第十七章 【レイカ】(4/11)

文字数 1,063文字

 役場はとーに、みなさんご退庁されてるけど、見上げる円盤の中では、何かが蠢いてる。
「あたしらは町長をやっつけて、この歪んだ町にあのころの輝きをとりもどすんだ」
 ミワちゃんの「戦える格好」ってやばい。鉢巻にサイリューム3本差して、丑の刻参りみたい。しかも白装束って。
「ねー、ミワちゃん」
「なによ? こっち、気が立ってるから話しかけないで」
「やっぱチーム名決めとかなくちゃじゃない。ねー、ナナミ」
「うっさいな。どーでもいいしょ。名前なんて」
 まー、ミワちゃんのカッコがカッコだから、ナナミのスケ番姿は許すよ。
「だって、ウチの好きな『ヴァンパイア 最後の聖戦』って映画では、ヴァンパイア倒す人たちはチーム名あったから」
「おま、またそーいうこと言って。やっぱレイカ、オタクだろ」
「ちがうよナナミ。スリコギに誓って」
「は? 何に誓ってんだよ笑」
「どんなよ。イチオー言ってみ」
 ミワちゃんありがと。ミワちゃんはいつだってウチの味方だね。
「映画のは、チーム・クローっていうのだけど」
「くろーしそうな名前だから、却下」
「ミワちゃん、ちがくてね。ウチはもっとウチららしい名前をって」
「じゃあ、チーム・レイカでいいよ。基本、レイカに戦ってもらうんだから」
 そうなの? で、みんなは何すんの?
「ちょっと待って、それってヴァンパイア倒す側のチーム名じゃない?」
「ビンゴ! さすがナナミ。バチカンに雇われた人間のチーム名」
「ならダメだ。あたしらヴァンパイアの血筋だ。逆に、ヴァンパイアのほうは名前なかったの?」
「悪の軍団とかは?」
 ミワちゃん、それめっちゃださい。
「ヴァンパイアのほうはヴァンパイアーズだった」
「いいよそれでいこ。ウチら向きだ」
「でも、まるパクリだと炎上するし」
「なら、辻女ヴァンパイアーズだ!」
 ミワちゃんさすが、辻女こそウチらのアイデンティティー。
辻女ヴァンパイアーズか。かっこいいなー。
「辻女ヴァンパイアーズのザ・デイ・ウォーカー、レイカ!」
 って誰かに言ってほしい。あと、ユニホーム揃えよね。今度はウチもゼッケン付きがイイな。できれば町田瑠唯ちゃんの13番。

「よし決まった。じゃ、腕出せ!」
 お! ナナミ。やる気だね。
「いくよ! 辻女ヴァンパイアーズ。敵は町長一人! 山椒は小粒でピリリと辛い! 舐めてっとー?」
「「「すりつぶす!」」」
 ミワちゃん、ナナミ、カリン、セイラ、ヒマワリ、シオネ、ココロ。みんなの腕、みんなの顔。思い出しちゃったよ。あの頃が一番幸せだった。
「レイカ。行くぞ」
 ナナミ。
「行こう。レイカ」
 ミワちゃん。
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