迷子 2

文字数 392文字

 時折すれちがうスタッフに会釈され、彩那も会釈を返した。

 重厚な内装に行き交う、クラシカルな服装に時代感覚も狂いそうだ。

 それにしても歩けど歩けど、図書室らしき部屋は見つからない。

 当然案内表示はない。どんなに現実離れしたお城でも、ひとつの家族が住んでいる家なのだ。

 掲げられたドアプレートを見あげるも……たぶんドイツ語だろうが、まったく読めない。昨日はハインリヒについて行っただけで見流していた。

 また迷子だ。どうしよう。

 途中で何度かスタッフと顔を合わせたのだから、たずねればよかった。

 ほとんど、ひと気もなくなり自分の足音だけが響く。

 古城特有の静寂に少々気味が悪い。

 きょろきょろしていると、

——ここかな?

 荘厳な雰囲気のある扉が目に留まった。

 取っ手を引くと重々しい音を立てる。

 すきまから覗くと鮮やかなステンドグラスが見えた。

 透過した光が絨毯に虹色のたまりを作っている。
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