水面下

文字数 494文字

「んー」

 目を開けると白い天井が見えた。薬品っぽい匂いがする。

——なんで寝てるんだっけ?

 彩那は、まばたきをしながら、ぼぅっと考える。

 また寝落ちして彼にベッドまで運んでもらったのだろうか。そう思ったら浮上した意識がまた沈みそうになった。寝返りを打とうとするも、なんか気もち悪い。胃に違和感がある。

「アヤ」

 聞きなれた彼の声に彩那は首を傾げた。

「ミーシャ。わたしどうしたんだっけ?」

「ティータイムのあと寝ちゃったんだよ。慣れない環境で疲れが出たんじゃないかな」

 そうだったっけ。とにかくお腹が痛かったような気がする。点滴までつながれているし。

「ごめん。また迷惑かけちゃった」
「そんなことないよ。自分ではわからなくても、体に負担がかかっていることはあるから」

 落ちつかせるようにミハイルは彩那の頭をなでた。

「まだゆっくり寝ていて。あと数日で退院できるから心配しなくてだいじょうぶだよ」

「うん」




 その日のうちに、王室の公式サイトにメイドの公募が掲載された。

【第一条件として『語学に堪能(英語、ドイツ語、日本語など)であること』】

 暗い室内でPC画面を見つめる人物は口紅の引かれた口端を上げた。
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