第十七章 【レイカ】(1/11)

文字数 1,122文字

 ただいま。っても、返事あるわけないか。
「お帰りなさいませ」
 あれ? 今日、高倉さん来る日だったっけ。
「特別にまいりました」
 そうなんだ。
「お昼はどうされましたか?」
 お昼ご飯まだ食べてない。これから作るの大変だな。
「店屋物でもとりましょうか」
 それがいいです。そうしてください。
「どんなものがよろしいですか?」
 なんでもいいです。おいしければ。
「お風呂、沸かしてありますから、待ってる間にいかがですか」
 そうしよ。昨日の晩、入らなかったし。

 気持ちよかったー。なんか久しぶりのお風呂って感じだった。
てか、げっぷひどくなってきて風呂場でずっと変なおっさんたちの薀蓄聞かされてた。いつまでこれ続くんだろ。作左衛門さんは人に拠るって言ってたからな。
 まったく、どいつの話もウィキペディア見れば分かるよーな内容バッカでうんざりだよ。
 
 ん? このニオイは? イヤー、なんか和むねー。気分いーねー。
おー、うな重だ!
「おいしそーですね。これ頼んでいただいたんですか? お金払います」
「いいえ、こういう時のためにと、前よりお母様から預かっておりましたので」
ん? どぃうこと?
「お母様はもしものことがあった時にと、レイカ様のために色々ご準備されていらっしゃいました」
 織り込み済みってこと? 

 まいっか。まず食べよ。
「さ、お召し上がりください」
 おいしそー。いただきまーす。
目の前の薬味入れは。クンクン。お、うちに山椒があるなんて。じゃあ、遠慮なく。山椒掛けてっと、また掛けてっと、もっと掛けてっと、まだまだ掛けてっと。
「あの、かけすぎかと。山椒が山盛りになっていますが」
 あ、ほんとだ。もうちょっとかけて。もうちょっと。んーいい匂い。
「お食べになりませんですか? ずっとそうして鼻をお重につけていらして」
 はーい。これでいい感じデズ。
「しかたがないです。辻のヴァンパイアですから」
 だよねー。山椒のことだけはママが正しかったよ。これは人をダメにする薬味だよ。って、高倉さんなんでそのこと知ってるの?
「私は棒辻の者。辻王にお仕えする家のものですので」
 高倉さん、介護士じゃなかったの?

 やっと、頭がはっきりしてきた。高倉さん、山椒片づけちゃったんだね。どこに隠したんだろ。
「山椒は我々の弱点です」
 知ってます。
〈山椒の皮に含まれる痙攣毒、麻痺性成分キサントキシンが、ヴァンパイアの中枢神……〉
 まーたゲップのやつがうるさいことを……。
「だまらっしゃい!」(怒号)
 ひぇ! ビックした。高倉さん、すっごい迫力。
〈……〉
 おー、黙ったよ。なんかママに叱られたボーズみたいだな。
「今のでしばらくは黙るでしょう」
「ありがとうございます」
 高倉さんの笑顔、初めて見た。
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