第29話 すきなお菓子のはなし

文字数 1,863文字

私は名古屋の青柳ういろうのういろうと、赤穂の元祖播磨屋の塩味饅頭がすきだ。

かえるが柳の枝に向かって跳ねている絵柄でおなじみ青柳ういろう。かえる饅頭もかわいくておいしい。

塩味饅頭もいろいろあるけれど、私のお気に入りは播磨屋の塩味饅頭。

先日、夫が仕事で姫路に行くことがあり「塩味饅頭買って来たろか」と言ってくれた。
「うん! ぜひ! ありがとうっ(๑˃̵ᴗ˂̵) ういろうもあったら!」
と私が言うと
「ういろうは知らん」

そしてその日、お土産にかん川の塩味饅頭を買ってきてくれた。かん川のしほみ饅頭も美味しい。

私は大喜びで、夕食のあとにひとつ……お昼のおやつにひとつ……と、数日にわたり塩味饅頭を味わっていただいた。

夫は、私のすきなお菓子を「法事」と呼ぶ。「法事で置いてありそうなお菓子」と言って笑う。

たしかに、和風のゼリー菓子(キャンディーのように透明の包装でひとつひとつ包んだもの)や、最中もすき。法事って言われたら法事っぽいかもしれんけど、すきなのだ。

夫のこのみは、ホイップクリームの入ったどら焼きやチョコバッキーという名のアイスで、私の趣味とはちょっと違う。
ある意味、取り合いにならないのでよい。

息子たちも今まで法事系のお菓子にはそんなに反応しなかった。

だからひとりでひっそり塩味饅頭を堪能できた。

それが‼︎

中学生になった長男、塩味饅頭を「美味しい」と言いだした。

私は思ってもみない展開に少し焦ったが、まぁひとつ食べるぐらいだろうとたかをくくっていた。

息子はぺろりと3つ平らげた。

「えええっっ。3つも食べたん?? お母さんがひとりでじっくり食べようと思ってたのに〜〜っっっ」

大好物の塩味饅頭は、最後の3つを長男がパクパク食べてしまった。

「そんなバクバク食べるもんちゃうねんっ!!」

息子に怒っても後の祭り。

息子はヘラヘラ笑いながら
「えっ? あかんかった? だっておいしかってんもん」とご満悦。

10個入りだったので、すでに私が7個食べているのだが。

私の予定としてはあと2、3日、塩味饅頭を楽しめるはずだったのだ。

私は思惑が外れ、がっかりしてつい夫にいらんことを言ってしまった。

「今度から2箱買ってきて。なんならお金払うから」

ほんの冗談(ちょっと本気…)のつもりだった。

笑いながら夫にそうお願いすると、夫は一呼吸おいて

「イヤ」

まさか拒否されると思ってなかった私は
「なんで? いいやん! ついでやん! 今まで私ひとりで食べてたのに、もうひとりすきとか言って食べるようになってんからっ」

「はい。はい」と笑って流してくれるぐらいの予定だった。

夫は真顔で
「絶対、いや」

「なんで?!」

「お土産ってそういうもんじゃないやろ」

「……」

その話を聞いていた小学生の次男に「どう思う?」と聞いたら
「父ちゃんがあってると思う。だって、仕事で行ってるんやし」

普段はハチャメチャなくせに、まともなことを言うやつ( ̄ー ̄ )

確かに、姫路へは車で片道4時間ほどかかる。遠出だ。行って帰ってくるだけではない。仕事をしに行くのだ。その途中でお土産を買ってくれるだけでもありがとうなのだ。

長男に聞いても
「そりゃ、お父さんやろ」
と、夫の味方。

「そもそもあんたが3つも食べるからあかんねん!」
と私が言うと
「あかんの?」
と悪びれもせずに答える長男。

…………。

私の負けですか。

私の負けですね……。

でもね。ブランド物をほしがるでもなく、海外旅行に行きたいだの、シーやらランドやらに行きたいだのと言うわけでもなく、家族と公園でのびのび過ごせたら楽しい私なのだ。
このぐらいの希望、叶えてくれても……(T-T)

いやしかし。ジャニオタをすきなようにさせてもらっている。
あれもこれもに手は出さないにしてもコンサートには行きたい、CDや DVDも全てではないがそれなりに買う。
我が家の家計を考えたら決して安くはない趣味を、なんのお咎めもなく楽しませてもらっている。ありがたいことだ。感謝。

でも……。

誕生日プレゼントがお花の苗なのもうれしい。その苗を育てて花が咲くよろこびは、心に明るくてさわやかな風がふくようだ。

でもさぁ……。

たまにはわがまま聞いてほしいのよ。

まぁ、基本的には私はいつもわがままなのだが……(−_−;)

チーン……、なのですか。

あっさり私の完敗ですか。

塩味饅頭(T-T)

どう書こうが、なん度考えようが、この一件はやっぱり夫が正しい。

甘いものを食べすぎるのもよくない。

そうなのだ。

そうなのだけど……(T ^ T)

という、ホントにくだらない「塩味饅頭で一悶着」のはなしでした。



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