第15話 マドンナを攻略せよ!
文字数 2,670文字
「マテリアルガールズ・マドンナ」は毎ターン攻撃力が二倍になる。
しかも、魔法とスキルによる破壊への耐性あり。
マドンナが青白い光に包まれるのを見ながら、ユウミは必死に対抗策を探した。
最も確実なのは戦闘による破壊。マドンナの攻撃力を上回るモンスターで戦えば問題なくリンボに送ることができる。
他にはバウンス、つまりフィールドからデッキに戻すという手段。
しかしこれはユウミにはできなかった。
手札はもちろんデッキにもその効果を発揮するカードは組まれていない。これは今後デッキを構築し直すときに考慮すべき課題だろう。
あとはゲームからの除外。
これならデッキに入れていないわけではない。
ただ、都合良く引き当てられるかどうか。「最強のエンカウンターはゲームを支配する。ドローカードすら自在に引くことが可能」と昔何かで聞いたことがある
だが、自分はまだその領域に達していない。そんな自分に「ゲームからの除外」の能力を有するカードを手にすることができるだろうか。
……これはきつい。
ユウミはじんわりと浮かんだ額の汗を袖で拭った。
サキがカードを切る。
「魔法カード『アイアンキャノン』を発動! 相手プレイヤーに1000のダメージを与える」
「くっ!」
魔法による直接攻撃か!
サキのすぐそばに円筒形の砲台が出現した。大きさは三メートルほど。横に二桁の数字が浮かんでおり、やや速いペースでカウントダウンしていた。
「抵抗するなら今のうちだよ、お姉ちゃん」
にやり。
「できるなら、だけど」
ユウミは聞き流した。
やがて砲台のカウントダウンは0になり、轟音とともに火を噴いた。空気を震わせながらエネルギーの塊がユウミを襲う。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
吹き飛ばされるユウミ。
痛みと熱さが混ざり合ったような感覚が身体に残った。動けないほどではないが、それでもつらい。生命力を示す数値は4000に減っていた。
……まさか魔法で狙ってくるなんて。
てっきり魔法はマドンナを補助するためにあると思っていたのでユウミは完全に読み違えていたのを認めるしかなかった。
サキの次なる手。
「魔法カード『パワーブースト』を発動! デッキのカードを上から二枚リンボに送り、自分フィールド上のモンスター一体の攻撃力をこのターンの終わりまで1000アップする!」
スキルにより元々500だった攻撃力は1000になっている。
それが1000ポイント増えて2000になる。
サキがフェアリーマジシャンを指さした。
「今よっ! マドンナでフェアリーマジシャンを攻撃!」
マドンナがその場を一歩も動かずに鞭を振った。
鞭が猛烈な勢いで伸び、フェアリーマジシャンを打ち据える。
空を切る乾いた音と打撃音がほぼ同時に聞こえ、ユウミはうろたえた。
速い。
フェアリーマジシャンが四散し、ユウミに800のダメージが与えられた。
残り生命力は3200。
ユウミはスキルを発動させる。
「フェアリーマジシャンのスキル! このモンスターがフィールドからリンボに送られたとき、デッキの一番上からモンスター二体を特殊召喚する!」
フェアリーマジシャンと入れ替わりに二体のモンスターが現れた。
一体は薄緑色のローブととんがり帽子を身につけており、ゴルフボール大のエメラルドがはめ込まれた杖を手にしている。長い黒髪が明るい緑色のリボンで束ねられていた。
風属性で攻撃力は1600。
「カテゴリー3、ウインドマジシャン!」
もう一体はフード付きの青いローブ姿。こちらは白髪で短い。手にはコバルトのちりばめられた錫杖。シャンシャンと音を鳴らしている。
風属性、攻撃力1800。
「カテゴリー3、ミストラルマジシャン!」
さらに。
「フェアリーマジシャンのスキルにより特殊召喚されたモンスターはこのカードがリンボに存在する間、攻撃力を1200アップする」
二体のモンスターが青白く光る。
ウインドマジシャンの攻撃力が1600から2800に、ミストラルマジシャンの攻撃力が1800から3000になった。
ユウミは続ける。
「ミストラルマジシャンのスキル発動! このモンスターの召喚または特殊召喚に成功したとき、相手プレイヤーに900のダメージを与える!」
ミストラルマジシャンが錫杖を横に大振りし、烈風を発生させる。
風はサキに吹きつけた。激しいだけでなく凍えるように冷たい風。
サキの表情がわずかに歪んだ。
悲鳴はない。
堪えているのだとユウミにはわかった。
サキの生命力が4100に減じる。
だが、これで終わらせるつもりはない。
「ウインドマジシャンのスキル! 相手プレイヤーが戦闘以外のダメージを受けた場合、もう一度同じ数値のダメージを与える!」
ウインドマジシャンが杖を掲げて風を発生させる。
風は目に見えぬ刃を伴った旋風と変化し、サキを飲み込んだ。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!」
たまらず悲鳴が上がる。
その場で倒れたサキに900のダメージが追加された。
生命力は3200に……。
「ウインドマジシャンのスキルの発動後、お互いのプレイヤーはカードを一枚ドローする!」
よろけながらもサキが立ち上がる。
寸分違わぬタイミングで二人は天に手を延ばした。
「「ドロー!」」
ユウミは引き当てた魔法カード『ミックス』を左手に移す。
サキが早速手に入れたカードを使った。
「魔法カード『天使の報復』を発動! 私がフィールド上に存在するモンスターのスキルによりダメージを受けた場合、相手モンスター一体を破壊する!」
「なっ!」
意地悪い笑みで。
「てことで、ウインドマジシャンは消えてね」
指定され、ウインドマジシャンが消滅する。
一瞬の出来事だった。
抵抗できるカードもなく、フェアリーマジシャン同様やむを得ない犠牲と思うしかなかった。
「……私はこれでターンエンド。これによりパワーブーストの効果は切れ、マドンナの攻撃力は1000に戻る」
ターンがユウミに回った。
ユウミの右手が天を突く。
「あたしのターン!」
現出する一枚のカード。
確認し、やった、と小さくガッツポーズをする。
来た!
ユウミは思いきり力強くカードを投じる。
「現れろ、カテゴリー2、テレポートマジシャン!」
今回の切り札になるかもしれないモンスターであった。
しかも、魔法とスキルによる破壊への耐性あり。
マドンナが青白い光に包まれるのを見ながら、ユウミは必死に対抗策を探した。
最も確実なのは戦闘による破壊。マドンナの攻撃力を上回るモンスターで戦えば問題なくリンボに送ることができる。
他にはバウンス、つまりフィールドからデッキに戻すという手段。
しかしこれはユウミにはできなかった。
手札はもちろんデッキにもその効果を発揮するカードは組まれていない。これは今後デッキを構築し直すときに考慮すべき課題だろう。
あとはゲームからの除外。
これならデッキに入れていないわけではない。
ただ、都合良く引き当てられるかどうか。「最強のエンカウンターはゲームを支配する。ドローカードすら自在に引くことが可能」と昔何かで聞いたことがある
だが、自分はまだその領域に達していない。そんな自分に「ゲームからの除外」の能力を有するカードを手にすることができるだろうか。
……これはきつい。
ユウミはじんわりと浮かんだ額の汗を袖で拭った。
サキがカードを切る。
「魔法カード『アイアンキャノン』を発動! 相手プレイヤーに1000のダメージを与える」
「くっ!」
魔法による直接攻撃か!
サキのすぐそばに円筒形の砲台が出現した。大きさは三メートルほど。横に二桁の数字が浮かんでおり、やや速いペースでカウントダウンしていた。
「抵抗するなら今のうちだよ、お姉ちゃん」
にやり。
「できるなら、だけど」
ユウミは聞き流した。
やがて砲台のカウントダウンは0になり、轟音とともに火を噴いた。空気を震わせながらエネルギーの塊がユウミを襲う。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
吹き飛ばされるユウミ。
痛みと熱さが混ざり合ったような感覚が身体に残った。動けないほどではないが、それでもつらい。生命力を示す数値は4000に減っていた。
……まさか魔法で狙ってくるなんて。
てっきり魔法はマドンナを補助するためにあると思っていたのでユウミは完全に読み違えていたのを認めるしかなかった。
サキの次なる手。
「魔法カード『パワーブースト』を発動! デッキのカードを上から二枚リンボに送り、自分フィールド上のモンスター一体の攻撃力をこのターンの終わりまで1000アップする!」
スキルにより元々500だった攻撃力は1000になっている。
それが1000ポイント増えて2000になる。
サキがフェアリーマジシャンを指さした。
「今よっ! マドンナでフェアリーマジシャンを攻撃!」
マドンナがその場を一歩も動かずに鞭を振った。
鞭が猛烈な勢いで伸び、フェアリーマジシャンを打ち据える。
空を切る乾いた音と打撃音がほぼ同時に聞こえ、ユウミはうろたえた。
速い。
フェアリーマジシャンが四散し、ユウミに800のダメージが与えられた。
残り生命力は3200。
ユウミはスキルを発動させる。
「フェアリーマジシャンのスキル! このモンスターがフィールドからリンボに送られたとき、デッキの一番上からモンスター二体を特殊召喚する!」
フェアリーマジシャンと入れ替わりに二体のモンスターが現れた。
一体は薄緑色のローブととんがり帽子を身につけており、ゴルフボール大のエメラルドがはめ込まれた杖を手にしている。長い黒髪が明るい緑色のリボンで束ねられていた。
風属性で攻撃力は1600。
「カテゴリー3、ウインドマジシャン!」
もう一体はフード付きの青いローブ姿。こちらは白髪で短い。手にはコバルトのちりばめられた錫杖。シャンシャンと音を鳴らしている。
風属性、攻撃力1800。
「カテゴリー3、ミストラルマジシャン!」
さらに。
「フェアリーマジシャンのスキルにより特殊召喚されたモンスターはこのカードがリンボに存在する間、攻撃力を1200アップする」
二体のモンスターが青白く光る。
ウインドマジシャンの攻撃力が1600から2800に、ミストラルマジシャンの攻撃力が1800から3000になった。
ユウミは続ける。
「ミストラルマジシャンのスキル発動! このモンスターの召喚または特殊召喚に成功したとき、相手プレイヤーに900のダメージを与える!」
ミストラルマジシャンが錫杖を横に大振りし、烈風を発生させる。
風はサキに吹きつけた。激しいだけでなく凍えるように冷たい風。
サキの表情がわずかに歪んだ。
悲鳴はない。
堪えているのだとユウミにはわかった。
サキの生命力が4100に減じる。
だが、これで終わらせるつもりはない。
「ウインドマジシャンのスキル! 相手プレイヤーが戦闘以外のダメージを受けた場合、もう一度同じ数値のダメージを与える!」
ウインドマジシャンが杖を掲げて風を発生させる。
風は目に見えぬ刃を伴った旋風と変化し、サキを飲み込んだ。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!」
たまらず悲鳴が上がる。
その場で倒れたサキに900のダメージが追加された。
生命力は3200に……。
「ウインドマジシャンのスキルの発動後、お互いのプレイヤーはカードを一枚ドローする!」
よろけながらもサキが立ち上がる。
寸分違わぬタイミングで二人は天に手を延ばした。
「「ドロー!」」
ユウミは引き当てた魔法カード『ミックス』を左手に移す。
サキが早速手に入れたカードを使った。
「魔法カード『天使の報復』を発動! 私がフィールド上に存在するモンスターのスキルによりダメージを受けた場合、相手モンスター一体を破壊する!」
「なっ!」
意地悪い笑みで。
「てことで、ウインドマジシャンは消えてね」
指定され、ウインドマジシャンが消滅する。
一瞬の出来事だった。
抵抗できるカードもなく、フェアリーマジシャン同様やむを得ない犠牲と思うしかなかった。
「……私はこれでターンエンド。これによりパワーブーストの効果は切れ、マドンナの攻撃力は1000に戻る」
ターンがユウミに回った。
ユウミの右手が天を突く。
「あたしのターン!」
現出する一枚のカード。
確認し、やった、と小さくガッツポーズをする。
来た!
ユウミは思いきり力強くカードを投じる。
「現れろ、カテゴリー2、テレポートマジシャン!」
今回の切り札になるかもしれないモンスターであった。