第37話 とっておきの一枚、ミックススキルシフト!
文字数 2,283文字
スズメがドローしたカードを手札と入れ替える。
「私は魔法カード『ミックス』を発動! フィールド上のハミングバード・ホワイトアイズ三体を素材にミックス召喚!」
ぐにゃり。
空間が一体を除いたホワイトアイズたちを巻き込んで歪んでいく。
回転するように歪曲した空間からやがて一体のモンスターが生み出された。
スズメが口上を述べる。
「そよ風とともに空を舞い、その美しき歌声を響かせろ! 出番よ! ハミングバード・北のカナリア!」
スズメよりやや大きな黄色の鳥が姿をあらわにした。空高く飛翔したその鳥を青白い光が包んでいく。
その横には1200という赤い数字。
風属性でカテゴリーは4。
元々の攻撃力は0。
「北野カナリア自身のスキルにより、このモンスターの攻撃力は私の手札一枚につき、600アップする!」
「で、そいつは相手プレイヤーに直接攻撃するんでしょ」
吐き捨てるようにハヅキが言う。
「でも、その貧弱な攻撃力じゃ私たちを倒せないわね」
「逆に哀れです」
サツキが続いた。
「結局その程度のことしかできないなんて……元ハルキストのあなたがこれほど惨めな真似しかできないなんて、本当に哀れでなりません」
サツキが深く嘆息した。
口調が変わる。
「せめて我がこの手で引導を渡してやろう」
「うっさい!」
スズメが一蹴した。
「全員ぶちのめしてあげるんだから、大人しく待っていなさい」
その近くに落ちている(というかスズメに殴られた)クゥはぐったりとして動かない。
ユウミはサキ戦でのことを思い出していた。
あのとき、自分はクゥに触れられていないのに強くなっていた。
あれがクゥの仕業ならあのときみたいに触れずにスズメを何とかできるのでは?
どうして、そうしなかったのだろう。
ユウミはスズメを見た。
変化はないようだが……。
と、そのときスズメがこちらを向いた。
「ユウミ」
どきりとした。
返事をする声が上ずってしまう。
「な、何?」
「あんたのライトニングマジシャンの力、借りるわよ」
「え?」
スズメが手札を一枚抜いた。
投げる。
「魔法カード『ミックススキルシフト』を発動! フィールド上のミックスモンスターのスキルを一つ選択し、自分のミックスモンスターに与える!」
ライトニングマジシャンの身体が緑色に光る。
その光が北野カナリアへと流れていった。
美声を発する北野カナリア。しだいに緑色の光は青く変じていった。
「『ミックススキルシフト』の効果でスキルを得たモンスターは元々のスキルを失う! さらにこのモンスターはターンの終了時にゲームから除外される!」
「ちょっと、スズメちゃん……」
言いかけてスズメに手で制される。
だ、大丈夫なの?
ユウミはスズメを見つめるが応じてはもらえなかった。
本来のスキルを失したことにより北野カナリアの攻撃力が0になってしまう。
……本当に大丈夫?
かなり不安になるが、ユウミにはどうすることもできない。
スズメが最後の一枚を放つ。
「カテゴリー3のハミングバード・レッドロビンを通常召喚!」 現れたのは真っ赤な翼のコマドリ。十四センチくらいのサイズの鳥ではばたくと赤い光が炎のように揺らめいた。
風属性で攻撃力は0。
これを目にしてハヅキが笑った。
「ずいぶんと可愛らしいモンスターを出してきたじゃない。それに何? 攻撃力0って、あんたやる気あるの?」
「つくづくおバカさんね」
スズメには余裕の色があった。
「見せてあげるわ、私のハミングバードデッキのすごさを!」
宣言した。
「ライトニングマジシャンの力を得たハミングバード・北野カナリアのスキル! このモンスターの召喚素材を全てゲームから除外し、その攻撃力の合計分このモンスターの攻撃力をアップさせる!」
北野カナリアが一声鳴き、青白い光を強める。
リンボに送られたホワイトアイズの攻撃力は2000。
合計で6000。
セフィロトツリーとプルーパの攻撃力も6000。
これらのうちどちらと戦闘しても撃破は可能(ただし相討ち)。
だが、それだけだ。
暦姉妹の生命力を0にするどころか削ることすらできない。
サツキの口が開いた。
「それで我を打ちのめそうと、お主に勝ち目はないぞよ」
「あんたは後! まず先にあいつをぶちのめす!」
指名されたのはハヅキだ。
うぬぬ……とうめきながらスズメを睨みつける。
「か、仮にセフィロトツリーを倒しても私には勝てないわよ」
「あんたを逃がすと思ってるの?」
スズメがスキルを用いた。
「レッドロビンのスキル発動!! このモンスターをリンボに送り、フィールド上のモンスター一体の攻撃力を二倍にする!」
「げっ」
驚愕するハヅキをよそにスズメが指定した。
「当然、二倍にするのは北野カナリアよっ!」
北野カナリアがさらに青白く輝き、遂には光から放電へと変わっていった。それはライトニングマジシャンの力によるものかもしれない。身体をバチバチさせた北野カナリアは天を舞い、その神々しいまでの姿を明確に印象づけさせた。
攻撃力は12000。
スズメが命じた。
「歌え、北野カナリア! セフィロトツリーを攻撃!」
**「ハミングバード・北野カナリア」の召喚条件。
手札またはフィールド上に風属性モンスターが三体いること。
なお、この特殊モンスターの召喚には魔法カード「ミックス」の発動が必須である。
「私は魔法カード『ミックス』を発動! フィールド上のハミングバード・ホワイトアイズ三体を素材にミックス召喚!」
ぐにゃり。
空間が一体を除いたホワイトアイズたちを巻き込んで歪んでいく。
回転するように歪曲した空間からやがて一体のモンスターが生み出された。
スズメが口上を述べる。
「そよ風とともに空を舞い、その美しき歌声を響かせろ! 出番よ! ハミングバード・北のカナリア!」
スズメよりやや大きな黄色の鳥が姿をあらわにした。空高く飛翔したその鳥を青白い光が包んでいく。
その横には1200という赤い数字。
風属性でカテゴリーは4。
元々の攻撃力は0。
「北野カナリア自身のスキルにより、このモンスターの攻撃力は私の手札一枚につき、600アップする!」
「で、そいつは相手プレイヤーに直接攻撃するんでしょ」
吐き捨てるようにハヅキが言う。
「でも、その貧弱な攻撃力じゃ私たちを倒せないわね」
「逆に哀れです」
サツキが続いた。
「結局その程度のことしかできないなんて……元ハルキストのあなたがこれほど惨めな真似しかできないなんて、本当に哀れでなりません」
サツキが深く嘆息した。
口調が変わる。
「せめて我がこの手で引導を渡してやろう」
「うっさい!」
スズメが一蹴した。
「全員ぶちのめしてあげるんだから、大人しく待っていなさい」
その近くに落ちている(というかスズメに殴られた)クゥはぐったりとして動かない。
ユウミはサキ戦でのことを思い出していた。
あのとき、自分はクゥに触れられていないのに強くなっていた。
あれがクゥの仕業ならあのときみたいに触れずにスズメを何とかできるのでは?
どうして、そうしなかったのだろう。
ユウミはスズメを見た。
変化はないようだが……。
と、そのときスズメがこちらを向いた。
「ユウミ」
どきりとした。
返事をする声が上ずってしまう。
「な、何?」
「あんたのライトニングマジシャンの力、借りるわよ」
「え?」
スズメが手札を一枚抜いた。
投げる。
「魔法カード『ミックススキルシフト』を発動! フィールド上のミックスモンスターのスキルを一つ選択し、自分のミックスモンスターに与える!」
ライトニングマジシャンの身体が緑色に光る。
その光が北野カナリアへと流れていった。
美声を発する北野カナリア。しだいに緑色の光は青く変じていった。
「『ミックススキルシフト』の効果でスキルを得たモンスターは元々のスキルを失う! さらにこのモンスターはターンの終了時にゲームから除外される!」
「ちょっと、スズメちゃん……」
言いかけてスズメに手で制される。
だ、大丈夫なの?
ユウミはスズメを見つめるが応じてはもらえなかった。
本来のスキルを失したことにより北野カナリアの攻撃力が0になってしまう。
……本当に大丈夫?
かなり不安になるが、ユウミにはどうすることもできない。
スズメが最後の一枚を放つ。
「カテゴリー3のハミングバード・レッドロビンを通常召喚!」 現れたのは真っ赤な翼のコマドリ。十四センチくらいのサイズの鳥ではばたくと赤い光が炎のように揺らめいた。
風属性で攻撃力は0。
これを目にしてハヅキが笑った。
「ずいぶんと可愛らしいモンスターを出してきたじゃない。それに何? 攻撃力0って、あんたやる気あるの?」
「つくづくおバカさんね」
スズメには余裕の色があった。
「見せてあげるわ、私のハミングバードデッキのすごさを!」
宣言した。
「ライトニングマジシャンの力を得たハミングバード・北野カナリアのスキル! このモンスターの召喚素材を全てゲームから除外し、その攻撃力の合計分このモンスターの攻撃力をアップさせる!」
北野カナリアが一声鳴き、青白い光を強める。
リンボに送られたホワイトアイズの攻撃力は2000。
合計で6000。
セフィロトツリーとプルーパの攻撃力も6000。
これらのうちどちらと戦闘しても撃破は可能(ただし相討ち)。
だが、それだけだ。
暦姉妹の生命力を0にするどころか削ることすらできない。
サツキの口が開いた。
「それで我を打ちのめそうと、お主に勝ち目はないぞよ」
「あんたは後! まず先にあいつをぶちのめす!」
指名されたのはハヅキだ。
うぬぬ……とうめきながらスズメを睨みつける。
「か、仮にセフィロトツリーを倒しても私には勝てないわよ」
「あんたを逃がすと思ってるの?」
スズメがスキルを用いた。
「レッドロビンのスキル発動!! このモンスターをリンボに送り、フィールド上のモンスター一体の攻撃力を二倍にする!」
「げっ」
驚愕するハヅキをよそにスズメが指定した。
「当然、二倍にするのは北野カナリアよっ!」
北野カナリアがさらに青白く輝き、遂には光から放電へと変わっていった。それはライトニングマジシャンの力によるものかもしれない。身体をバチバチさせた北野カナリアは天を舞い、その神々しいまでの姿を明確に印象づけさせた。
攻撃力は12000。
スズメが命じた。
「歌え、北野カナリア! セフィロトツリーを攻撃!」
**「ハミングバード・北野カナリア」の召喚条件。
手札またはフィールド上に風属性モンスターが三体いること。
なお、この特殊モンスターの召喚には魔法カード「ミックス」の発動が必須である。