第26話 バロン・トランプはアルカナカードの所有者、そしてもう一人は……

文字数 866文字

 そこはトランプグループの所有する施設。
 外観はコンクリートの打ちっ放しで使用目的も限定されているために出入りする者も限られていた。
 奥に進むには厳重なセキュリティチェックを済ませなければならない。
 中はだだっ広い空間。大型のモンスターも余裕で動き回れるサイズだ。このフロアのあちこちにセンサーやら何やらが仕込まれていて別室のモニターでも中の様子を見ることができる。
 すでにアルカナシステムは作動しており、二人の男が対峙していた。双方が五枚のカードを手にしていて彼らの横には白い数字が浮かんでいる。
 ともに生命力の数値は5000。
 正式な試合でないからかフィールドを展開したフロアは無機質な内観となっていた。出入り口は一カ所しかなく、今は閉じている。
「じゃあ、始めようか」
 カールした金髪を揺らし身長170センチくらいの痩せたハンサムな男が言う。まるでこれからランチにでも行かないかと誘っているかのような軽さだ。
 身につけているのは有名スポーツブランドのウェア。全身を青で統一している。
 バロン・トランプ。
 トランプグループの次期総帥と目される今年二十歳の若者である。
 対するは黒騎士を連想させる黒ずくめのトレーニングウェアの少年。黒い髪は短く、その顔はまさに眉目秀麗。大抵の女子ならば心奪われてもおかしくない美しさだ。背はバロンより5センチ高い。何かの決心をしているかのように真剣な表情でバロンを見つめている。
「たとえ練習であっても手加減無用」
「いいよ。僕もグループのことは一旦忘れよう。パパには怒られそうだけどね」
「ドナルドに怒られる?」
 黒騎士ふうの少年が口許を緩めた。
「むしろ俺が怒られるんじゃないか? 大事な坊ちゃんをズタボロにするんだから」
「言ってくれるね」
 バロンが笑んだ。
「それとも僕のアルカナカードを甘く見ているのかな?」
「そっちこそ、俺の相棒に油断しているんじゃないのか?」
 ……そして。
 二人の若きエンカウンターが相まみえる。
「「エンカウント!」」
 
 
 
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