書斎会議 1 ~従兄弟③~

文字数 523文字

(ディルクは特定の番号と頻繁に連絡を取っているが、相手は日本国内専用のレンタル携帯を使っていて、殿下襲撃直前、ポスト投函で返却されている。ネットカフェのPC経由で契約。今、割り出しの真っ最中だ——さすがに従兄弟様が糸を引いてるとは思わねぇけどな)
(ミハイル様がいなくなって、もっともおよろこびになるのはダミアン様ですからね)
(おまえも言うね)
 ハインリヒの発言にミハイルは失笑する。

 もし、今回の件でミハイルが消えれば、事実上次期国王はダミアンに決定したも同義だ。
(先ほども派手なパフォーマンスでしたから)
(昔からユニークなひとだからね)
 涙目で抱きつかれたときは、本当に困惑した。出迎えなどいつもなら絶対にしないのに。おおかた、記憶喪失の真偽をたしかめに来たのだろう。

 ミハイルとしては、とくに彼に対して思うところはない。けれど日頃から疎ましく思われているのは感じていた。王族内で年齢も近いふたりには、何かと周囲からの比較がまとわりついていた。学業成績や年間行事での活動に表彰、公の場での一挙手一投足にいたるまで。それが彼のミハイルへの対抗心に火をつけたのかもしれない。

 とりわけ彼らに注目が集まるようになったのは、前回の国王選挙も一因だった。
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