第２４話　カールソン登場

狛江はカラバとアンスの2人をE国に送り届けるため、再び旅立った。
ナイロビのジョモケニヤッタ空港でI国大使館書記官カールソンと合流し、一緒にE国際空港に降り立った。
カールソンのビザも問題なく手配されていた。


2人を自宅に送り届け、ホテルにスーツケースを下すと、大統領官邸に向かった。
着くと、面会を頼んだ。

「狛江、来たのか。ご苦労だったな。田舎者の世話は大変だったろう。
そうだ、忘れていた。ビザ発給の為のスタンプと国印、それに発給要領を渡しておこう。これがないとビザが出ん。」
「カラ閣下、お預かりします。友人を連れてきました。」

「加賀から連絡があった。珍しい酒を持ってくると聞いたが。」
「はい、1ケース、お持ちしました。」
「重畳じゃ。少し待ってくれ。つまみの用意をさせる。」

案内されたのは、テーブルにつまみの料理が並んだベランダのテーブルだった。

「今日は何から飲む。日本酒からいこうか。カールソンと言ったか、上着を脱いでネクタイをはずせ。何ならシャツも脱いでいいぞ。日本酒は飲んだことがあるか。」
「初めてです。」

「そうか、注いでやる。狛江、お主は、どうしても飲まないのか。カールソン、狛江の分まで飲め。」
「閣下、それでは。」
「閣下はよせ、カラと呼べ。お前は加賀の知り合いだろう。」
「ですが。」
狛江が肘でつついた。

「はい、カラ殿、飲みます。」
「良し、飲め。」

「狛江、つまみは足りるか。パスタやピザがいいなら作らせるぞ。」
「いいえ、十分です。」

「そうか。狛江は遠慮するからな。」
「カールソン、どうだ。」

「初めて飲みましたが、美味しいです。」
「そうだろう。儂も初めて飲んだ時、旨くて驚いた。」

バーボンの瓶の蓋を開ける前に、2人は酔い潰れた。

「カールソン、負けんぞ。」
「僕も負けない。」

寝言でも、競争している。
狛江は、側近を呼んで、カラを寝室に、カールソンを客室のベッドに入れると、車を頼んで、ホテルに戻った。


翌々日、カールソンを迎えに行くと、2人でまた飲んでいた。

「カラさん、この酔っぱらいを連れて帰ります。」
「もう、帰るのか。狛江は忙しいからな。」
「また、来ます。」

「おう、待っている。カールソン、お前は近くの国にいるのだろう。いつでも来い。今度来るときは、もっと安いバーボンにしろ。高いのはどうも性に合わん。」
「わかった、カラ殿、今度はとびきり不味いのを持って来てやる。」
「おう、持って来い。勝負じゃ。」

2人が盛り上がったところで、カールソンを車に乗せ、ホテルに行き、まだ開けていないカールソンのスーツケースを積み込んで、空港に向かった。

ジョモケニヤッタ空港に着くと、
「狛江殿、醜態を晒してしまった。申し訳ない。」
「いいのよ。偶にはカラに会いに行くのよ。バーボン持って。」
「承知しました。」

カールソンは大使館に戻った。酒を抜くためにコーヒーを飲んでいると、大使に呼ばれた。

「どうだった。」
「飲み明かしました。」
「大統領とか。」
「今朝も飲んで、いつでも来いと言われました。狛江殿がたまには行けと言われましたので、来月も行ってきます。」

「それで。」
「友達を連れて来てもいいかと聞いたら、私が一緒なら、構わないと言われました。」

「誰を連れて行く。」
「大使、ご一緒に。」
「おお、本当か。いつ行く。でも、ビザはどうする。」
「私の同行者はビザが免除されるよう、カラが手配してくれます。来月にでも、その前に、安いバーボンを探さないと。」
「どうするのだ。」

「一緒に飲むためです。今回のバーボンは上物でしたので、安いのにしろと言われました。」
「本部から、取り寄せろ。」
「でも、奴らが送って来るのは上物ばかりです。」
「よし、儂が頼んでやろう。それで、国交の件は。」

「加賀が来た時でいいかと言われましたので、いいぞと答えておきました。」
「何、もう、返事したのか。」
「まずかったですか。それで、来るとき、皆好きな酒を持ってくるようにとの伝言です。飲めない者は旨いジュースを用意するそうです。」

「大使閣下、今日はもういいでしょうか。飲み過ぎで倒れそうです。カラの奴、強いのです。負けました。」
「ご苦労だった。今日はもう帰っていいぞ。」

大使は、カラとは誰だと思った。暫く考え込んでいたが、大統領の事だと気づいた。カールソンはカラと呼んでいたが、そんなに親しいのなら、E国領事館が出来たら、領事に推薦しよう、と決めた。
しかし、毎晩飲み明かすのではないかと、ブルっとした。


大使は早速、本国に連絡を入れた。
カールソンの情報は、本国にも伝えられ、安いバーボンが用意された。