第45話 大セール

文字数 2,685文字

「カールソンさん、ご苦労様でした。そろそろ船が着き始めますが、大丈夫でしょうか。」
「倉庫は確保しました。武器庫も幾つか押さえました。輸送の警護は憲兵隊にお願いしました。」

「それでは、梱包ごとに番号を振ってありますので、番号ごとに輸送するよう、頼みましょう。」
「それにしても、凄まじい数だな。」
「安いとわかれば、近隣国の商人が集まります。」
「だと、いいですが。」

「商品リストと販売価格は、近隣の商人に送付しておきました。問い合わせも来ています。」

「いつの間に。そつが無いですね。販売員はどうします。」
「ナサフが手配するそうです。商品明細と価格の情報は渡してあります。」

「売るだけですか。」
「販売員の労賃は物品で払うようにします。既に指示してあります。どうせ、商人が外で待って、買い上げるでしょう。高く、売れます。」

「アリエンタさんと狛江さんは、加賀さんの部下ですよね。」
「そうですが。」
「何でもありません。」


片桐が到着して、チャーター船がN港から輸送する。

「片桐さん、予想売上は3000億になったそうですが、本当ですか。」

「買値は売値の30分の1以下だから、本来は1000億程度のはずなのだが、ただでいいから処分してくれと、他社から頼まれたものが多い。旧式だが、車両があったり、重機があったりして、高額商品が増えた。幾らで売れるかわからない物も多い。」

「30億が、どうしたらそんな金額になるのかしら。」
「やれと言ったのは、君だろう。」
「でも、こんなに持ってくるとは思わなかったわ。」
「在庫というのは、例え千円でも金が動けば、這い出てくる。うちだけじゃなく、他社も相当、在庫を処分したようだ。」

港に着いた荷物は次々と首都に運ばれていった。
後に残ったのは、重機と車両。
「高く売れそうね。」

「ああ、日本での売値は10億を超える。」
「どうして、在庫になったのかしら。」
「出荷ミスだろう。取り残されたけど、何処のだかわからない。だから、処分も出来なかった。この際、運んでもらえば、なかったことになる。」

「車両番号を調べればわかるはずよ。」
「わかった所で、相手がクレームして来なければ、動かない。こちらから、わざわざ知らせると、コストがかかる。とりあえず、軍の倉庫に入れておこう。」


「片桐さん。」
「よお、カールソン、どうした。」

「車を売って下さい。」
「いいぞ。持ってけ。」
「10台全部いいですか。」

「いいぞ。」
「3千万でいいですか。」
「いいぞ。」

「カールソンさん、重機はどうするの。」
「ああ、領事館を建ててくれた建設屋さんだね。」
「重機は売り物じゃないんですか。」

「ちょっと待って。」
「片桐さん、重機、幾ら。」
「10億でどうだ。」

「安い。メードインジャパンだ。持って行っていいか。」
「いいぞ。」
「金は、末に払う。」
「いいぞ。分割払いは2回までだ。」


「カールソン、車は何に使う。」
「もちろん、領事館だ。I国から、護衛が来るけど、車が間に合わない。それに、スパイ、いや書記官の車もない。まだ、足りないくらいだ。」

「次の便で、あと10台来るぞ。」
「全部買う。」
「ジープだぞ。」

「じゃあ、5千万で買う。」
「ああ、いいぞ。」


「狛江、自転車があるのか。」
「あるわよ。千5百台。」
「売ってくれないか。」
「馬鹿、いえ、閣下のものじゃない。金なんか要らないわよ。自分の商品にお金を払っちゃ、駄目よ。払ってどうするの。」

「各省庁で使いたいそうだ。」
「持って行って。」
「いいのか。狛江は気前がいいな。」

「だから、閣下の物でしょ。とにかく、売れる前に好きなだけ、持って行って。」


「狛江さん。」
「あら、ナサフどうしたの。」

「タイヤ、売ってくれないか。」
「どうするの。」
「憲兵隊の車用だ。」

「いいわよ。持って行って。」
「幾らだ。」
「ただよ。閣下の所有物だから。閣下には言っとくわ。」

「狛江は気前がいいな。」
「だから、・・・、とにかく、売れる前に持って行って。」


「あら、学長、どうしたの。訓練所の所長も。」
「工具や工作機械があるけど、高いのか。」

「ただであげるから、好きなだけ持って行って。」
「狛江は気前がいいな。」
「もう、馬鹿っ。」


「カラに聞いて来た。片桐、靴や靴下、それに子供服があるけど、持って行ってもいいか。」
「いいですよ。閣下からのプレゼントです。好きなだけ持って行ってください。明後日から、売り出しますから、その前に。」

「片桐は優しいの。若かったら、抱かれてやったのに。もう、乳も出んようになった。」
「お母さん、重いから、子供達に任せて。」

「片桐、荷車があるな。」
「カートですね。」
「借りていいか。」

「あげます。」
「片桐、乳はでんぞ。」
「お母さん、憲兵隊が運転するから任せて。」

「片桐、儂はお主に惚れた。でも、乳も出ん。」
「ほら、子供達が帰りますよ。」


その夜、食堂で、4人がワインを飲んでいる。

「カールソン、車動いたか。」
「調子いい。エンジンの音が小さい。」

「片桐さん、車売ったの。」
「カールソンが全部買った。」

「いいのかしら。」
「気にするな。カールソンが本国から褒められたそうだ。新車を20台も格安で確保したって。そうだろ、カールソン。」

「市価の半分以下だ。鼻が高い。金一封が出るかもしれない。」
「幾らで売ったの。」

「全部で8千万。だな。カールソン。」
「いい買い物だった。」

「重機械がなかったけど、カールソンが買ったの。」
「建設会社が買った。10億だ。」
「もう全部着いたの。」

「カールソンに売ったジープ10台と、プレハブが10棟、港にある。」
「どうするの、プレハブ何て。」


「買う。」
「どうするの。」
「車の車庫にする。」

「土地はどうするの。」
「カラから貰った。領事館の近くだ。賄賂を渡した。」
「カールソン。」

「日本酒1ダースだ。僕の金だから。大丈夫だ。」
「じゃ、カールソンの土地ね。」

「I国の土地じゃないのか。」
「権利書を調べなさい。」


部屋に戻って、駆け足で戻って来た。

「本当だ、僕の名義だ。」
「売りなさい。I国に。」
「それは拙い。犯罪になる。」

「片桐さん、ただで売るから。売って。」
「構わないけど、名義が変わるだけだろう。」
「1千万で買う。」

「そんなことをしたら、俺が儲かるだけだろう。それに外国人が土地を買えるのか。」

「何故、僕は買えたのだろう。」
「大統領決済だからだろう。」

「何も言わなければわからない。黙っていろ。」
「そうする。他に方法がない。」

「E国が売ってくれなかったから、代理購入したと報告しろ。それから、忘れた頃に名義変更すればいい。うちの会社なんか、よくある。」
「片桐さんは賢いな。」


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登場人物紹介

加賀聡 機材設計コンサルタント。蒼コンサルティングの社員。

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