迷子 1

文字数 409文字

 朝食後。

 医師の診察があるとのことで、ミハイルはハインリヒに別室へと誘導される。

 気のせいかミハイルはわずらわしそうだった。

 めずらしいとも思ったが、やっぱり医者というものは、だれでも抵抗感があるものなんだろう。

 ふたりを見送ったあと彩那は、図書室を目指してひとり廊下を歩いていた。記憶喪失のことについて調べようと思ったのだ。

 こちらに来てからもミハイルには助けてもらってばかりで、特に今朝はいたれりつくせりだった。

 これでは海外旅行を楽しんでいるのと変わらない。

 最初はそれも目的だったのだけれど。

 バイトとして自分ができることを彼にしてあげたかった。

 確実な治療法はないとされているが何も知らないよりはいい。

 もしかしたら多少のヒントになる可能性もある。

 スマホもPCもないのだから本で情報を収集するしかない。

 ミハイルにしてもらいっぱなしなのが気になるのもある。

 でも一番は、彼の役に立ちたいという想いだった。
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