第46話 ビックバード・刹那の荒鷲
文字数 2,477文字
ツグミの右手にカードが現出した。
それを見るなり左手の手札の一枚と入れ替える。
「俺はカテゴリー3のビッグバード・双頭の禿鷹を召喚!」
投げたカードが大きな翼のモンスターに化ける。頭が二つある禿鷹だ。異様なのはその形だけではない。左右の頭と身体がちょうど縦に二分したみたいに赤と青に色分けされていた。
双頭の禿鷹は甲高い声で一つ鳴き、ツグミ側のフィールドの上空を飛び回る。
風属性で攻撃力は2200。
このモンスター単体では戦えない。
ユウミが判じているとツグミが手札を切った。
「双頭の禿鷹を召喚したことにより、手札からカテゴリー1のビッグバード・調律の灰鷹を特殊召喚! このモンスターは自分フィールドにビッグバードモンスターが存在するとき手札から特殊召喚できる!」
具現化したのは灰色の翼の鷹。俊敏な動きで空を駆け、ユキの頭上で宙返りをするとツグミの元に戻ってきた。
双頭の禿鷹と並んで飛び始める。
風属性で攻撃力は100。
あれは……。
ユウミがさらなる特殊召喚を予感したとき、ユキが高笑いした。
「そんな貧弱なモンスターを呼び出して私に勝てると思うの? 女の子のピンチに颯爽と現れた割にはずいぶんとお粗末ね」
「ま、見てなって。すぐにおばさんの油断が誤りだと証明してやるよ」
ユキが繭を上げる。
「あなたさっきから失礼ね。おばさんおばさんって私を誰だと思っているの」
「いや、おばさんじゃん」
この返答にユキの顔が真っ赤になった。
「あ・な・た、覚悟しなさいよ!」
「悪役はみんな言うことが一緒だな」
スキルを発動した。
「調律の灰鷹のスキル! 俺は生命力を400支払う。その後、調律の灰鷹と自分フィールド上のビッグバードモンスター一体のカテゴリーをそれぞれのカテゴリーの数値の合計に変更する!」
ツグミの生命力が2000から1600になった。
調律の灰鷹が鳴き、双頭の禿鷹とともに青白い光を纏う。
双頭の禿鷹のカテゴリーは3。
調律の灰鷹は1。
二体のモンスターのカテゴリーの合計は4。
そろってカテゴリー4となったビッグバードたちを目にしてユウミの予感は期待に変わる。
ユキがスキルを行使した。
「リンボにあるデイドリームバタフライ・強欲のハンナのスキルを発動。相手がスキル・魔法のコストとして生命力を支払ったとき、このカードをゲームから除外してコストとした生命力の数値と同じダメージを与える」
「くっ」
ツグミの生命力が1200まで下がる。
だが、ユウミは不安を覚えなかった。
大丈夫。
このくらい、ツグミさんならどうってことない。
彼の強さは知っていた。
百戦錬磨のベテランエンカウンターをも舌を巻くその力は、この程度のことで衰えたりする訳がない。
ユウミの熱い視線に気づいたらしく、ツグミが微笑みで返した……ような気がした。
ツグミが両手をクロスさせる。
ユウミの期待が頂点に達した。
「俺はここでサモニング!」
二体のビッグバードたちがより高く飛翔し、光の筋となる。
「双頭の禿鷹と調律の灰鷹で魔方陣を形成、エクストラ召喚!」
二筋の光は天に魔方陣を描いていく。
来る!
ユウミは自分がドキドキしているのを意識した。ツグミに対してだけではない。これから出現する特殊モンスターに対しても、だ。
完成した魔方陣が妖しく光り、一体のモンスターを生み出した。
ツグミが口上を述べる。
「気高き空の王者よ、その大いなる翼を翻し、全ての敵を駆逐せよ!」
それは濃い焦げ茶色の体毛をした猛禽類。
翼の先と尾と足の部分が白く、遠目でもその白さが目立つ。鋭い嘴も立派でオレンジ色がよく映えた。
体長は三メートルくらい。一般的な大鷲の三倍はある。このサイズで翼を広げたらどれだけの巨大さになるのか……ユウミはもちろんわかっていた。
七メートルは余裕で超える。
ツグミが名を呼んだ。
「カモン! グレード8、ビッグバード・刹那の荒鷲!」
呼応するように刹那の荒鷲が鳴く。
風属性で攻撃力は3000。
ユキが手札を抜いた。
「魔法カード『貴婦人の誇り』を発動。元々の攻撃力が私のフィールドの特殊モンスターより高いモンスターが召喚または特殊召喚されたとき、そのモンスターを破壊する」
「なっ」
ユウミが驚きの声を上げるが、ツグミに動じる様子はない。
一枚のカードが飛んだ。
「カウンターマジック『ディスペル』を発動! 直前の魔法効果を無効にする!」
魔法を防がれたユキが表情を歪める。
これでユキの手札は0。
すごい。
ユウミは間近で見るプロの冷静なプレイに素直に感動した。
ツグミがスキルの処理を始める。
「刹那の荒鷲のスキル! 俺はリンボのモンスターを一体ゲームから除外し、相手フィールド上のモンスター一体を選択する。そのモンスターの攻撃力を0にし、元々の攻撃力分このカードの攻撃力をアップさせる!」
刹那の荒鷲が青白く輝く。
ツグミがマライアを指差した。
「そのティアラを被った偉そうな奴の攻撃力分、パワーアップだ!」
マライアと刹那の荒鷲の数値が赤くなる。
マライアの攻撃力は0に。
刹那の荒鷲は5500。
クスクス。
ユキが笑いだした。
「おバカさん」
フィールドのマライアが青白くきらめく。
ユキの生命力が上昇した。
「女帝のマライアの第二のスキル! 相手モンスターが攻撃力をアップさせたとき、私はその数値分の生命力を回復する」
ユキの生命力が700から3200になった。
こんなスキルも持っていたとは……。
ユウミがそう思ったとき、ひゅーっとツグミが口笛を吹いた。
「いいね、その『楽には勝たせないわよ』って態度。ぶちのめしがいもあるってもんだ」
**「ビッグバード・刹那の荒鷲」の召喚条件。
自分フィールド上に風属性モンスターが二体以上存在し、そのカテゴリーの数値の合計が8であること。
それを見るなり左手の手札の一枚と入れ替える。
「俺はカテゴリー3のビッグバード・双頭の禿鷹を召喚!」
投げたカードが大きな翼のモンスターに化ける。頭が二つある禿鷹だ。異様なのはその形だけではない。左右の頭と身体がちょうど縦に二分したみたいに赤と青に色分けされていた。
双頭の禿鷹は甲高い声で一つ鳴き、ツグミ側のフィールドの上空を飛び回る。
風属性で攻撃力は2200。
このモンスター単体では戦えない。
ユウミが判じているとツグミが手札を切った。
「双頭の禿鷹を召喚したことにより、手札からカテゴリー1のビッグバード・調律の灰鷹を特殊召喚! このモンスターは自分フィールドにビッグバードモンスターが存在するとき手札から特殊召喚できる!」
具現化したのは灰色の翼の鷹。俊敏な動きで空を駆け、ユキの頭上で宙返りをするとツグミの元に戻ってきた。
双頭の禿鷹と並んで飛び始める。
風属性で攻撃力は100。
あれは……。
ユウミがさらなる特殊召喚を予感したとき、ユキが高笑いした。
「そんな貧弱なモンスターを呼び出して私に勝てると思うの? 女の子のピンチに颯爽と現れた割にはずいぶんとお粗末ね」
「ま、見てなって。すぐにおばさんの油断が誤りだと証明してやるよ」
ユキが繭を上げる。
「あなたさっきから失礼ね。おばさんおばさんって私を誰だと思っているの」
「いや、おばさんじゃん」
この返答にユキの顔が真っ赤になった。
「あ・な・た、覚悟しなさいよ!」
「悪役はみんな言うことが一緒だな」
スキルを発動した。
「調律の灰鷹のスキル! 俺は生命力を400支払う。その後、調律の灰鷹と自分フィールド上のビッグバードモンスター一体のカテゴリーをそれぞれのカテゴリーの数値の合計に変更する!」
ツグミの生命力が2000から1600になった。
調律の灰鷹が鳴き、双頭の禿鷹とともに青白い光を纏う。
双頭の禿鷹のカテゴリーは3。
調律の灰鷹は1。
二体のモンスターのカテゴリーの合計は4。
そろってカテゴリー4となったビッグバードたちを目にしてユウミの予感は期待に変わる。
ユキがスキルを行使した。
「リンボにあるデイドリームバタフライ・強欲のハンナのスキルを発動。相手がスキル・魔法のコストとして生命力を支払ったとき、このカードをゲームから除外してコストとした生命力の数値と同じダメージを与える」
「くっ」
ツグミの生命力が1200まで下がる。
だが、ユウミは不安を覚えなかった。
大丈夫。
このくらい、ツグミさんならどうってことない。
彼の強さは知っていた。
百戦錬磨のベテランエンカウンターをも舌を巻くその力は、この程度のことで衰えたりする訳がない。
ユウミの熱い視線に気づいたらしく、ツグミが微笑みで返した……ような気がした。
ツグミが両手をクロスさせる。
ユウミの期待が頂点に達した。
「俺はここでサモニング!」
二体のビッグバードたちがより高く飛翔し、光の筋となる。
「双頭の禿鷹と調律の灰鷹で魔方陣を形成、エクストラ召喚!」
二筋の光は天に魔方陣を描いていく。
来る!
ユウミは自分がドキドキしているのを意識した。ツグミに対してだけではない。これから出現する特殊モンスターに対しても、だ。
完成した魔方陣が妖しく光り、一体のモンスターを生み出した。
ツグミが口上を述べる。
「気高き空の王者よ、その大いなる翼を翻し、全ての敵を駆逐せよ!」
それは濃い焦げ茶色の体毛をした猛禽類。
翼の先と尾と足の部分が白く、遠目でもその白さが目立つ。鋭い嘴も立派でオレンジ色がよく映えた。
体長は三メートルくらい。一般的な大鷲の三倍はある。このサイズで翼を広げたらどれだけの巨大さになるのか……ユウミはもちろんわかっていた。
七メートルは余裕で超える。
ツグミが名を呼んだ。
「カモン! グレード8、ビッグバード・刹那の荒鷲!」
呼応するように刹那の荒鷲が鳴く。
風属性で攻撃力は3000。
ユキが手札を抜いた。
「魔法カード『貴婦人の誇り』を発動。元々の攻撃力が私のフィールドの特殊モンスターより高いモンスターが召喚または特殊召喚されたとき、そのモンスターを破壊する」
「なっ」
ユウミが驚きの声を上げるが、ツグミに動じる様子はない。
一枚のカードが飛んだ。
「カウンターマジック『ディスペル』を発動! 直前の魔法効果を無効にする!」
魔法を防がれたユキが表情を歪める。
これでユキの手札は0。
すごい。
ユウミは間近で見るプロの冷静なプレイに素直に感動した。
ツグミがスキルの処理を始める。
「刹那の荒鷲のスキル! 俺はリンボのモンスターを一体ゲームから除外し、相手フィールド上のモンスター一体を選択する。そのモンスターの攻撃力を0にし、元々の攻撃力分このカードの攻撃力をアップさせる!」
刹那の荒鷲が青白く輝く。
ツグミがマライアを指差した。
「そのティアラを被った偉そうな奴の攻撃力分、パワーアップだ!」
マライアと刹那の荒鷲の数値が赤くなる。
マライアの攻撃力は0に。
刹那の荒鷲は5500。
クスクス。
ユキが笑いだした。
「おバカさん」
フィールドのマライアが青白くきらめく。
ユキの生命力が上昇した。
「女帝のマライアの第二のスキル! 相手モンスターが攻撃力をアップさせたとき、私はその数値分の生命力を回復する」
ユキの生命力が700から3200になった。
こんなスキルも持っていたとは……。
ユウミがそう思ったとき、ひゅーっとツグミが口笛を吹いた。
「いいね、その『楽には勝たせないわよ』って態度。ぶちのめしがいもあるってもんだ」
**「ビッグバード・刹那の荒鷲」の召喚条件。
自分フィールド上に風属性モンスターが二体以上存在し、そのカテゴリーの数値の合計が8であること。