第四章 【レイカ】(2/8)

文字数 1,512文字

 役場に着いたら、ミワちゃんから、
「こんど、みんなで集まろうってなって。レイカも帰って来たしって」
 そう言われた。みんなっていうのは、女バスの仲間のことだけど、ドージにあの事件に関係のある人のことでもあるんだよね。だからアンマ気が進まない。きっとみんなどうにかなっちゃう。

 役場のお風呂、いいお湯だった。ちょっと髪の毛まだ濡れてるっぽいな。夜、冷房効きすぎて寒いから、風邪ひかないようにしなくちゃ。雑草ジュース置いてある。ミワちゃんまたくれたんだ。サー仕事、仕事。
 しまった、家にスマフォ置いて来たった。ったく、どーやって長い夜を過ごせってユーのよ。

 今夜は特に暇だなー。ちょっと探検しよっと。このフロアだけならいいよね。気になってんのがあるんだ。あれなんだろーってずっと思ってた。フロアの真ん中に山椒の大木が生えてんの。人工のだけど。その下に女の人が寝てる銅像があるんだよね。

『遊女 みやぎの像』

 だって。遊女ってなに? 説明書き「わがちをふふめおにこらや」だけだし。どういう意味だろ。スマフォないからググれないや。この人、宮木野神社に祭られてる人だよね。
辻沢の古い言い伝えで

志野婦神社の志野婦さんと宮木野さんは双子のヴァンパイア

っていうのある。この像、寝てるのかな? 死んでるのかな? あれ、この顔どっかで見たことある。っていうか、知り合いに一人はいる顔だ。なんか親しみがわくよ。て言ったからって、くわ!って、目を明けて起きてこないでね。あそぼーなんて言っても遊んであげない。ウチ、仕事中だから。やっば、窓口に誰か来てる。

置いてったよ。
気付かれないようにやってきて(歪曲)、
無言で(脚色)、
「特殊縁故結縁届」を窓口に(現実)。
初めてのお客様です。これを、窓口付きのパソコンに打ち込めば。あれ? ボタン押したのにな。ブーンて起動してこない。フツー、マウスいじったら画面が明るくなってさ、登録画面が出て来て、そこに内容を打ち込んで終わりっていうのじゃないのかな。おかしいな。そう言えば、ミワちゃん何か言ってたな。「何かあったら引き出し見ろ」だった。引き出しの中に名簿みたいの入ってた。これに書き込めばいいんじゃね? そうだわ。「特殊縁故結縁届控え」ってある。最後のページ開いて。こういう場合は、ボールペンっしょ。カキカキ子「小島 孝平」っと。これ小島さんのオジサンと同じ名前だな。住所は、やっぱそうだ。小島さんのオジサンだ。どぃうこと? オジサンがLGBTってことなの? つまりオジサンは今度再婚するってことになるよね。セーヘキの疑いが解けたわけでないけど、これはスナオにおめでとだよ。こんど道であったら、おめでとって言ってあげよ。あ、家から出られないのか。でもこの間うろついてたよね。トモカク、誰となんだろ。届け出は小島さんの名前だけしか書くとこなくて、たぶんフクザツな事情があってのことだろうから、相手は書かないシステムなんだね、これ。
 ん? 名簿にメモ用紙挟んである。これって昨日失くした、ここ行っちゃダメ地図じゃない。こんなところに紛れ込んでたのね。裏になんか書いてある。

「レイカシネ」

マジすか? 何これ。 新しい展開へツヅク? って、こわ。え? え? ここで、ウチのこと知ってるのって、ミワちゃんだけじゃん。ははーん。ミワちゃんのいたずらだね。でも、ミワちゃん、こんなことする? じゃあ、だれ? こわいって。マジ、怖いんだけど。仕舞っちゃお。もとに戻しちゃお。よーし。これはウチ、知らん案件ってことで。おしまい。もー、忘れた。ハイ、忘れたー。あれ? そういえば、ここにドカ盛り白桃ゼリー入れといたのになくなってる。
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