思いやりを受け取る

文字数 1,372文字

 こどもの小学校に、絵本の読み聞かせに行ってきた。
 息子が小学校に入った時に、この取り組みがあることを知った。
「絵本の読み聞かせ」というものをもっと知りたくて、小学校とはまた別の、絵本の読み聞かせをされているボランティアグループに入れてもらった。
 本の選び方、持ち方、読み方などなど。何事も学ぶと奥が深い。私は約一年間、基礎的なことを教えてもらった。もっと深く学んで習得するなら、結構な時間と気合いが必要で、時間的に難しくなり断念した。
 読み聞かせの楽しさ、奥深さ、そして基礎を教えてくださった先生は「来る人拒まず、去る人追わず。どこかで読み聞かせを続けてくれたらいい」と言ってくださった。
 
 小学校で読み聞かせする絵本は、図書館の司書さんに相談して選んでもらったり、ネットで調べてよさそうな本を何冊か借りてその中から選んで読んだりしている。
 こどもたちは、入学した時からこの取り組みがあり、読み聞かせの時間に慣れている。
 その時間になると席に着き、聴く態勢を取る。

 本を選ぶのは難しいし、時間がかかる。読む練習も必要だ。最初は黙読、次は音読、そして読み聞かせをするように、絵本を聞き手に向けて開いて持ち、読む。
 絵本をグラグラさせずに持つだけでも、ある程度の慣れが要る。もたもたせずにページをめくるのも意外と簡単ではない。聞き手に向けて本を開いているので、読み手にとっては文章も見にくい。

 時間がある時は、自分が読んでいるところを動画に撮って、ここはもう少しこう読んだ方がいいかな、など修正して挑む。
 幼稚園の先生をされていた保護者など、たまにとても上手い人がいる。私の知る人はエンタメ系で、こどもを巻き込んで劇風にしたり、とにかくこどもはわくわくだ。
 図書館の読み聞かせ会で、司書さんの読み聞かせを聞いてもさすがだなあと思う。
 読み聞かせボランティアグループの先輩方の技術は、感動ものだった。感動して涙が止まらなかったこともある。

 私はそんなふうにはできないけど、毎回行ってよかったと思って帰ってくる。心がすーっとして、ありがとうという気持ちが溢れてくる。

 絵本を読んだら脳がどうのこうのとか、聞く力がどうのこうのとか、そういうことじゃなくて、クラスの子のお母さん(お父さんやお婆ちゃんお爺ちゃんの場合もある)が、一生懸命読んでくれる。
 おもしろい本もそうじゃなくても、読むのが上手でも下手でも、こどもたちは聞いてくれる。中には宿題してる子や、なかなか落ち着かない子もいるが、それもそれでいい。

 なんか、その気持ちのやりとりがありがとうなのだ。

 読んでくれてありがとう。
 聞いてくれてありがとう。

 本選びから読み方までプロフェッショナル並みで、その技術で絵本の良さをしっかりと伝えて心を動かすという読み聞かせは稀だと思う。
 素人の一保護がやっていること。贈り物としては「なんじゃこりゃ」な品物なのだ。
 でも、そこにある気持ちを、こどもたちは受け取ってくれているんだろうなあと思う。思いやりの渡し合いというか、受け取り合いというか。
 その時間が、やさしいなあと思う。

 私はいつも、心に温かい栄養をもらって帰って来る。
 去年からコロナ禍で、回数は減ったが、なんとか細々と続けることができている。
 こんな形で学校の時間に参加できて、うれしいなあ。


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