第37話 遅れてきた新人
文字数 2,683文字
皇太子として正式に宮を賜った時に、一度全て改装しているのだが、
その姉弟子に画像と図面を送ってチェックしてもらう事になっている。
「こっちが送り管ね・・・。それにしてもあちこち配管剥き出しで・・・内装はこれからなのかしら・・・」
いわゆるそれが特徴の洒落たデザインなのだが、
女官達が挨拶はするが、遠巻きにそれを見ていた。
まあ、水道管だの配電盤の事を彼女達が把握しているわけもないので、孔雀としては放っておいてもらえていいのだが。
人の気配に孔雀は顔を上げた。
若手の議員らしき人間が四人、こちらへやって来ていた。
皇太子が不在の宮に、何用なのか。
女官が呼び止めるが、かまわず向かってくる。
「・・・総家令の
優雅に礼をすると、彼等は驚いたように顔を見合わせた。
総家令は、元老院、議員、ギルドのそれぞれ三役としか直接顔を合わせないし、
それがどうして内廷である皇太子宮に入れるのか。
「あいにく、皇太子殿下はご不在でございます。私がご要件を申しつかりましょうか」
「・・・総家令、皇太子殿下に関わります事で、内密にお耳にいれたい事があります。どうぞ、人払を」
孔雀はそっと頷くと、近くの部屋の扉を開けた。
その様子を見ていた女官の一人が、女官長の
皇太子宮に議員が無断で入るなど、言語道断。
その上、家令と何か密談でもしているとなったら、女官の名折れだ。
「・・・殿下がいらっしゃらないのに、何用だというの・・・。そもそも議員は総家令には正式な書類がなければ会う事はできない身分のはずよ」
身分、つまり官位がない。
女官や官吏、元老院には官位がある。宮廷では何をするにもそれが全てだ。
ギルドと議員にはそもそも官位がない。
女官長の
「総家令。女官長の
しばらくすると、少しドアが開いて
見覚えのある
「・・・
異変を感じて、女官長の
「・・・・
調度類がいくつか破損し、倒れている四人の議員。
血の一滴も出ていないが、肩や足を押さえて
更紗は宮廷軍閥の家の出だ。何が起きたのかは察した。
この不届き者達が、孔雀を襲って、逆に返り討ちにされたのだ。
肩や股関節が一つづつ外してあるのだろう。
戦争をさせたら緋連雀が一番、喧嘩させたら金糸雀が一番、殺し合いさせたら孔雀が一番よ。
そう自慢気に言っていたのは幼馴染の皇女だったか。
腕に覚えのある
「・・・
申し訳ない様に言う
「貴女、もうこれ、大惨事ですよ・・・」
その日の内に、議員が女官に手を出し懲戒処分になったという話が宮廷を駆け巡った。
総家令への非礼では懲戒では済まない。
「本来はお取り潰しか、処刑ですよ?」
この女官長もなかなか物騒な事を言う。
女官が襲われたという話にしたのは
当然、真実は
何か事がある度に議員達は解散させられるが、今回は皇帝自らの決定ということで異例な不祥事となった。
厳しい取り調べで、その指示をしていたのが、
彼女は、二度と政治活動を行わないことと、登城を許されなくなった。
蜂蜜とラムの香りのする紅茶は、
「皇太子宮にあのような人物が出入りするというのがもう不敬でしょう。皇太子様は身辺整理をされるべきです」
女官長ともなると当然のように王族の私生活にも口を出す、のではなく。
最近、弟である
自分よりも両親が、何より心配していたから。
「
信頼して個人的な出資までしていた恋人がそんな所業に出るなど。
「今だけだ。あの別れ下手。いつも最後は
「・・・付き合う女性全て
呆れて
「とにかく関わった者全員免職。今後一切の登城は禁じる。藍の婚姻は年内に決めるよ。孔雀はしばらくひとりで歩かないように」
「・・あの、
「まあ、珍しい!新人さん?家令になんてなったらまともに結婚もできないのに。・・・
ちょっと責める口調なのは
「新任家令の
嬉しそうに紹介する。
「・・・・あなた・・・!」
処罰された議員の一人だ。
彼は肩身が狭い様子で礼をした。