第14話 マテリアルガールズは成長する
文字数 2,581文字
「「エンカウント!」」
フィールドにユウミとサキの声が重なった。
サキが縦ロールの髪を大きく踊らせ、右手をあげる。
「先攻はもらうわ。私のターン!」
半ば強引に主張するがユウミに異存はない。
サキの右手に一枚のカードが現れる。
素早く左右のカードを交換した。
右手の一枚を投げる。
「私はカテゴリー1のマテリアルガールズ・コールを召喚!」
カードが変化して黒いボンテージ姿の少女となる。黒髪ロングに黒い瞳。十代後半といった感じでスタイルはそこそこ。黒いブーツの先端には刃渡り二十センチのナイフ。攻撃のメインは足技であろうことがうかがえる。
闇属性で攻撃力は1000。
サキが続けた。
「コールのスキル発動! デッキの一番上のカードをリンボに送り手札からマテリアルガールズと名のつくモンスター一体を特殊召喚する!」
サキが一枚を選んで放る。
「カテゴリー1、マテリアルガールズ・ミックス!」
今度はブルネットの少女が出現した。コールと似たボンテージ姿だ。こちらは両手に小ぶりのナイフを握っている。
闇属性で攻撃力は500。
この名前にユウミは緊張する。
まさか……。
サキが宣言した。
「ミックスのスキル発動! フィールド上のこのモンスターを素材とした場合、魔法カード『ミックス』を使わずにミックス召喚を行うことができる!」
「くっ」
予感が的中したが、ここは外しておきたかった。
ぐにゃり。
コールとミックスを巻き込んで空間が歪む。
そのまま回転するように空間がねじれていき、やがて新しいモンスターが目を覚ました。
キラリと目だけが妖しく光る。
「鋼鉄の気まぐれと儚き戯れ、最弱にして最強……」
小柄な少女が空間を飛び越えてくる。彼女のまわりはぼやけたままだ。
黒いボンテージに黒いブーツ。
手には黒い鞭。
ブロンドの短い髪に青い瞳。
白い肌。
まだ大人と呼ぶにはほど遠い幼さがある顔。それなのに妙な色気を醸し出している。
「聖なる邪淫、ここに降臨! その身を示せ! カテゴリー1、マテリアルガールズ・マドンナ!」
ぴしっとマドンナが鞭を振り、地を叩く。
サキのように微笑むがその裏の邪悪さがユウミには透けて見えた。
闇属性で攻撃力は500。
……何?
自信たっぷりの割にミックス召喚したモンスターは、数値だけ見れば決して強いものではない。
むしろ弱い?
拍子抜けもいいところだ。
ユウミはついにやりとしてしまう。だが、この油断はすぐに誤りだと知った。
サキが次の一手を打つ。
「魔法カード『ガールズルール』を発動! 自分フィールド上にマテリアルガールズモンスターが存在するとき、その最も低いカテゴリーよりも高いカテゴリーのモンスターは敵味方を問わず攻撃できない!」
「はぁ?」
「あ、これ永続効果だから」
にっこりと笑いながらサキが付け足す。
ユウミは心の中で毒づいた。
ひどい効果だ。
サキを見つめる。
そもそもサキのフィールドにはマドンナしかいない。おそらくデッキのモンスターのほとんどがカテゴリー1で占められているのだろう。
となれば攻撃力の上限も推測できる。
魔法の効果がなければ力で押し切れる相手だ。しかし、それはサキも承知のはず。
こちらが攻撃力のあるモンスターを召喚してもカテゴリーの制約を受ければ戦闘ができない。かといってカテゴリーの低いモンスターでは攻撃力が劣るため大してダメージを与えられない。
……厄介だ。
フフンとサキが鼻で笑う。
「ただ攻撃力の高いモンスターを呼び出しても、戦えなければ意味ないよね」
その通りだから言い返せない。
黙っているのが悔しくてユウミはサキをにらむ。
サキは表情を崩さない。
「じゃ、これでターンエンドね。お姉ちゃんの悪あがきが楽しみだわ」
「……」
無視して手札をあらためる。
モンスターカードが三枚に魔法カードが二枚。
「ソードマジシャン」(光属性・攻撃力2000)
「スピアマジシャン」(光属性・攻撃力1800)
「フェアリーマジシャン」(風属性・攻撃力1200)
「天使のわがまま」(魔法カード)
「セカンドアタック」(魔法カード)
これでは攻撃できない。
あとはドローカードに期待するしかない。
ユウミは右手を上げた。
「あたしのターン!」
手の内に現出する一枚のカード。
それは魔法カード。
ユウミは即座に行使する。
「あたしはデッキの一番上のカードをリンボに送り、魔法カード『神の拳』を発動! フィールド上に存在するモンスター一体を破壊する!」
いきなりマドンナの頭上から巨大なげんこつが黄色い光とともに落ちてきた。
普通に殴られたらぺしゃんこになってしまいそうなサイズだ。
サキが表情を変えずに言う。
「マドンナの第一のスキル発動! デッキの一番上のカードをリンボに送り、魔法またはモンスターのスキルによる破壊を無効にする!」
破壊耐性!
カテゴリー1とはいえ、そこはさすがミックスモンスターといったところか。
ユウミは驚きを顔に出さぬよう努める。幸いにもサキに気づかれずに済んだようだ。
だが、この状況はまずい。
ユウミは手札から「フェアリーマジシャン」を召喚する。
「現れろ、カテゴリー3、フェアリーマジシャン!」
身長1メートルほどの、ピンク色の髪をセミロングにした少女が出現した。薄い生地の白いドレスがふわりとする。背中には一対の羽根。蝶を連想させるデザインでこちらも白い。
端正な顔でユウミに一度振り返ってにこりとした笑顔は何となく癒やされる。
攻撃力は1200。
「あたしはこれでターンエンド」
「可愛らしいモンスターだね、お姉ちゃん」
「見た目にだまされると痛い目に遭うわよ」
「それ、私のこと?」
「そうね、すっかりだまされたわ」
サキがクスクス笑った。
「でも、こんなもんじゃないよ……私のターン!」
サキの上げた手にカードが生まれる。
彼女は言った。
「マドンナの第二のスキル発動! このモンスターは毎ターンの開始時のドロー後に攻撃力が二倍になる! なお倍加した攻撃力はこのモンスターがフィールドを離れるまで持続する!」
フィールドにユウミとサキの声が重なった。
サキが縦ロールの髪を大きく踊らせ、右手をあげる。
「先攻はもらうわ。私のターン!」
半ば強引に主張するがユウミに異存はない。
サキの右手に一枚のカードが現れる。
素早く左右のカードを交換した。
右手の一枚を投げる。
「私はカテゴリー1のマテリアルガールズ・コールを召喚!」
カードが変化して黒いボンテージ姿の少女となる。黒髪ロングに黒い瞳。十代後半といった感じでスタイルはそこそこ。黒いブーツの先端には刃渡り二十センチのナイフ。攻撃のメインは足技であろうことがうかがえる。
闇属性で攻撃力は1000。
サキが続けた。
「コールのスキル発動! デッキの一番上のカードをリンボに送り手札からマテリアルガールズと名のつくモンスター一体を特殊召喚する!」
サキが一枚を選んで放る。
「カテゴリー1、マテリアルガールズ・ミックス!」
今度はブルネットの少女が出現した。コールと似たボンテージ姿だ。こちらは両手に小ぶりのナイフを握っている。
闇属性で攻撃力は500。
この名前にユウミは緊張する。
まさか……。
サキが宣言した。
「ミックスのスキル発動! フィールド上のこのモンスターを素材とした場合、魔法カード『ミックス』を使わずにミックス召喚を行うことができる!」
「くっ」
予感が的中したが、ここは外しておきたかった。
ぐにゃり。
コールとミックスを巻き込んで空間が歪む。
そのまま回転するように空間がねじれていき、やがて新しいモンスターが目を覚ました。
キラリと目だけが妖しく光る。
「鋼鉄の気まぐれと儚き戯れ、最弱にして最強……」
小柄な少女が空間を飛び越えてくる。彼女のまわりはぼやけたままだ。
黒いボンテージに黒いブーツ。
手には黒い鞭。
ブロンドの短い髪に青い瞳。
白い肌。
まだ大人と呼ぶにはほど遠い幼さがある顔。それなのに妙な色気を醸し出している。
「聖なる邪淫、ここに降臨! その身を示せ! カテゴリー1、マテリアルガールズ・マドンナ!」
ぴしっとマドンナが鞭を振り、地を叩く。
サキのように微笑むがその裏の邪悪さがユウミには透けて見えた。
闇属性で攻撃力は500。
……何?
自信たっぷりの割にミックス召喚したモンスターは、数値だけ見れば決して強いものではない。
むしろ弱い?
拍子抜けもいいところだ。
ユウミはついにやりとしてしまう。だが、この油断はすぐに誤りだと知った。
サキが次の一手を打つ。
「魔法カード『ガールズルール』を発動! 自分フィールド上にマテリアルガールズモンスターが存在するとき、その最も低いカテゴリーよりも高いカテゴリーのモンスターは敵味方を問わず攻撃できない!」
「はぁ?」
「あ、これ永続効果だから」
にっこりと笑いながらサキが付け足す。
ユウミは心の中で毒づいた。
ひどい効果だ。
サキを見つめる。
そもそもサキのフィールドにはマドンナしかいない。おそらくデッキのモンスターのほとんどがカテゴリー1で占められているのだろう。
となれば攻撃力の上限も推測できる。
魔法の効果がなければ力で押し切れる相手だ。しかし、それはサキも承知のはず。
こちらが攻撃力のあるモンスターを召喚してもカテゴリーの制約を受ければ戦闘ができない。かといってカテゴリーの低いモンスターでは攻撃力が劣るため大してダメージを与えられない。
……厄介だ。
フフンとサキが鼻で笑う。
「ただ攻撃力の高いモンスターを呼び出しても、戦えなければ意味ないよね」
その通りだから言い返せない。
黙っているのが悔しくてユウミはサキをにらむ。
サキは表情を崩さない。
「じゃ、これでターンエンドね。お姉ちゃんの悪あがきが楽しみだわ」
「……」
無視して手札をあらためる。
モンスターカードが三枚に魔法カードが二枚。
「ソードマジシャン」(光属性・攻撃力2000)
「スピアマジシャン」(光属性・攻撃力1800)
「フェアリーマジシャン」(風属性・攻撃力1200)
「天使のわがまま」(魔法カード)
「セカンドアタック」(魔法カード)
これでは攻撃できない。
あとはドローカードに期待するしかない。
ユウミは右手を上げた。
「あたしのターン!」
手の内に現出する一枚のカード。
それは魔法カード。
ユウミは即座に行使する。
「あたしはデッキの一番上のカードをリンボに送り、魔法カード『神の拳』を発動! フィールド上に存在するモンスター一体を破壊する!」
いきなりマドンナの頭上から巨大なげんこつが黄色い光とともに落ちてきた。
普通に殴られたらぺしゃんこになってしまいそうなサイズだ。
サキが表情を変えずに言う。
「マドンナの第一のスキル発動! デッキの一番上のカードをリンボに送り、魔法またはモンスターのスキルによる破壊を無効にする!」
破壊耐性!
カテゴリー1とはいえ、そこはさすがミックスモンスターといったところか。
ユウミは驚きを顔に出さぬよう努める。幸いにもサキに気づかれずに済んだようだ。
だが、この状況はまずい。
ユウミは手札から「フェアリーマジシャン」を召喚する。
「現れろ、カテゴリー3、フェアリーマジシャン!」
身長1メートルほどの、ピンク色の髪をセミロングにした少女が出現した。薄い生地の白いドレスがふわりとする。背中には一対の羽根。蝶を連想させるデザインでこちらも白い。
端正な顔でユウミに一度振り返ってにこりとした笑顔は何となく癒やされる。
攻撃力は1200。
「あたしはこれでターンエンド」
「可愛らしいモンスターだね、お姉ちゃん」
「見た目にだまされると痛い目に遭うわよ」
「それ、私のこと?」
「そうね、すっかりだまされたわ」
サキがクスクス笑った。
「でも、こんなもんじゃないよ……私のターン!」
サキの上げた手にカードが生まれる。
彼女は言った。
「マドンナの第二のスキル発動! このモンスターは毎ターンの開始時のドロー後に攻撃力が二倍になる! なお倍加した攻撃力はこのモンスターがフィールドを離れるまで持続する!」