第17話 恋する花子さん 荒ぶる魂の暴走
文字数 4,173文字
翌日、藤友君は学校を休んだ。僕は午前中、気が気じゃなかった。
昼休みに入ってすぐ、藤友君から着信があった。
「東矢か? よかった、繋がった。俺は今どこかに捕まってる」
「藤友君!? 大丈夫!?」
「今のところ大丈夫だ。GPSで場所わかるか?」
僕は急いで藤友君の場所を調べる。寮と学校の間あたり。僕は急いで向かう。
昨日僕が花子さんと会って指差した、歩道から少し離れた木の背後の茂みの陰に、昨日と同じように花子さんが小さく蠢いていた。
GPSは花子さんと同じ場所を差している。
「ごめんっ藤友君。花子さんには昨日藤友君に近づかないようにお願いしたんだけど」
「いや、お前のせいじゃない。LIME転送するからちょっと待ってろ」
◇
あんり♡ : ハルくんおはよー♪ あのね、さっき昨日の子にあったの 07:12
あんり♡ : それでー、なんかハルくんを見守るって言ってたけど、恋♡してるならつかまえなきゃっていっちゃった♪ 07:12
あんり♡ : いい子っぽいし、やっぱためしに付き合ってみたらどうかな!? 07:13
◇
なんだ……これ……。
坂崎さんは正気か? 坂崎さんは正しく花子さんの姿が見えている。本気で勧めているのか? それとも何かの嫌がらせ?
「おい東矢、聞こえてるか?」
「藤友君ちょっとまって、花子さんと話してみる」
僕は木陰の花子さんに手を伸ばし、しゅるしゅると伸びた糸をつかむ。
「昨日ぶりだね、ちょっといいかな?」
「と、や「と」い」
「藤友君、ちょっとびっくりしてるみたい。一度出してあげてもらえないかな」
「い、だ「だめ」た、て「いわれ」た、しさわ「てな」、い、ゆ」
糸からは、ふんわりと幸せそうな気持ちが伝わる。
「東矢、ちょっといいか、確認したい。お前、昨日花子さんに俺に近づかないよう言ってくれたんだな?」
「うん……一応今も触らないようにしてるみたい。苦しかったりしない?」
「苦しくは、ないな、ぬるま湯の中みたいだ。何か革袋の中に入ってるような感じがする。それより、元凶はアンリだ。昨日もそうだったが、花子さんはアンリの言うことに従っている」
どういうこと?
「昨日、アンリがつきあえって言うと花子さんはつきあうと言った。今日も捕まえろっていったから捕まえた。だからおそらくアンリが花子さんに俺を出せと言えば出れると思う」
花子さんが坂崎さんに? そんなことがありうるのか? それに、なんでそんなことを。
「アンリはこの方が面白いと思っているだけで、悪気はない。アンリに『俺を外に出した方が面白い』と思わせれば出られる、多分。ただ、俺はさっきからアンリにLIMEを送ってるが、『お幸せに』しか帰ってこない。東矢、巻き込んですまないが、アンリを説得するのを手伝ってほしい」
「それはもちろん……。でもなんで坂崎さんは花子さんと藤友君をくっつけようとしてるの? 花子さんに恩か何かあるの?」
「花子さんは多分関係ない。……相手が人間だろうと妖怪だろうと、アンリは俺がコクられたのを面白がってるだけだ。アンリは一見普通にみえるが狂っている。人と同じ思考はしない。どう話すのがいいのか、俺も考えて後で連絡がする」
◇
正直言って、ぬるめの温泉に浸かっているようで快適だった。携帯の時刻は昼を過ぎているのに腹が減る様子もない。生理現象が作用しない空間なのか? 刺激も何もない。このままここにいると人としてだめになりそうな気がする。
たまご色のぽよぽよした壁のようなものにすっぽり包まれているが、手を伸ばせばその分壁がそろそろとよけていくので、視覚以外に窮屈さはない。なんとなく、丁寧に扱われている気はする。
外のことはさっぱりわからないが、GPS上、さきほど東矢は俺のすぐ隣にいて、花子さんに聞いてみると言っていた。
そうならここは花子さんの腹の中か。動きようがないな。最初の予定通り情報収集が得策か。試しに声をかける。
「君は昨日俺を呼び出した人?」
『そうです』
たまご色の壁がふよふよ動いて壁に文字が表示される。几帳面そうなゴシック体。返答があるのは幸先がいい。
「俺はこれからどうなるのかな?」
『ここにいます』
「外に出してもらいたいんだけど」
『つかまえるのがいいと、ききました』
花子さん、アンリより断然話が通じるな。すこし不毛な気分になる。
「さっき君と話してたやつ、東矢って言うんだけど、東矢は近づかないようにいってなかった?」
『とうや、は3メートルくらい、はなれるのがいいといいました。あと、はるくんは、すぐこわれるから、さわらない。あさのひとにそういいましたが、はるくんは、すぐけがするから、つかまえておくほうがいいといいました』
アンリ……。ろくなことしないな。東矢、ありがとう、想像以上に働きかけてくれたんだな、なんかすまない。
「君はどうして俺とつきあいたいの?」
『はるくんは、たすけてくれた』
「助ける? 呼び出したとかじゃなくて?」
『よるに、あさのひとにとじこめられた。はるくん、だしてくれた』
いろいろ聞き出した結果、アンリが元凶だった。ことの始まりから。俺も失敗していた。
アンリが願えば、その幸運でだいたいのことはかなう。人も怪異の類でもアンリに従う。多少の運命は押し通す。
アンリは自分の持ってきた怪談を見たいと願って、『トイレの花子さん』を探した。むしろ花子さんは巻き込まれた犠牲者だった。
今の花子さんは4体の霊、というか4体の『学校の怪談』の集合体だ。桜の下で首を吊った女子、体育倉庫で惨殺された女子、屋上から飛び降りて死んだ男子、プールで溺れて死んだ男子。
並べると、どれも昨日の夕方アンリが持ってきた怪談だった。ところが俺は全部を却下して、トイレの花子さんで押し切った。アンリは4体に会いに、『トイレの花子さん』を探すというねじれが生じた。普通、そこを混同したりしないだろ。
東矢の説明に則ると、この4体の『学校の怪談』はこの学校にポップ(出現)した。ところがアンリは4体を『トイレの花子さん』と定義し、どういう法則が発動したのか4体を3階の奥から3番目のトイレという『トイレの花子さん』の領域に押し込んだ。4体は『トイレの花子さん』ではないから、トイレのフィールドを活用できない。出ることもできずに困っていたところを、俺が『トイレの花子さん』の法則に則り扉を開けて解放したから感謝された。今4体はもうくっついてしまって元の姿に戻れず、よくわからない『学校の怪談』として校内をうろうろしているらしい。
とはいえ、俺もこのままなのは困る。俺が話した感触では花子さんは外に出してくれそうにない。この4体は初めからアンリに呪われている。アンリの言うことに背けなさそうだ。
アンリを説得する方向性を検討する。
誘導じゃなく説得。少し気が遠くなる。
1つ目の方法。アンリの希望を実現する、つまり花子さんと付き合う。今はお試しで捕まっているわけだから、まじめにお付き合いしたいからとか適当に返事をすれば、すぐに出られるかもしれない。ただし、花子さん自体に悪い感じはしないが、常識が合致するとは思えない。
それぞれの『学校の怪談』の着地点を検討する。
『桜の下で首を吊った女子』。これは通るたびに恨みがましく見つめられる奴。多分、昨日の放課後に俺が見たのはこの子の姿な気がする。特に困らなさそうだ。
次、『体育倉庫で惨殺された女子』。これはダメだ、追いかけてきて殺しに来る奴だ。
それから、『屋上から飛び降りて死んだ男子』。仲間を求めて足を引くと言っていた。
最後に、『プールで溺れて死んだ男子』。藻に絡みつかれて溺れる。一番苦しそうだな。
総合的に『つきあう』は悪手に思える。
2つ目の方法。アンリにとって俺が外に出たほうがより面白い展開を用意する。
3つ目の方法。アンリに全く別のものに目を向けさせる……はよくないな。このまま完全に放置されて忘れ去られそうだ。
アンリにとって面白い展開、か。胃が痛む。
他には何かないだろうか。
◇
授業中、藤友君とこっそりメールでやりとりする。僕は存在感が薄いから、先生を含めて誰にも気が付かれない。封印の影響が初めて役に立っている気がする。
先生がカリカリとチョークで板書する中、僕はペチペチと携帯を叩く。
「俺も花子さんと話したが、捕まえろっていうアンリの命令を何とかしないと外に出れそうにない。アンリに、俺が外にいたほうが面白いと思わせれば、外に出られると思う。残念ながら、今のところいい案が浮かばない」
「ええと、自信ないけど、どうしたらいいかな、藤友君に他に好きな人がいるとか言ってみるとか?」
「今アンリは花子さんの味方をしている。よけい出られなくなる気がする。俺がこのままでは危険だというのも駄目だ。何故かはわからんが、無理心中は盛り上がるらしい。花子さんが喜びそうなことの方が通りやすい気がする。」
うう、難しい。そもそも僕はコイバナに縁がない。
「外でお試しデート、とかどう?」
「花子さんは学校からでれないんだよな。花子さん自身には特に今したいことはないらしいから、直接アンリに確認されたらバレる。というか花子さんはこの状態に気に入っているみたいでお手上げだ」
なんだか楽しそうだったもんな。
「そういえば。花子さんが喜びそうなことって他に何かないのかな。昨日は無理やりくっつけられて嫌みたいだったけど、ばらばらになりたいとか」
「バラバラか……少し聞いてみる」
言ってみて気がついたけど、花子さんは4人分ぐらいの何かが組み合わさったものだ。ほどいていけば藤友君はでられないかな。
「放課後、バラバラにするのをちょっと試してみたい。内側ってどんなかんじ?」
「内側は触ろうと思っても触れない。中にからのリアクションは難しいと思う。今聞いてみたらバラバラにはなりたいようだ」
「わかった。とりあえずまたあとで」
午後の授業は折り返し地点。
次話【残された時間】
昼休みに入ってすぐ、藤友君から着信があった。
「東矢か? よかった、繋がった。俺は今どこかに捕まってる」
「藤友君!? 大丈夫!?」
「今のところ大丈夫だ。GPSで場所わかるか?」
僕は急いで藤友君の場所を調べる。寮と学校の間あたり。僕は急いで向かう。
昨日僕が花子さんと会って指差した、歩道から少し離れた木の背後の茂みの陰に、昨日と同じように花子さんが小さく蠢いていた。
GPSは花子さんと同じ場所を差している。
「ごめんっ藤友君。花子さんには昨日藤友君に近づかないようにお願いしたんだけど」
「いや、お前のせいじゃない。LIME転送するからちょっと待ってろ」
◇
あんり♡ : ハルくんおはよー♪ あのね、さっき昨日の子にあったの 07:12
あんり♡ : それでー、なんかハルくんを見守るって言ってたけど、恋♡してるならつかまえなきゃっていっちゃった♪ 07:12
あんり♡ : いい子っぽいし、やっぱためしに付き合ってみたらどうかな!? 07:13
◇
なんだ……これ……。
坂崎さんは正気か? 坂崎さんは正しく花子さんの姿が見えている。本気で勧めているのか? それとも何かの嫌がらせ?
「おい東矢、聞こえてるか?」
「藤友君ちょっとまって、花子さんと話してみる」
僕は木陰の花子さんに手を伸ばし、しゅるしゅると伸びた糸をつかむ。
「昨日ぶりだね、ちょっといいかな?」
「と、や「と」い」
「藤友君、ちょっとびっくりしてるみたい。一度出してあげてもらえないかな」
「い、だ「だめ」た、て「いわれ」た、しさわ「てな」、い、ゆ」
糸からは、ふんわりと幸せそうな気持ちが伝わる。
「東矢、ちょっといいか、確認したい。お前、昨日花子さんに俺に近づかないよう言ってくれたんだな?」
「うん……一応今も触らないようにしてるみたい。苦しかったりしない?」
「苦しくは、ないな、ぬるま湯の中みたいだ。何か革袋の中に入ってるような感じがする。それより、元凶はアンリだ。昨日もそうだったが、花子さんはアンリの言うことに従っている」
どういうこと?
「昨日、アンリがつきあえって言うと花子さんはつきあうと言った。今日も捕まえろっていったから捕まえた。だからおそらくアンリが花子さんに俺を出せと言えば出れると思う」
花子さんが坂崎さんに? そんなことがありうるのか? それに、なんでそんなことを。
「アンリはこの方が面白いと思っているだけで、悪気はない。アンリに『俺を外に出した方が面白い』と思わせれば出られる、多分。ただ、俺はさっきからアンリにLIMEを送ってるが、『お幸せに』しか帰ってこない。東矢、巻き込んですまないが、アンリを説得するのを手伝ってほしい」
「それはもちろん……。でもなんで坂崎さんは花子さんと藤友君をくっつけようとしてるの? 花子さんに恩か何かあるの?」
「花子さんは多分関係ない。……相手が人間だろうと妖怪だろうと、アンリは俺がコクられたのを面白がってるだけだ。アンリは一見普通にみえるが狂っている。人と同じ思考はしない。どう話すのがいいのか、俺も考えて後で連絡がする」
◇
正直言って、ぬるめの温泉に浸かっているようで快適だった。携帯の時刻は昼を過ぎているのに腹が減る様子もない。生理現象が作用しない空間なのか? 刺激も何もない。このままここにいると人としてだめになりそうな気がする。
たまご色のぽよぽよした壁のようなものにすっぽり包まれているが、手を伸ばせばその分壁がそろそろとよけていくので、視覚以外に窮屈さはない。なんとなく、丁寧に扱われている気はする。
外のことはさっぱりわからないが、GPS上、さきほど東矢は俺のすぐ隣にいて、花子さんに聞いてみると言っていた。
そうならここは花子さんの腹の中か。動きようがないな。最初の予定通り情報収集が得策か。試しに声をかける。
「君は昨日俺を呼び出した人?」
『そうです』
たまご色の壁がふよふよ動いて壁に文字が表示される。几帳面そうなゴシック体。返答があるのは幸先がいい。
「俺はこれからどうなるのかな?」
『ここにいます』
「外に出してもらいたいんだけど」
『つかまえるのがいいと、ききました』
花子さん、アンリより断然話が通じるな。すこし不毛な気分になる。
「さっき君と話してたやつ、東矢って言うんだけど、東矢は近づかないようにいってなかった?」
『とうや、は3メートルくらい、はなれるのがいいといいました。あと、はるくんは、すぐこわれるから、さわらない。あさのひとにそういいましたが、はるくんは、すぐけがするから、つかまえておくほうがいいといいました』
アンリ……。ろくなことしないな。東矢、ありがとう、想像以上に働きかけてくれたんだな、なんかすまない。
「君はどうして俺とつきあいたいの?」
『はるくんは、たすけてくれた』
「助ける? 呼び出したとかじゃなくて?」
『よるに、あさのひとにとじこめられた。はるくん、だしてくれた』
いろいろ聞き出した結果、アンリが元凶だった。ことの始まりから。俺も失敗していた。
アンリが願えば、その幸運でだいたいのことはかなう。人も怪異の類でもアンリに従う。多少の運命は押し通す。
アンリは自分の持ってきた怪談を見たいと願って、『トイレの花子さん』を探した。むしろ花子さんは巻き込まれた犠牲者だった。
今の花子さんは4体の霊、というか4体の『学校の怪談』の集合体だ。桜の下で首を吊った女子、体育倉庫で惨殺された女子、屋上から飛び降りて死んだ男子、プールで溺れて死んだ男子。
並べると、どれも昨日の夕方アンリが持ってきた怪談だった。ところが俺は全部を却下して、トイレの花子さんで押し切った。アンリは4体に会いに、『トイレの花子さん』を探すというねじれが生じた。普通、そこを混同したりしないだろ。
東矢の説明に則ると、この4体の『学校の怪談』はこの学校にポップ(出現)した。ところがアンリは4体を『トイレの花子さん』と定義し、どういう法則が発動したのか4体を3階の奥から3番目のトイレという『トイレの花子さん』の領域に押し込んだ。4体は『トイレの花子さん』ではないから、トイレのフィールドを活用できない。出ることもできずに困っていたところを、俺が『トイレの花子さん』の法則に則り扉を開けて解放したから感謝された。今4体はもうくっついてしまって元の姿に戻れず、よくわからない『学校の怪談』として校内をうろうろしているらしい。
とはいえ、俺もこのままなのは困る。俺が話した感触では花子さんは外に出してくれそうにない。この4体は初めからアンリに呪われている。アンリの言うことに背けなさそうだ。
アンリを説得する方向性を検討する。
誘導じゃなく説得。少し気が遠くなる。
1つ目の方法。アンリの希望を実現する、つまり花子さんと付き合う。今はお試しで捕まっているわけだから、まじめにお付き合いしたいからとか適当に返事をすれば、すぐに出られるかもしれない。ただし、花子さん自体に悪い感じはしないが、常識が合致するとは思えない。
それぞれの『学校の怪談』の着地点を検討する。
『桜の下で首を吊った女子』。これは通るたびに恨みがましく見つめられる奴。多分、昨日の放課後に俺が見たのはこの子の姿な気がする。特に困らなさそうだ。
次、『体育倉庫で惨殺された女子』。これはダメだ、追いかけてきて殺しに来る奴だ。
それから、『屋上から飛び降りて死んだ男子』。仲間を求めて足を引くと言っていた。
最後に、『プールで溺れて死んだ男子』。藻に絡みつかれて溺れる。一番苦しそうだな。
総合的に『つきあう』は悪手に思える。
2つ目の方法。アンリにとって俺が外に出たほうがより面白い展開を用意する。
3つ目の方法。アンリに全く別のものに目を向けさせる……はよくないな。このまま完全に放置されて忘れ去られそうだ。
アンリにとって面白い展開、か。胃が痛む。
他には何かないだろうか。
◇
授業中、藤友君とこっそりメールでやりとりする。僕は存在感が薄いから、先生を含めて誰にも気が付かれない。封印の影響が初めて役に立っている気がする。
先生がカリカリとチョークで板書する中、僕はペチペチと携帯を叩く。
「俺も花子さんと話したが、捕まえろっていうアンリの命令を何とかしないと外に出れそうにない。アンリに、俺が外にいたほうが面白いと思わせれば、外に出られると思う。残念ながら、今のところいい案が浮かばない」
「ええと、自信ないけど、どうしたらいいかな、藤友君に他に好きな人がいるとか言ってみるとか?」
「今アンリは花子さんの味方をしている。よけい出られなくなる気がする。俺がこのままでは危険だというのも駄目だ。何故かはわからんが、無理心中は盛り上がるらしい。花子さんが喜びそうなことの方が通りやすい気がする。」
うう、難しい。そもそも僕はコイバナに縁がない。
「外でお試しデート、とかどう?」
「花子さんは学校からでれないんだよな。花子さん自身には特に今したいことはないらしいから、直接アンリに確認されたらバレる。というか花子さんはこの状態に気に入っているみたいでお手上げだ」
なんだか楽しそうだったもんな。
「そういえば。花子さんが喜びそうなことって他に何かないのかな。昨日は無理やりくっつけられて嫌みたいだったけど、ばらばらになりたいとか」
「バラバラか……少し聞いてみる」
言ってみて気がついたけど、花子さんは4人分ぐらいの何かが組み合わさったものだ。ほどいていけば藤友君はでられないかな。
「放課後、バラバラにするのをちょっと試してみたい。内側ってどんなかんじ?」
「内側は触ろうと思っても触れない。中にからのリアクションは難しいと思う。今聞いてみたらバラバラにはなりたいようだ」
「わかった。とりあえずまたあとで」
午後の授業は折り返し地点。
次話【残された時間】