第十四章 【ヒビキ】

文字数 1,420文字

 例の仕上がり具合が気になるからセンプクさんに連絡取ろうと思ったけど通じない。スオウさんに連絡入れたら、うちおいでってことになった。

 で、こんにちは。
「いらっしゃい。あがって」
「バイパスからずっと山椒畑の中を通って来たけど、全部スオウさんとこの土地でしょ」
「そうだよ。昔はここから名曳川までうちの土地だったらしいけど」
「すごいね。さすが大地主だね」
「いまはもう没落しちゃってね」
「そんなことないでしょ。これだけ土地あれば」
「いやいや、ほとんど借金の担保になってるから」
 たしか、スオウさんのご両親、スオウさんが中学生の時亡くなったんだったな。苦労したんだろうな。
「そう言えば、この間ココロが来てくれたよ」
「みんなのところ回ってるみたいね。スオウさん返事した?」
「しなかった。襲うでしょ」
「そんなことないよ。ココロなんだよ」


 この家、築何年ぐらいたってるのかな。年期入ってるね、このブットい柱。庄屋様のお屋敷って感じ。おー畳の部屋だ。あれ? 広縁で浴衣着てくつろいでるのセンプクさんじゃない。どうしてここに?
「ちょっと家であって逃げてきてるんだ」
「やっほー、カリーン」
 あい変わらずだな。とりあえずスオウさんと話そうか。どうやって切り出そう。
「あー、レイカはあとちょっとだけど、使えないことはないよ。それ聞きに来たんでしょ」
 この人たち勘働きがいいんだよね。昔からそう。丸々見透かされてる感じがして居心地悪かったんだよね、女バスの頃は。
「レイカは知ってるの? 自分がその」
「ヴァンパイアってこと? 知ってるよ。いろいろ思い出したみたい」
「そうなんだ。で、どんな感じ?」
「昨日の感じだと、9割出来かな。あと一押しってとこ」
「確認する方法はあるの?」
「一番簡単なのは血の匂いを嗅がせることかな。すぐ本性現すから、その時の鏡の映り具合を見て。まったく見えなくなれば完成」
 本性現すって、それってこっちの命が危ないってことじゃないの?
「セーブできるの、あいつ?」
「多少は」
「信用できない」
「今のレイカはママのバイアスかかってるから」
「本当に大丈夫?」
「多分」
 確かめるのはなしにしとこう。死ぬのはゴメンだから。
「で、カリンはヴァンパイアのレイカ使って本気で町長を倒す気?」
「うん。ほかにもいろいろ」
 笑いたければドーゾ。
「いいかもね」
 あれ? 反応いいな。
「町長の件は手伝うよ。こっちもヒマワリを何とかしたい」
 なるほど利害一致ってやつだ。
「じゃあ、決まり。決行はいつがいい?」
「こっちはいつでもいいけど」
「なら、7月31日はどう?」
「それはちょっとまずいかな。辻沢中のヴァンパイアが役場に集まることになってるから」
「そうなの? それって、ヴァンパイアの皆さんが家に居ないってことだよね。その日、『妓鬼・フィーバーナイト』なんだけど、変だな」
「なにそれ?」
「『スレイヤー・R』ってゲームのイベントなんだけど」
「ゲームの話? カリンもオタクなの?」
「いや、あたしは違うし」
「いやいや、今、目の色が変わったよ。オタクなんでしょ」
「違うっつーの」
「ホントに? レイカもあやしいんだよね、あいつ」
 あれ? メールだ。何でセンプクさんから? 
「カリーン」
 縁側で手を振ってる。今打ったんだ。
「女子会開催のお知らせ。参加者:女バス関係者全員(川田先生除く)。日時:7月31日21時。集合場所:役場の駐車場。備考:戦える格好をして来ること」
 じゃ、決定ってことで。
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