Amnesia-アムネシア- 4

文字数 232文字

「そろそろ戻ろう?」

 彩那は立ちあがる。いつまでも励まされてばかりではだめだ。

「いいの? まだゆっくり見ていてだいじょうぶだよ」
「うん。ありがとう。だいじょうぶ」
 彩那の返事にミハイルも立ちあがった。

「あれ、雨?」

 パラパラとまばらに打ちつける音を耳が拾う。ガラス越しに、無数の雨粒が流れているのが見える。
「ぼたん雪になっていたからね」

 温室を出ると真っ白だった足元は石畳へと戻っていた。

 雨に溶かされていく雪に、なんだか、魔法が解けたみたいで少しさみしく感じた。
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