第46話 駈け付けるバイヤー

文字数 2,807文字

「アリエンタさん、どうしたの。」
「結構、バイヤーからのリクエストが多くて、重なっているのよ。購入希望が。」
「入札にすればいい。」
「でも、面倒だわ。」

「俺がやってやる。返事すればいい。購入希望が多いので、入札にすると。」
「いいの。」

「ああ、売値が上がるのは楽しい。」
「じゃ、お願い。」

「発電機が人気ね。」
「安いからな。売値はE国の店頭価格の20分の1だ。買値は売値の20分の1だから、ぼろ儲けだ。それに、どこでも品薄だ。一番、数が多い。業務用から家庭用まで揃っている。」

「E国の人向けの商品は確保してあるの。」

「ああ、ナサフがかき集めた。売れるだろう。E国の売値の10分の1以下だ。今日は各機関向けだったが、明日、政府に務めている職員向けの、先行販売をやる。ほんの一部だが、役所の給与も安いから、大サービスする予定だ。帰る時見たら、もう人が並んでいた。欲しい物があるんだろうな。家電とかパソコンとか。」


「結構いい、高性能パソコンもあったから、10台キープした。」
「こら、駄目だろう。閣下の所有物を。」
「閣下には言ったわ。」

「俺は歯ブラシを抜いた。」
「私は石鹸。」

「狛江さん、私も1台欲しい。」
「いいわよ、カールソン。1台なら。」


「狛江はそんなにどうするの。」
「大学に寄付するの。私の修士課程の取得が近いから。」
「持って帰るのにエクセスかかるわよ。」
「大丈夫よ。皆、K国経由で帰るから。」

「ところで、カールソン、武器は買えそう。」
「はい、最新ではないですが、玉が少なければ。」

「軍艦は。」
「K国の退役巡視艇を回します。無料でいいそうです。」
「軽戦車は。」

「重装甲車に砲を積んだのを出します。20台です。玉は100発だけです。」
「幾ら。」

「1億円です。もう使っていませんでしたから、整備して、砲を積みました。直接この港に軍の上陸用舟艇で運びます。」
「周囲の国が騒がないかしら。」

「偽装船ですから。大丈夫です。」
「他は。」

「小型ミサイルです。射程20キロ。GPS誘導です。訓練にネイビーが来ます。」
「そんなもの、いいの。」

「射程20キロはもう、I国軍では使いません。破棄されるのを押さえました。50基です。」

「そんなに。」
「一度打つと、ミサイルがないので。」
「幾ら。」

「難しいのです。廃棄の決まったミサイルを売るのは。多分、金は頂けないでしょう。」

「じゃあ、全部で1億円。」
「カールソン値引きは効きません。」

「ヘリはどう。」
「とりあえず、10機。旧式ですが、機関銃は積めます。」

「幾ら。」
「廃棄が予定されていたので、整備し直しました。でも、E国のパイロットを、空母で訓練する必要があります。価格は整備費だけなので、8百万でした。国防長官の決裁で、廃棄されたことになりましたので、金は取れません。」

「それで、相手国側にはこれで、抑止になるかしら。」
「相手国側はW国の武器ですが、小火器が主です。何とかなるといいのですが。」

「止められるかしら。」
「大丈夫です。最悪、空母から、戦闘機を発進させます。」
「良かった。」

「心配なら、りゅう弾砲を入れますが。」
「人が死ぬから、やめて。」


「なんだ。戦争になるのか。」
「そうならないよう、準備をしているのよ。ちょっと、きな臭いの。」

「そうか。それで、ナサフが大量のタイヤを持って行ったのか。」
「直ぐじゃないと思う。あの国、今、選挙しているから。」


「右派の躍進が危惧されています。大使館もピリピリしています。」
「発電機がいるわね。20台ぐらいは確保しておきましょう。」

翌日の先行販売は、大盛況で終わった。
本格的な販売が始まった。少しずつ商品を出して行く。
入札も始まった。


片桐の掛け声に、興奮したバイヤーが価格を吊り上げる。予定価格の5倍の値が付く。
競争のない商品は全て売り切れた。

3週間のセールは終わり、並べた商品は消えた。


港に続く道路は渋滞。
港には、何隻もの貨物船が、沖待ちしている。
国境への道にはトラックが列をなしている。
アフリカ中のバイヤーがやって来ていた。

空港にも臨時便が並び、空港開設以来、初めての混雑となっている。


食堂で、金を数える。
「3千億ちょっとか。以外に伸びなかったな。」
「30億が3千億になったのだから、良しとしなくちゃ。だけど、倉庫にはまだまだ商品がかなり残っている。どうするの。」

「来月、また、バイヤーが集まるわ。今回は、運送能力の限界で、中止せざるを得なかった。」

「そうですよ。片桐さん。欲張りはダメ、ダメ。」
「カールソンは全て知っていて協力したのか。」

「知りません。I国のお金で儲けたなんて知りません。」
「何だ。グルだったのか。」


「国務長官はワルです。加賀さんと密約です。武器を買うお金を作るため、目を瞑ったのです。というより加賀さんを利用したと思っています。でも、誤算は3千億の金です。国務長官はマネーロンダリング出来ればいいと思っていたようです。明日、閣下に報告しましょう。皆さんが帰るのは寂しいです。いつでも来てください。私は、カラと待っています。」

大統領に報告した。

「3千億もか。武器代が出来たな。」
「閣下、武器の購入費は、支払い済みです。」
「重装甲車砲が20台、小型ミサイル50基です。あと、中古ですが巡洋艦1隻とヘリ10機。」
「いいのか。貰って。」
「2ヶ月以内に、I国から、届きます。前線に並べて下さい。玉は少ないですが、多少の威嚇にはなります。」
「3千億はどうする。」

「私達は帰国します。商品の販売は続きますが、ナサフに頼んであります。後は、カールソンやナサフと相談して決めて下さい。相手国が攻めて来て、いざとなったら、I国軍が戦闘機を飛ばします。もちろん、攻撃します。閣下、絶対に負けないで下さい。国民を守る義務があります。もう、専制国家ではありません。閣下は正式な投票により選ばれた大統領です。胸を張って、転ば、いえ、戦って下さい。」

「儂はいい友を持った。次は日本に行くぞ。狛江、迎えに来てくれ。」
「承知しました。」

「片桐、大変だったな。お前が孤軍奮闘するのを見ていた。お主は戦士だ。日本から来た戦士だ。そして、加賀が、狛江とアリエンタを送って来た。加賀はわかっていたのだ。そして、お主の戦いが始まった。30億を3千億に増やし、本当の戦いの準備もしてくれた。忘れん。
「閣下は全て、ご存じでしたか。」


「ああ、加賀は全てを話してくれた。金の出所も、I国の思惑も、隣国の考えていることも。そしてこの日が来た。加賀は、戦いの時には必ず駈け付けると言ってくれた。1人では死なせないと言ってくれた。儂は待つだけで良かった。カールソンには悪いが、秘密を言う。武器も弾薬も揃っている。I国から買った。小火器の戦いでも負けない。今回はそれ以上の武器も揃った。相手は手ごわいが、若い将軍や将校達がI国とK国の訓練から帰って来て、前線に立つ。君達には感謝しかない。」


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登場人物紹介

加賀聡 機材設計コンサルタント。蒼コンサルティングの社員。

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