第30話 女郎蜘蛛は何処へ……(鬼滅ネタも少し)

文字数 1,593文字

 先週のこと、二日ほど花パト(花パトロールの略。花の様子を見に行って世話をすることを勝手にそう呼んでいる)をさぼっていると、もう庭の様子はあちこち変わっている。

 短く刈り込んだ枝から新芽を出し、青々とした葉を茂らせていた鉢にはもう花がつき始めている。
 この間まで元気だった紫式部は元気がない。
 なめくじにやられっぱなしだった花は元気を取り戻し、明るい黄色の花をいくつも咲かせていた。

 そんな様子を見ながらふと顔をあげると、目の前に大きな蜘蛛が。
「おおっ」と思い、よく見ると南側に一本植えてある木(名前がわかりません)とフェンスの間に大きな蜘蛛の巣が張ってあった。
 高さでいうと地面から1メートルぐらいの場所。
 こんなに目の前でじっくり見られるところに張られた蜘蛛の巣は初めて。
 蜘蛛の大きさは足も入れると5㎝ぐらい。
 黒と黄色の縞模様があり、美しい。
 思わずじっくり観察した。

 写真に撮りたくてスマホで撮影してみると蜘蛛にはピントが合わず、後ろのフェンスにピントが合ってしまう。

 調べると、昆虫を撮影する場合はマクロレンズというものをセットするといいらしい。なんと100円ショップで売っていると。文明の進歩はすごい! ということで、いつも行くスーパーの二階にある100円ショップで探してみたが見つからなかった。

 写真は撮れないけど、毎日蜘蛛の様子を見るのが楽しみになった。
 蜘蛛の名前を調べてみると、女郎蜘蛛という超メジャーな蜘蛛なのだそう。

 女郎蜘蛛と聞いて初めに浮かんだのは鬼滅の刃の那多蜘蛛山編。
 あんなに鬼滅に熱狂し、冨岡さんグッズを買い集めた次男(ヲタク気質)は、もうとっくに次の、さらに次の流行りものへと興味を移している。その間も彼のJUMP愛は揺るがない。その真剣ヲタぶりをちょっと尊敬してしまう。

 鬼滅の刃、「なんとなく残酷そう……」と敬遠していた私は、友達に「読んでほしい!」と強く勧められ、読み始めると序盤の錆兎のところでもうはまっていた。そして煉獄さんで号泣。わが家のリビングには半年ほど善逸と煉獄さんの新聞一面のイラストが飾ってあった。ちなみに私はアオイちゃん推し、長男は伊之助、次男は冨岡さん、夫は鱗滝さん推しだ。
 でも映画は観に行っていない。長男の友達は6回も観に行って6回とも号泣したとか……。わが家も先日テレビで堪能させていただきました。やっぱり鬼滅は熱い。日本中を鬼滅カラーに染めたのは、コロナ禍になる前でしたね。

 話が逸れまくりました。

 女郎蜘蛛、本当に動きが美しい。
 手足が長くてルックスが美しいというのもあるが、ある日見たときは蜘蛛の巣に落ち葉が絡んでいた。こういうのはどうするのかな、と花パトをしながら何となく観察していると、その落ち葉を蜘蛛が触り始めた。落ち葉も食べるのかなぁなどと思いながら見ていると、そっとそっと糸を外して、ポトンと葉っぱを巣から落とした。
 そして定位置に戻っていった。

 その動きが繊細でやわらかくて。
 掃除だ。家の掃除。蜘蛛の巣という家をきれいに掃除している。

 次の日見たときにはミツバチが巣にかかっていた。蜘蛛はそれを食べているのか保存しているのか、せっせとずっとなにかをしていた。

 毎日、女郎蜘蛛の様子を見るのが楽しみだった。
 そのうち、もう少し大きな店舗の100円ショップに行ってマクロレンズを調達し、写真を撮って日記に書こうと思っていた。

 そして今日見たら、女郎蜘蛛も、巣も、なくなっていた。

 立地があまりよくなくて引っ越したのだろうか。
 思わず仕事中の夫にラインしてしまう。

 めんどくさい嫁ですみません(~_~;)

 産卵のためでも、引っ越しでも、どこかで無事でいてほしい。
 蜘蛛の巣もきれいになくなっていたので調べてみると、蜘蛛は引っ越しの際、巣を食べていくこともあるそうだ。
 なんて美しい生き物なのだと思う。





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