第43話 助っ人

文字数 2,041文字

会社に帰り、社長と話した。

「加賀が君を返して欲しいと言って来た。君の意思に沿おう。」
「ここでの、講義が一段落して、HB大学での短期講義が終わりましたら、加賀さんの所に戻ります。私を救って下さった方々の上司です。足は向けられません。」

「そうか。君は、大学教授としてもやっていけるのに、コンサルタントを選ぶか。」
「私は根っからのコンサルタントです。加賀さんと同じです。」


アリエンタはHB大学での短期講座を終えると、F国に直行した。

「加賀さん、帰りました。」
「うん。大変だったろう。頭の固い連中を教育するのは。」
「はい。でも、皆、熱心でした。」

「僕の友人に片桐という商社マンとカラという政治家がいる。彼らを助けてくれないか。E国だ。狛江を付ける。」
「狛江さんを、ですか。」

「K国のスタッフも充実してきた。もう、大丈夫だ。」


「その前に、カリナさんと涼子さんに会いたいです。恩人です。」
「もう、来ている。ホテルで君を待っている。」

知らないうちに、涙が目から溢れていた。
「加賀さん、気配りですか。」
「そうだ。初めての気配りだ。3人で休暇を過ごすといい。」

3人は、海沿いのホテルで、楽しい休暇を過ごした。
夢のような毎日だった。
恩人たちと過ごす休暇はアリエンタにとって、人生最高の日々だった。
神、いや、加賀さんからの贈り物だった。


アリエンタはE国に飛び、片桐に会った。

「片桐さん、助っ人に来ました。」
「君がアリエンタ君か。色々考えているが、まとまらない。」
「片桐さんは、商社マンですよね。会社やグループ会社に沢山の死蔵している在庫がありますよね。それを全部持って来ましょうよ。」
「どうする。持って来て。」

「持って来てから、考えましょう。30億は、片桐さんの昇進に使うのです。30億の在庫が減れば、波及効果は10倍以上になります。会社も無視できません。」
「いいのか。」

「どうせ、30億は使わないといけないのですから。カラ閣下とカールソンさんも協力して頂きます。但し、環境に影響を与えるものは無しです。電源もここで使えるものに改造してお願いします。」

「いったん、日本に帰らないと作業出来ないが、1人で大丈夫ですか。」
「狛江さんが来ます。」
「狛江さんが・・・。加賀が懐刀を出してくれるのか。それなら、安心して僕は帰れる。後をよろしくお願いします。」
「商品リストはわかり次第、送付お願いします。」
「もちろんだ。」

片桐は帰国した。


狛江と合流して、カラ大統領に会った。
「狛江、来てくれたのか。酒も一緒か。いつもすまんな。隣の若い女性は仲間か。」

「ドクターアリエンタです。閣下を支援するために、加賀が派遣しました。」
「アリエンタです。H国の貧民街生まれです。よろしくお願いします。」

「H国か。遠い国だな。ご苦労さん。」
「閣下、微力ながら、何かできればと思っています。これからの予定を作って来ました。お渡します。」
「予定があるのか。どれどれ。」

暫く眺めていたが、
「わかった。やらなくてはならないと思っていた。躊躇っている場合ではないな。I国政府にも連絡してみよう。」

「加賀が国務長官から同意を得ています。支援するそうです。」
「何、同意が得られたのか。加賀の奴め。やりおるわい。」


次に領事館のカールソンを訪ねた。

「いよいよですか。いつから始めます。」
「領事カールソンさんのE国政府への出向命令が来てからになります。」
「私の留守は誰が。」

「ジェームズ書記官が臨時赴任します。」
「ジェームズが来てくれるのか。加賀さんは抜け目ないな。」
「お互い様です。」
「ドクターアリエンタは噂通りの方だな。」


E国は議会制民主主義への移行を宣言し、即日、大統領の選出と1院制議会の議員選挙の実施が公布された。

カールソンは大統領顧問となり、選挙管理委員会を立ち上げ、憲兵隊隊長のナサフが委員会の委員長を兼任することになった。

大統領に立候補したのは、カラだけだった。


議員に立候補したのは、大臣や長官だった者、企業の経営者、民衆から押された者などで、軍からの立候補はなかった。
軍は既に、カラに忠誠を誓う若い将軍達が指揮していた。

静かな選挙戦が始まった。
選挙演説は指定された会議場などで、時間を割り当てられて行われた。全国20ヶ所の会議場を回る候補達にも疲れがみえる。

開票の結果、大統領はカラ、任期は6年。
議員は、元大臣や長官が5人、企業の経営者12人、民衆派が残りを占めた。
民衆派は母の会と呼ばれ、カラの叔母の支持者達だった。

任期は6年で50名。2年後に、さらに50名の議員追加選挙が行われる。
要するに、議員定数100名、3年ごとに半数が改選となる。
議員報酬は高くない。官公庁の課長レベルとなった。

だが、実際の議院内閣制の実施は1年後となる。当選した議員たちには、K国とI国の支援により、議院内閣制への知識を高めるために、セミナーや海外研修への参加が義務付けられた。

I国の傀儡政権だと、揶揄した国もあったが、今はこれでいいと考える国が多かった。


ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

加賀聡 機材設計コンサルタント。蒼コンサルティングの社員。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み