第五章 【ヒビキ】(1/3)

文字数 806文字

 電話だ。スオウさんから。珍しいな。
「はい。あー、分かるよ。おひさ。まあまあ忙しいかな。うん。シラベが帰って来たんだ。いや、知らなかった。そうなんだ。ひさごで、来週の金曜日に。時間は遅めで。うん。分かった。じゃ」
 それにしてもスオウさんは未だに通話オンリーなんだな。女バスでSNSグループ作ろうってなった時、スオウさんがそんなオタクなことするならバスケ部辞めるってなって、結局女バスはいつも電話連絡だった。女バスで集まるの卒業以来か。情報収集できるから今回は行ってみようか。シラベに会うの、気が重いけど。

 先週は仕事が忙しくてお休みしたから2週間ぶりのジョーロリ講座。お師匠さんってば、
「いいのよー。真似してくれればー」
 って言うんだけど、何言ってんのかが分からないのに、どうやって真似しろっての? 最初の最初に、サワリのところだけ録音させてもらえたけど、それさえ聞き取れてないのに。
録音していいですかって言っても、
「覚えられるわよー」
 って許してくれない。だから、全然進まないんだよね。勘亭流みたいな太い字で書かれたテキストも全然読めないし。結局また、テキスト1ページ分も進まなかった。
「ヒビキさんは、いい香りがします」
 え?
「取り入れたばかりの洗濯物みたいな」
 おテントウさまの香りってやつですか? それは褒めていただいたんでしょうか?
「それでヒビキさん。あの人のことはどうなりましたでしょう?」
「引き裂けたかと」
 浮気相手を告訴って話振ったら、あの巫女さん泣きだしちゃって、宮司さんにムリヤリだって。駅前のスイーツ屋さんで、はいはいって感じで話聞いて、パンケーキプリンアラモード食べさせて帰しただけだけど。
「はて? そのような感触はなかったような」
「そうなんですか?」
「あの人に何かあれば、すぐにこの胸に響きますので」
 えー、なんかすごい。強い絆で結ばれてる二人なんだ。それなのに、宮司さんってばサイテー。
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