ぶようになる。

人々から愛隣王という称号で呼ばれるようになる。

外見の物腰が柔らかで繊細に見えるが、内面は結構雑

母親である琥珀にそもそもあまり親近感はない。

⌘藍晶《らんしょう》   王族・皇太子

翡翠と、芙蓉皇后の間の皇太子。

母が元老院筋の大貴族の出なので、元老院派の支持も篤く、またリベラル派でもあり若手議員からも信奉されている。

生来の貴公子であり、国内外からも人気がある。

社交界の華であり、数多くの浮名を流しているがそれもまた人気。

第一子、皇太子が後継とは限らない王朝において、琥珀帝によって生まれながらに皇位を約束された「幸福な王子」。

本来は十代半ばで婚姻を済ませているはずだが、不服としていたが孔雀により延期となり、また宮宰としてたち働く孔雀を、気の毒に思いながらも都合のよい総家令として満足している。

⌘天河《てんが》    王族・第二太子

翡翠と二妃・木蓮の間の第二太子。母親がギルド筋であり、特殊な案件で早逝した為、宮廷では冷遇されていた。

アカデミーで、宇宙物理学を専攻して、研究と共に教鞭にも立っている。

母親の死後、一時期、ギルド長を辞した祖母と、アカデミー教授であった祖父と共に海外で暮らしていた。

大嘴とは兄弟のように育つ、遊び仲間でもある。

少年の頃、孔雀を気に入り、母親である二妃と翡翠の侍従であった川蝉が宮廷に招こうとしていたが、孔雀が家令となり、総家令として宮廷に仕える事になったのを不服に思っていて、原因であり無神経な言動をする梟を恨んでいる。

王族に見られる、異能の龍現の生まれとされるが特に何か特別な才能は見られない。

父親である翡翠と逆で、見た目は鷹揚だが、中身が神経質なところがある。


母親が亡くなった宮城から距離を取って成長し、更に孔雀が総家令になった事で更に足が遠のいていたがアカデミーで問題行動を度々起こしていたが、孔雀が歩み寄った事で、徐々に宮廷や家令達と関わるようになる。

浮世離れたした人間の多い宮廷においては数少ない常識人であり、その点から苦労性である。

⁂鵟《のすり》    宮廷家令

本名・篠山 茜《しのやま あかね》。高校生。母親と母親の夫、その妹と暮らしていた。実父は死亡。家庭環境としては恵まれたものではなかった。

父方の曽祖父が宮廷家令であるとの事で、スカウトされ、了承する。

戸惑いながらも、少しずつ家令としての生活に希望と自意識を見出す。

家令としての孔雀に興味を持ち、あれこれと物語を聞かされる事になる。

⁂黄鶲《きびたき》    宮廷家令

川蝉《かわせみ》の妻であり、尉鶲《じょうびたき》の実母。

翡翠により宮廷の終身典医としての地位を与えられている。

二妃が死亡し、他の同世代の家令達が宮城から放逐された時も、終身典医の地位の為に守られた。

アカデミーの医局に勤めるドクターでもある。

前線で医療行為を行うNPO法人も運営している。

趣味は保護猫の去勢。

若かりし頃に一時期、翡翠と関係があった。

宮廷で、青鷺《あおさぎ》、鷂《はいたか》、猩々朱鷺《しょうじょうとき》、木ノ葉梟《このはずく》と共に、妖精《フェアリー》と呼ばれた世代。陰では小鬼《ゴブリン》と揶揄されていた。

聖堂《ヴァルハラ》の司祭。

⌘芙蓉《ふよう》   王族・皇后

 元老院筋の大貴族から入宮した翡翠の正室、皇后。

皇太子である藍晶の母。

後宮の螺鈿《らでん》宮の主。

以前は青鷺が侍従として仕えていた。


前元老院長の親族であり、養女と言う形での入宮であったが、実は、真珠帝と皇后出会った薔薇《そうび》との娘である碧玉公主。

⁂青鷺《あおさぎ》   宮廷家令

金糸雀の実母、梟の元妻。

宮廷で最も思慮深く上品で教養のある女家令と言われている。

芙蓉皇后の侍従として仕えていた。

二妃が亡くなった際、不手際を咎められて白鷹から宮城から放逐されたうちの一人。

孔雀が総家令に就任した際に、恩赦として復位を賜ったが、以来、宮城には戻っていない。

海兵隊所属。

現在、海兵隊の責任者として前線に勤務している。

外見も物事も淑やかなのだが、やはり凶暴な面があり、家令達からはお上品機雷と呼ばれている。

渾名はワイバーン。

黄鶲、猩々朱鷺、鷂、木ノ葉梟と共に、妖精《フェアリー》、小鬼《ゴブリン》と呼ばれた世代。

⁂鷂《はいたか》    宮廷家令

神殿《オリュンポス》の神祇官。

陸軍所属。

父親が大戦で戦死した家令の青鵐《あおじ》。母親が西の副修道院長。

聖堂《ヴァルハラ》の元枢機卿(大嘴の長兄)と深い中になり、問題となった為に現在、海外の機関に出向中、と言う事になっている。

二妃が亡くなった際に、責任を問われて城から放逐された一人。

黄鶲、青鷺、猩々朱鷺、木ノ葉梟と共に、宮廷で妖精《フェアリー》、小鬼《ゴブリン》と呼ばれた世代。

真珠帝の公式寵姫でもあった。

⁂瑠璃鶲《るりびたき》   宮廷家令

翡翠の祖父にあたる黒曜帝の総家令代理を務めた。

黒曜帝が退位後は、宮城から離れアカデミーにて研究の日々に戻った。

元アカデミー長。現在は医聖の称号を得て、アカデミーの精神的支柱。

⁂猩々朱鷺《しょうじょうとき》 宮廷家令

現アカデミー長。美貌で知られる女家令。

母親は巫女秋沙であり、緋連雀は娘。

母親が黒曜帝の公式寵姫であった事から、猩々朱鷺はその娘ではないかと言われている。

(女家令から生まれた者は生まれながらに家令の身分なので、父親の存在は不問でありあまり頓着されない)

陸軍所属。渾名はワイバーン。

聖堂《ヴァルハラ》所属の司祭。


かつて翡翠の第二妃であった木蓮付きであったが、彼女の死の責任を追及されて宮城から放逐された世代の1人。

後、アカデミーで天河を支えた。


真珠帝と大鷲総家令の時代に宮廷で、青鷺、黄鶲、鷂、木ノ葉梟と共に、妖精《フェアリー》、小鬼《ゴブリン》と呼ばれた。

大嘴以上の大喰らいである。

⁂木ノ葉梟《このはずく》 宮廷家令

梟の実妹。

王立図書文書館統括司書。

翡翠の二妃の死によって責任を問われて宮城から放逐された世代の末妹。

空軍所属。聖堂《ヴァルハラ》の司祭。

燕の実母。

白鷹所有の別荘で燕を産んだ。

家令には珍しく小柄だが、1番血の気が多く、小型爆弾と呼ばれている。


真珠帝と大鷲総家令の時代に、青鷺、黄鶲、猩々朱鷺、鷂と共に、宮廷で妖精《フェアリー》、小鬼《ゴブリン》と呼ばれた。

⁂鸚鵡《おうむ》 宮廷家令

本名、五百旗頭《いおきべ》 綾《あや》。

元は宮廷近衛兵、禁軍である軍閥の生まれ。母親が前女官長であったので、姉である現女官長と、白鷹の離宮に出入りを許されていた。真鶴のファン。真鶴が家令の身分に処される時に自らも家令になってしまった。

アカデミーの医学部出身で、茉莉のもとで東洋医学を納めた。

真鶴の為に家政学部も通信で卒業。


現在、前線の野戦病院勤務。

⁂川蝉《かわせみ》  宮廷家令

翡翠の元侍従。離宮に移った瑪瑙帝と梟総家令の時代、当時皇太子であった翡翠と宮城に残り、総家令代理を務めた。

翡翠と共に真珠帝追討の指揮を執った。

ニ妃の死の責任を負い、宮城を放逐された世代。軍中央《セントラル》所属であったが軍属、更に聖堂《ヴァルハラ》の司祭の立場も解かれた。

家令の特殊運用組織であるエトピリカに出向し海外での勤務に当たる。


⁂真鶴《まづる》  宮廷家令

美貌と知性が抜群で、人を惹きつける魅力があり本人もそれは十分自覚している。

なんでもできるし、なんでもやる。

女神のような、または悪魔のようなと評される。

面倒見が良く、弟妹弟子からも慕われている。

人類に貢献する程の研究《ナンバリング》を多数所有。

アカデミー特別委員の1人。

海軍所属。演習で人喰い羆を仕留めた事から、渾名は羆殺し、レディ・タイガー。

神殿《オリュンポス》の神祇官と聖堂《ヴァルハラ》の司祭どちらも務める。


本来は琥珀帝が離宮で産んだ最後の娘であり、翠玉皇女の身分であった。

後見人であった長兄の真珠帝が背信で処された煽りをくって、家令の身分から家令となる。

家令の生活を本人は割と気に入っている。


⁑茉莉《まつり》  

家令の父親とそうではない母親を持ち、家令にはならない事を決めた"蝙蝠"《こうもり》と呼ばれる存在。

家令名は、千鳥《ちどり》。

父親は大戦の生き残りで戦後復興に尽力した唐丸《とうまる》。母親は貴族筋の女官で琥珀帝に仕えた。

翡翠の友人。

アカデミーで東洋医学を研究して学位を取り、教育に力を入れている。鸚鵡も教え子の一人。

家令と反目する軍中央《セントラル》に所属している。

⁂尉鶲《じょうびたき》 宮廷家令見習い

黄鶲と川蝉の息子。

10歳になり、宮城や離宮で家令見習いとして使い走りを始めたばかり。

現在、家令の中で1番の年少者。


§淡雪《あわゆき》  宮廷画家

本名 東雲《しののめ》淡雪

アカデミーに所属する画家。

アカデミー特別委員。

人間国宝、画聖の称号を持つ。

翡翠の学友。

緋連雀の師匠。

作品は宮廷でも人気がある。

継室が欲しがった作品を白鷹も欲しがり、琥珀が倍の値段で買い上げ白鷹に与え騒動になった逸話がある。

本人はあまり物事にこだわらないたちなので、人間関係に巻き込まれる事もなく生きている癒し系。

放浪癖があり、あちこちスケッチ旅行に出かけては戻って来ない。

宮廷画家として大聖堂修復の指揮を執った。

§路峯 隼 《ろほう はやと》 

元老院次席であり、父は元老院長であった。

翡翠の正室、皇后の芙蓉を出した大貴族であり屈指の名門出身。

父の後妻として雉鳩の母が路峯家に入っている。

翡翠の学友。

皇太子である藍晶を支持している。

議員派と親しい皇太子を危惧している。

⌘鈴蘭《すずらん》   皇太子正室

元老院派 比嘉家の二の姫。

孔雀の推薦で、藍晶の正室として後宮に入宮した。

快活で朗らかであり、皇太子宮である象牙宮の若き女主人を務めている。


§揚羽《あげは》    女官長

本名、済 更紗《わたり さらさ》。

旧姓 五百旗頭《いおきべ》。

祖母、母と女官長を三代務める。

宮廷軍閥、五百旗頭家の出身。鸚鵡の姉。

女官は、上位五役までが蝶の名前を戴く。

最も高位の女官長 揚羽。

母もまた女官長であった事もあり、鸚鵡と共に子供の時から琥珀の離宮に出入りしていた。

真鶴とは幼馴染。

⌘紅小百合《べにさゆり》 王族•第三妃

翡翠の三妃。継室候補群議員派の出身。

本名 渡良瀬 香織《わたらせ かおり》

リベラル派だった瑪瑙帝の推薦で入宮した。

紅水晶皇女の母。

正室の地位を望んでいる。

身近に家令を置く事を好まない。

正室、ニ妃が不在につき国内外でファーストレディとして活躍。

⌘木蓮《もくれん》 王族•第二妃

翡翠のニ妃。継室候補群ギルド派出身。

天河の母。

本名 縞野 乃衣美《しまの のえみ》。

母がギルド長、父がアカデミーの教授で外国人であった為、海外で生まれ育った。

天河が10代のうちに宮城で亡くなった。

⌘撫子《なでしこ》   皇帝四妃

本名 一宮 絲子《いちみや いとこ》

元老院筋の貴族の正室候補群である一宮家から翡翠に入宮した。

翡翠帝以外も、皇太子の藍晶の正室、継室、第二太子天河の正室、といずれの縁談にも名前が挙がる程の名家。

食が細く、厨房を預かる白鴎と、孔雀を悩ませている。

§紋白《もんしろ》   副女官長

本名 鏡 華《かがみ はな》

女官の五役の一人。

没落貴族の出身で、女官試験を受けて登用された。

結婚時に一度城を下がったが、その後離婚して復職した。

子供が宮城内のキンダーガルデンで育ち、同じ宮城内にある舎宅に暮らしている。

当初は孔雀に反感を持っていたが、現在では好意的。

同じ貴族出身の四妃に複雑な感情を抱いている。

§銀椋鳥《ぎんむくどり》 宮廷家令

本名 エマ•ダミニ•タシオニ 

母親はアカデミー教授のキーヴァ•タシオニ。

10代でアカデミーに入学を許された天才少女。孔雀が母親のタシオニと親しくなり、孔雀とも友達になる。

家令逹のアカデミーでの宿舎である"止まり木"にもよく出入りをしていた為、天河や大嘴とも親しくなった。

大嘴に憧れて17歳で家令になった。

真鶴を強く意識している。

茜が家令になってくれて嬉しく思っている。

§ヤドヴィカ・タシオニ  アカデミー教授・動物学者

アカデミーで動物学、獣医学を研究、教鞭をとる教授。エマの母親。

アカデミー特別委員の1人。

優秀で、トリッキーなところがある。

アカデミーでの孔雀の師となる。

エマに家令になればいいのにとアドバイスをし、心配だと渋る孔雀を説得した。

⁑ ヘルムート・ネイガウス  A国将校

アカデミーに属するA国将校。

天河の友人。

お互い前線を挟み睨み合う仮想敵国の立場だが、アカデミーでは政治的思惑は不問の為、複雑ながら親交は深い。

A国は皆徴兵制がある為、少年の頃から兵役の経験がある。

軍人一家であり、海軍に在籍している。

◇戴勝《やつがしら》

元敵国•現仮想敵国のQ国母后。

本来は家令の戴勝。

一時、神殿《オリュンポス》で大神官を目指して潔斎に入っていたが、放り出して戦場に戻る。

大戦中に戦死したと記録されているが、実際はQ国で拘束され殺されたとされた目白と共に幼い王の義母として活躍し辣腕を奮っていた。

大神官を目指した事から、"神の花嫁"とも呼ばれ、また、“地獄の門番“とも呼ばれた。

梟曰く、"海賊や山賊のような女家令"。

◇目白《めじろ》

元敵国•現仮想敵国のQ国大宰相。

本来は家令の目白。

大戦中に大司教であったが、停戦の斥候としてQ国を来訪した際に拘束されて処刑されたとされていた。

実際は幼い王の宰相として、義母の立場の母后(やはり家令の戴勝)と共に活躍。

数年前に没。

◇鶍《いすか》

元敵国•現仮想敵国のQ国の太政官。

本来は家令の鶍。

元アカデミー長。

Q国の高官未亡人と出会い、亡命した先で戦死した筈の弟妹弟子の戴勝と目白に再会。

身分保証を約束され大いに貢献。

5人の妻、12人の子供、25人の孫を得た。

20年程前に没。

鵟の曽祖父に当たる。

セリム•リド•ユク

Q国王。

大戦中、宮殿で、冷遇されついた少年時代に、囚われていた目白、勝戴と、家令による"悪魔の契約"を結び、支援を受けて兄3人を葬って即位し、国は大躍進を遂げた。

後宮《ハーレム》に多くの妃がおり、多数の子を持つ。


死んだはずの兄弟子姉弟子が生きていると知った白鷹が差し向けた猩々朱鷺と関係を持った、らしい。緋連雀の父親に当たる。


⌘紅水晶《べにすいしょう》 皇女

翡翠と紅小百合の娘。

母親の意向で家令とはある程度遠ざけられ育った。

Q国皇太子と婚約が決まった。

§五百旗頭 紬然《いおきべ ゆうぜん》

宮廷軍閥、禁軍近衛兵の竜騎士。

鸚鵡と更紗の父親。前女官長の夫。

翡翠への背信疑いとして、元老院除籍、蟄居の処分となっていたが、鸚鵡が名誉回復した事で、自分も許され復籍した。


近衛兵は皇帝の近侍兵であり、大戦中は戦場にはあまり足を向けなかった黒曜帝の以降で実戦闘には関わらなかったのを、白鷹や梟から恨みに思われている。

かつて少年時代に軍神寵姫と称えられていた巫女秋沙に憧れていた。

⁂巫女秋沙《みこあいさ》 宮廷家令

西の修道院長。

猩々朱鷺の母、緋連雀の祖母に当たる。

大嘴の母違いの姉。

かつての黒曜帝の公式寵姫であり、白鷹曰く"ちょっと見てくれがいいのを鼻にかけた緋連雀が逆立ちしたって敵わない美貌"であった。

また軍でも手腕を発揮し、大戦中は軍神寵姫と呼ばれた。

長い間、弟の大鷲の安否が知れず心配していた。翡翠に頼まれて、真珠帝の首を保管していた。

現在家令の中で1番の年長。

長生きのコツは"何もしないこと"。

§真榊 鮎子《まさかき あゆこ》

西の副修道院長。

鷂の母に当たる。

かつて神殿《オリュンポス》に仕えた巫女であった。

大戦中、勝戴の指示で西の修道院に逃れた。

生活能力の低い家令の巫女秋沙の代わりに修道院では様々に実務に携わっている。

⌘瑪瑙《めのう》

琥珀の弟。真珠帝の死後、皇帝位に就いた。

リベラルで知られ、議員を支持していた。

遅くに皇帝となった事もあり、継室は持たずに離宮を好んで過ごす事が多かった。

⌘真珠《しんじゅ》

琥珀と正室の薔薇《そうび》との皇太子。

琥珀の後に皇帝位に就いた。

総家令の大鷲と共に大戦後の明るく豊かで自由な時代を反映するかのような宮廷を作り上げた。

表向きは事故死とされたが、琥珀や旧勢力から背信罪で討たれる。

琥珀に命じられて指揮したのは翡翠。

死罪より重い記録抹消剤となり、宮廷のあらゆる公式文書から名前を消去される。

⁂大鷲《おおわし》  宮廷家令

真珠帝の総家令。

巫女秋沙の母違いの弟。

母親は、大戦で戦死した家令の雷鳥《らいちょう》。

天眼であり、優秀な神官でもあった。

下の世代の家令からの信頼も厚く、面倒見が良かった。

真珠帝が討たれた際に行方不明となった。

⌘琥珀《こはく》帝    女皇帝

白鷹と共に大戦中、前線を走り回った歴戦の女皇帝。

長兄から皇位を簒奪し、皇帝に就いた。

正室との間に真珠、継室との間に翡翠、父親は公表されないままだが翠玉(真鶴)を産んだ。

白鷹を伴い早くに離宮に移った。

革新派の真珠とぶつかり、背信罪で真実を訴追。

宮城に戻る事なく離宮で亡くなった。

§済 武衛《わたり ぶえい》 

宮廷軍閥 禁軍 近衛兵

女官長の揚羽(更紗)の夫。

元老院籍はないが、五百旗頭《いおきべ》家に次ぐ軍閥の名門。

藍晶の護衛官。

⁂仏法僧《ぶっぽうそう》  宮廷家令

元議員 本名 眞弓《まゆみ》如意《にょい》

若手の世襲上院議員だったが、皇太子の恋人に唆された先輩議員と共に総家令である孔雀を襲撃し返り討ちにされた事がきっかけで家令にスカウトされる。

家令には居ない常識人ぶりと爽やかさで、宮廷の女官と官吏に大人気。

海兵隊所属

神殿《オリュンポス》所属

⁂太蘭鳥《たいらんちょう》 宮廷家令


本名 棕櫚《しゅろ》麗《うらら》

孔雀の双子の娘。

アカデミーに入学予定。

生まれてから一度も同じ年頃の子供と団体生活をした事がないので非常にマイペース。

ほぼ雉鳩に育てられた。

後見人は、元皇女の翠玉。真鶴。

⁂金襴鳥《きんらんちょう》 宮廷家令


本名 棕櫚《しゅろ》朧《おぼろ》

孔雀の双子の娘。

アカデミーに入学予定。

生まれてから一度も同じ年頃の子供と団体生活をした事がないので非常にマイペース。

ほぼ雉鳩に育てられた。

後見人は、元皇女の翠玉。真鶴。

⁂菫金剛《すみれこんごう》  宮廷家令

孔雀の息子。

ほぼ大嘴《おおはし》が育てている。


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