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文字数 429文字

 彩那が落ちつきを取り戻したあとは、ミハイルの希望で王宮の中を見て回った。どこもかしこも芸術品のようで圧倒される。建物内には図書室や礼拝堂まであった。さすがお城。
 結婚情報誌に載ってる、おしゃれなチャペルとはちがい、重々しくて神聖な空気がただよっていた。古そうなステンドグラスもその歴史を物語っている。パイプオルガンの音でも聞こえてきそうだ。
「こちらがひとつ目の礼拝堂です」
「え?」
 ハインリヒの説明に彩那は面食らう。
「礼拝堂は合計三ヶ所あります。ですが三つ目の教会は立ち入り禁止ですので、お入りにはならないでください」
「へいへい」
 いちいちついて回る決まりごとに、辟易する。ブラック校則並みだ。食事といい、ミハイルはいつもこんな堅苦しい中で生活しているのか。彩那は、ちらりとミハイルを見た。色鮮やかな光をまとう姿が天使みたいだった。
『言ってくれたよね。自分が王子かどうか考えなくていいって』
 さっきの彼の言葉は、無意識に出た本来の彼の言葉だったのだろうか。
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