第4話 黒き野生の帝王
文字数 2,620文字
ユウミの右手にカードが具現化した。
モンスターカードだ。
すぐにそれを使う。
「あたしはカテゴリー2の『シールドマジシャン』を召喚!」
ユウミが投げたカードは青銅食のローブを着た魔法使いに変化した。ローブと同じ色のとんがり帽子から長い金髪が伸びている。杖は持たず直径五十センチほどの青銅の円盤を装備していた。
「シールドマジシャン」は地属性でカテゴリー2のモンスターだ。
攻撃力を示す横の数値は2000。
「シールドマジシャンのスキル発動! デッキの一番上のカードをリンボに送ることでこのモンスターの攻撃力を1000アップする!」
デッキから「ヒーリングマジシャン」と書かれたカードがリンボニ捨てられた。
シールドマジシャンの身体が青白く輝く。
数値が赤く変色した。
3000。
さらにユウミは左手のカードを右手で放る。
「魔法カード『ダブルアタック』を発動! この効果によりシールドマジシャンはこのターン二回攻撃することができる!」
シールドマジシャンが胸を張り、野太い声で雄叫びをあげた。
ユウミはダークインパラを指さす。
「いくよっ! シールドマジシャンでダークインパラを攻撃!」
バトルの合図とともにシールドマジシャンはその青銅食の円盤からビームを発射した。
ダークインパラが向かってくるが2500もの攻撃力の差は大きく無残にも四散した。
攻撃力の差分がアスカのダメージとなる。
アスカの残り生命力は2500。
だが、これで終わりではない。
魔法の効果によりシールドマジシャンはもう一度攻撃できる。
「次はネクロヴァルチャーを攻撃!」
シールドマジシャンが上空の黒い禿鷹に狙いを定める。
しかし……。
アスカが叫んだ。
「手札のカテゴリー3モンスター『ブラックサバンナ・シャドウハイエナ』を特殊召喚! このモンスターは自分のブラックサバンナモンスターが戦闘で破壊されたとき手札から特殊召喚できる!」
このとき、ユウミは罠にはめられたのだと知った。
ダークインパラはおとりだったのだ。
ダークインパラがいた位置に真っ黒な犬とも狼とも思える四つ足の動物が現出した。黒光りする身体。目が赤く光っていた。半開きの口からは鋭い牙が見える。
カテゴリー3の地属性モンスターが二体。
嫌な予感がするものの、すでに攻撃宣言をしてしまっている。
撤回はできないきまりだ。
シールドマジシャンがビームを放ち、光はまっすぐネクロヴァルチャーを貫く。
ネクロヴァルチャーが破壊されアスカに2000のダメージが与えられた。
形勢はユウミが有利。
が、ユウミは油断しない。
彼女はネクロヴァルチャーを撃破したときアスカが口をほころばせたのを見逃さなかった。
あれは何?
一体、何をたくらんでいるの……?
カードを握る手にさらに力がこもった。
シールドマジシャンの攻撃が終わるとアスカが言い放つ。
「この程度のことで私の勝利は揺るがないわ!」
表情に去勢の色はない。
強がりでないのはユウミにも何となく理解できた。だが、その根拠がわからない。
ユウミは自問する。
気になるのはフィールドに存在する二体のモンスター。
ともにカテゴリー3で地属性。
攻撃力も2000と同じ。
ブラックサバンナモンスター同士でもある。
通常の召喚では呼び出せない特殊モンスターを出現させるにはちょうどいい条件下にあるのかもしれない。
それが「ミックス召喚」なのか「エクストラ召喚」なのか、あるいは「ゲート召喚」なのかはわからない。
ただ一つはっきりしているのはこのままでは終わらないということだ。
ユウミは右手で軽く髪についた埃を払う。
魔法カード「セカンドアタック」でもあれば、戦闘の終えたシールドマジシャンに攻撃を続けさせることも可能なのだが、今は手札にない。残りの魔法カードは現在の状況では効果を発動できなかった。
「……あたしはこれでターンエンド」
ユウミの宣言とともにシールドマジシャンのスキルが効力を失った。青白い光が消え、横の数字も白字の2000に戻る。
攻撃力は下がったがユウミは臆することなくアスカを見据える。自然と右手が左手の魔法カードを抜いていた。
アスカがまた手を上げる。
「私のターン!」
右手に現出するカード。
アスカの笑みが広がった。
邪悪とさえいえる嫌な笑みだ。
「やっぱりね。カードも私に味方してくれているわ」
カードを使った。
「私は魔法カード『サバンナコール』を発動! デッキからカテゴリー3以下のブラックサバンナモンスター一体を特殊召喚する!」
もう一体!
ユウミが丸い目をさらに丸くしている間に召喚のプロセスが進んでいく。
「現れなさい! カテゴリー3、ブラックサバンナ・ナイトチーター!」
呼び出しに応じたのは地属性の黒い猛獣。
しなやかな体躯は148センチのユウミと変わらぬ大きさ。漆黒の顔に赤い目が光っている。今にも飛びかからんとしている姿は十分すぎるほど恐ろしかった。
攻撃力は2100。
やばい。
ユウミは心の中でつぶやく。
これはかなりやばい。
アスカがさらにカードを切った。
「魔法カード『ミックス』を発動! フィールド上のスカルコヨーテとシャドウハイエナを素材にミックス召喚を行う!」
ぐにゃり。
指定された二体のモンスターごと空間がねじれていく。
回転するようにモンスターを巻き込んだ空間は歪曲し、やがて一体のモンスターを生み出した。
「目覚めなさい! 黒きサバンナの帝王、全ての野生を統べるもの……カテゴリー4! ブラックサバンナ・エンペラーレオ!」
歪められた空間の中心で二つの赤い光が獲物を狙うかのように細まる。
瞬間。
雄々しい獅子のそれはやはり黒く染まっていた。
ユウミは昔アニメの再放送で白いのをみたことがあったが、黒いのは初めてだ。
体はナイトチーターより二回り以上大きい。まさに王、いや帝王の貫禄。
横の数値は4000。
攻撃力4000の地属性ミックスモンスター。
……あんなものまともに食らったらひとたまりもない。
ユウミは深く呼吸し、頭をフル回転させる。
どうする。
どうする。
アスカの猛獣二体がうなり、不吉なハーモニーを奏でた。
モンスターカードだ。
すぐにそれを使う。
「あたしはカテゴリー2の『シールドマジシャン』を召喚!」
ユウミが投げたカードは青銅食のローブを着た魔法使いに変化した。ローブと同じ色のとんがり帽子から長い金髪が伸びている。杖は持たず直径五十センチほどの青銅の円盤を装備していた。
「シールドマジシャン」は地属性でカテゴリー2のモンスターだ。
攻撃力を示す横の数値は2000。
「シールドマジシャンのスキル発動! デッキの一番上のカードをリンボに送ることでこのモンスターの攻撃力を1000アップする!」
デッキから「ヒーリングマジシャン」と書かれたカードがリンボニ捨てられた。
シールドマジシャンの身体が青白く輝く。
数値が赤く変色した。
3000。
さらにユウミは左手のカードを右手で放る。
「魔法カード『ダブルアタック』を発動! この効果によりシールドマジシャンはこのターン二回攻撃することができる!」
シールドマジシャンが胸を張り、野太い声で雄叫びをあげた。
ユウミはダークインパラを指さす。
「いくよっ! シールドマジシャンでダークインパラを攻撃!」
バトルの合図とともにシールドマジシャンはその青銅食の円盤からビームを発射した。
ダークインパラが向かってくるが2500もの攻撃力の差は大きく無残にも四散した。
攻撃力の差分がアスカのダメージとなる。
アスカの残り生命力は2500。
だが、これで終わりではない。
魔法の効果によりシールドマジシャンはもう一度攻撃できる。
「次はネクロヴァルチャーを攻撃!」
シールドマジシャンが上空の黒い禿鷹に狙いを定める。
しかし……。
アスカが叫んだ。
「手札のカテゴリー3モンスター『ブラックサバンナ・シャドウハイエナ』を特殊召喚! このモンスターは自分のブラックサバンナモンスターが戦闘で破壊されたとき手札から特殊召喚できる!」
このとき、ユウミは罠にはめられたのだと知った。
ダークインパラはおとりだったのだ。
ダークインパラがいた位置に真っ黒な犬とも狼とも思える四つ足の動物が現出した。黒光りする身体。目が赤く光っていた。半開きの口からは鋭い牙が見える。
カテゴリー3の地属性モンスターが二体。
嫌な予感がするものの、すでに攻撃宣言をしてしまっている。
撤回はできないきまりだ。
シールドマジシャンがビームを放ち、光はまっすぐネクロヴァルチャーを貫く。
ネクロヴァルチャーが破壊されアスカに2000のダメージが与えられた。
形勢はユウミが有利。
が、ユウミは油断しない。
彼女はネクロヴァルチャーを撃破したときアスカが口をほころばせたのを見逃さなかった。
あれは何?
一体、何をたくらんでいるの……?
カードを握る手にさらに力がこもった。
シールドマジシャンの攻撃が終わるとアスカが言い放つ。
「この程度のことで私の勝利は揺るがないわ!」
表情に去勢の色はない。
強がりでないのはユウミにも何となく理解できた。だが、その根拠がわからない。
ユウミは自問する。
気になるのはフィールドに存在する二体のモンスター。
ともにカテゴリー3で地属性。
攻撃力も2000と同じ。
ブラックサバンナモンスター同士でもある。
通常の召喚では呼び出せない特殊モンスターを出現させるにはちょうどいい条件下にあるのかもしれない。
それが「ミックス召喚」なのか「エクストラ召喚」なのか、あるいは「ゲート召喚」なのかはわからない。
ただ一つはっきりしているのはこのままでは終わらないということだ。
ユウミは右手で軽く髪についた埃を払う。
魔法カード「セカンドアタック」でもあれば、戦闘の終えたシールドマジシャンに攻撃を続けさせることも可能なのだが、今は手札にない。残りの魔法カードは現在の状況では効果を発動できなかった。
「……あたしはこれでターンエンド」
ユウミの宣言とともにシールドマジシャンのスキルが効力を失った。青白い光が消え、横の数字も白字の2000に戻る。
攻撃力は下がったがユウミは臆することなくアスカを見据える。自然と右手が左手の魔法カードを抜いていた。
アスカがまた手を上げる。
「私のターン!」
右手に現出するカード。
アスカの笑みが広がった。
邪悪とさえいえる嫌な笑みだ。
「やっぱりね。カードも私に味方してくれているわ」
カードを使った。
「私は魔法カード『サバンナコール』を発動! デッキからカテゴリー3以下のブラックサバンナモンスター一体を特殊召喚する!」
もう一体!
ユウミが丸い目をさらに丸くしている間に召喚のプロセスが進んでいく。
「現れなさい! カテゴリー3、ブラックサバンナ・ナイトチーター!」
呼び出しに応じたのは地属性の黒い猛獣。
しなやかな体躯は148センチのユウミと変わらぬ大きさ。漆黒の顔に赤い目が光っている。今にも飛びかからんとしている姿は十分すぎるほど恐ろしかった。
攻撃力は2100。
やばい。
ユウミは心の中でつぶやく。
これはかなりやばい。
アスカがさらにカードを切った。
「魔法カード『ミックス』を発動! フィールド上のスカルコヨーテとシャドウハイエナを素材にミックス召喚を行う!」
ぐにゃり。
指定された二体のモンスターごと空間がねじれていく。
回転するようにモンスターを巻き込んだ空間は歪曲し、やがて一体のモンスターを生み出した。
「目覚めなさい! 黒きサバンナの帝王、全ての野生を統べるもの……カテゴリー4! ブラックサバンナ・エンペラーレオ!」
歪められた空間の中心で二つの赤い光が獲物を狙うかのように細まる。
瞬間。
雄々しい獅子のそれはやはり黒く染まっていた。
ユウミは昔アニメの再放送で白いのをみたことがあったが、黒いのは初めてだ。
体はナイトチーターより二回り以上大きい。まさに王、いや帝王の貫禄。
横の数値は4000。
攻撃力4000の地属性ミックスモンスター。
……あんなものまともに食らったらひとたまりもない。
ユウミは深く呼吸し、頭をフル回転させる。
どうする。
どうする。
アスカの猛獣二体がうなり、不吉なハーモニーを奏でた。