第24話 『不運』の疑問
文字数 4,157文字
僕は学校の寮で暮らしている。
どうしたらいいかと頭を捻りがら、少し騒がしい寮の食堂で晩ご飯をつまんでいると、藤友君が食堂に入ってきたから呼び止めた。
藤友君は学校では僕の隣の席。一見ちょっとワイルドで、かっこいいけど取っ付きづらい感じがする人。でも、本当はすごく優しくていい人だ、と思う。そしてすごく運が悪いらしい。
そういえば、藤友君もいろんな怪異に巻き込まれていると聞いている。だから何か一緒に考えてもらえないだろうかと思って。
「藤友君、相談したいことがあるんだ」
藤友君は少しだけ目を細めて僕に尋ねる。
「昨日のやつか」
僕はうなずく。すごく話が早い。藤友君は、少し待ってろ、といって晩ご飯をとってきて、僕の前に座る。
「何も見つけられなくて、どうしたらいいかと思って」
僕は、今日の顛末を藤友君に話す。『腕だけ連続殺人事件』の被害者5人は全員きもだめしオフに行ったメンバーで、全部で8人のうち、生き残っている3人の中の1人がナナオさんの友達。今日はオフで集まった廃墟に行ってみたけど何もなかった。他に8人に共通点がなくて、手詰まりになっている。いい知恵はないか聞きたい。
藤友君は静かにご飯を食べながら、そこまで相槌もうたずに黙って聞いていて、僕が口を閉じると同時におもむろに口を開いた。
「東矢が原因からアプローチしたのはわかった。結果からはアプローチしたか?」
「結果?」
「そう、共通しているんだろ、結果が。だからその友達ってやつも心配してるんじゃないのか? 自分が共通しないかを」
藤友君は原因から見えなくても結果から見ると共通するものが見えるかもしれない、という。僕は驚く。目からウロコ。そんなこと考えもしなかった。でも結果って?
「腕が出た場所がある程度わかるなら、共通点を調べたらどうだ? ひょっとしたら、『殺して回っているやつ』のヒントがわかるかもしれない。目的は結果を防ぐことだろう? 殺された状況に何らかの共通点があればそれを避けられるかもしれない」
「藤友君すごい……」
僕が考えもしなかった発想だ。
藤友君はちょっとあきれた顔でいう。
「お前、いろいろ考えてるくせに結構抜けてるよな」
うう、なんだか反論できない気がする。
「他に何か気がついたことがあれば教えてほしい」
僕はより詳しく、今日見て聞いたことは全部藤友君に話した。
一通り聞いたあと、開口一番、やっぱり藤友君はあきれた顔で言う。
「まずはストラップを捨てさせろ、怪異の気配がするんだろ? なんで持たせてる、少なくとも引き離せ」
あっそうか。僕は急いでナナオさんにメールを打つ。
その間、藤友君は口元に右手を当てて、しばらく静かに考え込む。
「なぜ腕を残す?」
「写真のこと?」
「写真のことは写真のことで気になるが、もっと根本的な話だ」
「いいか、腕以外は見つかっていない。ということは、腕以外は完璧に隠せてる、または何らかの方法で処分できてるってことだ。普通腕を隠すより体を隠すほうが大変だし、体をまとめて隠せるなら腕だってそのまま隠せる。腕って肘より先の部分だろ?」
藤友君は自分の右肘から右手の先までを指し示す。
確かに『腕だけ隠せない』とは思えない。僕は黙って藤友君の続きに耳を傾ける。
「犯人が腕を残しているのはわざとだ。情報が足りないから確定はできないが、『腕を残す』ことに何かの意味があると思う」
腕を残すことの意味……。
「『くまにゃん』さんのブレスレット?」
「そこはまだ情報が足りないな。その、『くまにゃん』というやつは最初の被害者というわけじゃないんだろう? それから、ブレスレット自体が特徴的で、他のメンバーは持っていないものだ。だとするとそのブレスレットが関連して被害者を選んでいるわけではないようにも思える。他の被害者も同様に何か装備していて奪われたと仮定しても、『くまにゃん』のだけ残すのはおかしい」
ただ一方、と藤友くんは視線を動かしながら続ける。
「写真をアップしたやつが犯人ならば、犯人はその時点で取得した腕4本から、最後に切断したものではなくひとつ前の、わざわざブレスレットがあるものを選んでアップした可能性があるのかな。その場合、腕自体に何らかの意味やメッセージがあるのかもしれない。まあ、この辺はまだわからないな。それから向日葵の柄の布……か」
藤友君が小さくつぶやく。
腕を布で包むことにも何か意味があるのかな。記者さんも腕は布で包まれていると言っていたみたいだけど、BBSでも『くまにゃん』さんの腕の写真は布で包まれていて、4本目も布で巻かれてるって書かれてたんだよね。他の3本も布で巻かれている、とうわさされていたようだけど。
「それから……もし入手できるなら、グループLIMEの履歴を見せてほしい」
「何か気になるところがあるの?」
僕は勢い込んで腰を上げ、藤友君に問いかける。藤友君は口元に手を当てたまま、視線を落としてさまよわせる。しばらくしてまた顔を上げて僕を見つめる。
「東矢、お前、結構思い込み強いほうだろ」
えぇ? どうかな。あんまり考えたことないけど。藤友君は困惑した僕に構わず続ける。
「ある程度、思うところはある。だが人に話すほど確証は持てない。お前が変に思い込んで間違ってても困るしな。思い込みに足を救われると面倒だ。あと、キーロを含めた全員の体格の情報があると対策の参考になるかな。性格の情報はいらない」
「わかった、聞いてみる。キーロさんは165くらいで、ほっそりした人だった」
それから、と藤友君は言いにくそうに視線を外す。
「この前のことには感謝してる。だからなるべく力になりたいとは思ってる。ただ、今回は俺はアドバイス以上のことはできない。俺はひたすら運が悪い……。俺がでしゃばると、かえってその友達っていうやつが俺の不運に巻き込まれて危険になる気がして仕方がない」
この前のって、花子さんたちの時のことかな。あの時は藤友君がほとんど全部自分で解決したんだと思うけど。
運が悪いって聞いてるけどそんなになの? いや、いろいろうわさは聞いてるけどさ。
「あの、アドバイスくれるだけで本当にありがたいんだ、この間も僕は大したことできなかったし、気にしないで。それより藤友君すごいね。僕はそんなこと全然考えてなかったよ」
藤友君はちょっと嫌そうに頬づえをついて遠い目をする。
「……いろいろ考えておかないと、死ぬからな」
えっ重い。藤友君は顔を上げて隣を向き、ふぅ、と長い息を吐く。
「2人ともなにしてるのー?」
話に夢中になってて気が付かなかったけど、僕らの隣に坂崎さんが立っていた。
「アンリはこれから飯か?」
「そうだよっ」
「じゃあ向こうで食おう。プリンやるから」
「えっほんとっ? いくいく」
藤友君はデザートだけ残ったお盆を手にとる。魚の骨だけが皿の端によせられている。藤友君は食べ方が奇麗だ。
「東矢、行き詰まったら、前提をひっくり返せ。思い込みで間違うことはままある。それから、何故こんなことになっているのか、理由を考えるといい」
理由は廃墟探索じゃないのかな。
「あとはそうだな……リスクを取るときはそれが本当に見合うリスクか考えたほうがいい」
「はーやーくぅ」
「ハイハイ」
そう言って、藤友君は坂崎さんをつれて別の席に向かった。
坂崎さんに僕が事件を調べてることをバレないように配慮してくれたんだろう。
◇
僕は部屋に戻ってすぐにナナオさんに電話をかけて、藤友君の考えを話した。
藤友君がすごいっていう話になって、明日は腕があったと思われる場所を探すことになった。
今のところ、手がかりがあるのは、3本目の『くまにゃん』さん、4本目の『でりあさんの彼氏』さん、5本目の『神津ペッカー』さん。
3本目の『くまにゃん』さんは、テレビで報道された映像と、掲示板の写真を見た人の断片的な情報が検証されて、神津の雑居ビルの路地と特定されていた。
4番目の『でりあさんの彼氏』さんは掲示板の書き込みから、おそらく『でりあ』さんがキーロさんを拾ったニ東山のふもとのコンビニの駐車場。
5番目の『神津ペッカー』さんは、LIMEに助けを求めたとき位置情報を残していたし、テレビで路地も映ってた。
そういえば、と藤友君からLIMEを見せてほしいと言われていたことを伝える。ナナオさんたちは送信しようと奮闘していたけど、やり方がわからないという話になって、明日見せてもらうことにした。
それから、キーロさん以外の人の体格を聞いた。
今も生きている2人、『サニー』さんは155くらいの小柄な人。『よっち』さんは170くらいでとくに痩せても太ってもいなかった普通っぽい人。
亡くなった人は、順番で。
最初の『みちとし』さんは170くらいの少し太った人。次の『でりあ』さんは160くらいに見えたけど、ヒールというか、底が厚めのスニーカーをはいてたからはっきりとはわからない。1番やせてた。
3番目の『くまにゃん』さんは165くらいのやや細めの人、その次の『でりあさんの彼氏』さんは175くらい、大柄で結構ガタイがよかった。最後の『神津ペッカー』さんは180くらいあったけど、男にしては線が細くてなんか性格も軽そうな人だった、とのこと。
早速この情報を藤友君にメールで飛ばす。
明日は10時半に神津駅で待ち合わせて、『くまにゃん』さんの腕があったところを探すところから始めることになった。
◇
その日、妹は自分の代わりにキモオフにでかけた。
たまたま立ったキモオフの掲示板に初めて参加表明したが、その後に、抜けられない予定ができた。
どうしたものか考えていると、妹が興味深げに話しかけてきた。
自分も妹も怖いものが好きで、たまに深夜に車できもだめしスポット巡りをしている。
まあ、公開募集のキモオフだ。妹が行きたいというなら勝手に行くだろうしと思ってスレを見せた。
それが生きてる妹を見た最後だった。
どうしたらいいかと頭を捻りがら、少し騒がしい寮の食堂で晩ご飯をつまんでいると、藤友君が食堂に入ってきたから呼び止めた。
藤友君は学校では僕の隣の席。一見ちょっとワイルドで、かっこいいけど取っ付きづらい感じがする人。でも、本当はすごく優しくていい人だ、と思う。そしてすごく運が悪いらしい。
そういえば、藤友君もいろんな怪異に巻き込まれていると聞いている。だから何か一緒に考えてもらえないだろうかと思って。
「藤友君、相談したいことがあるんだ」
藤友君は少しだけ目を細めて僕に尋ねる。
「昨日のやつか」
僕はうなずく。すごく話が早い。藤友君は、少し待ってろ、といって晩ご飯をとってきて、僕の前に座る。
「何も見つけられなくて、どうしたらいいかと思って」
僕は、今日の顛末を藤友君に話す。『腕だけ連続殺人事件』の被害者5人は全員きもだめしオフに行ったメンバーで、全部で8人のうち、生き残っている3人の中の1人がナナオさんの友達。今日はオフで集まった廃墟に行ってみたけど何もなかった。他に8人に共通点がなくて、手詰まりになっている。いい知恵はないか聞きたい。
藤友君は静かにご飯を食べながら、そこまで相槌もうたずに黙って聞いていて、僕が口を閉じると同時におもむろに口を開いた。
「東矢が原因からアプローチしたのはわかった。結果からはアプローチしたか?」
「結果?」
「そう、共通しているんだろ、結果が。だからその友達ってやつも心配してるんじゃないのか? 自分が共通しないかを」
藤友君は原因から見えなくても結果から見ると共通するものが見えるかもしれない、という。僕は驚く。目からウロコ。そんなこと考えもしなかった。でも結果って?
「腕が出た場所がある程度わかるなら、共通点を調べたらどうだ? ひょっとしたら、『殺して回っているやつ』のヒントがわかるかもしれない。目的は結果を防ぐことだろう? 殺された状況に何らかの共通点があればそれを避けられるかもしれない」
「藤友君すごい……」
僕が考えもしなかった発想だ。
藤友君はちょっとあきれた顔でいう。
「お前、いろいろ考えてるくせに結構抜けてるよな」
うう、なんだか反論できない気がする。
「他に何か気がついたことがあれば教えてほしい」
僕はより詳しく、今日見て聞いたことは全部藤友君に話した。
一通り聞いたあと、開口一番、やっぱり藤友君はあきれた顔で言う。
「まずはストラップを捨てさせろ、怪異の気配がするんだろ? なんで持たせてる、少なくとも引き離せ」
あっそうか。僕は急いでナナオさんにメールを打つ。
その間、藤友君は口元に右手を当てて、しばらく静かに考え込む。
「なぜ腕を残す?」
「写真のこと?」
「写真のことは写真のことで気になるが、もっと根本的な話だ」
「いいか、腕以外は見つかっていない。ということは、腕以外は完璧に隠せてる、または何らかの方法で処分できてるってことだ。普通腕を隠すより体を隠すほうが大変だし、体をまとめて隠せるなら腕だってそのまま隠せる。腕って肘より先の部分だろ?」
藤友君は自分の右肘から右手の先までを指し示す。
確かに『腕だけ隠せない』とは思えない。僕は黙って藤友君の続きに耳を傾ける。
「犯人が腕を残しているのはわざとだ。情報が足りないから確定はできないが、『腕を残す』ことに何かの意味があると思う」
腕を残すことの意味……。
「『くまにゃん』さんのブレスレット?」
「そこはまだ情報が足りないな。その、『くまにゃん』というやつは最初の被害者というわけじゃないんだろう? それから、ブレスレット自体が特徴的で、他のメンバーは持っていないものだ。だとするとそのブレスレットが関連して被害者を選んでいるわけではないようにも思える。他の被害者も同様に何か装備していて奪われたと仮定しても、『くまにゃん』のだけ残すのはおかしい」
ただ一方、と藤友くんは視線を動かしながら続ける。
「写真をアップしたやつが犯人ならば、犯人はその時点で取得した腕4本から、最後に切断したものではなくひとつ前の、わざわざブレスレットがあるものを選んでアップした可能性があるのかな。その場合、腕自体に何らかの意味やメッセージがあるのかもしれない。まあ、この辺はまだわからないな。それから向日葵の柄の布……か」
藤友君が小さくつぶやく。
腕を布で包むことにも何か意味があるのかな。記者さんも腕は布で包まれていると言っていたみたいだけど、BBSでも『くまにゃん』さんの腕の写真は布で包まれていて、4本目も布で巻かれてるって書かれてたんだよね。他の3本も布で巻かれている、とうわさされていたようだけど。
「それから……もし入手できるなら、グループLIMEの履歴を見せてほしい」
「何か気になるところがあるの?」
僕は勢い込んで腰を上げ、藤友君に問いかける。藤友君は口元に手を当てたまま、視線を落としてさまよわせる。しばらくしてまた顔を上げて僕を見つめる。
「東矢、お前、結構思い込み強いほうだろ」
えぇ? どうかな。あんまり考えたことないけど。藤友君は困惑した僕に構わず続ける。
「ある程度、思うところはある。だが人に話すほど確証は持てない。お前が変に思い込んで間違ってても困るしな。思い込みに足を救われると面倒だ。あと、キーロを含めた全員の体格の情報があると対策の参考になるかな。性格の情報はいらない」
「わかった、聞いてみる。キーロさんは165くらいで、ほっそりした人だった」
それから、と藤友君は言いにくそうに視線を外す。
「この前のことには感謝してる。だからなるべく力になりたいとは思ってる。ただ、今回は俺はアドバイス以上のことはできない。俺はひたすら運が悪い……。俺がでしゃばると、かえってその友達っていうやつが俺の不運に巻き込まれて危険になる気がして仕方がない」
この前のって、花子さんたちの時のことかな。あの時は藤友君がほとんど全部自分で解決したんだと思うけど。
運が悪いって聞いてるけどそんなになの? いや、いろいろうわさは聞いてるけどさ。
「あの、アドバイスくれるだけで本当にありがたいんだ、この間も僕は大したことできなかったし、気にしないで。それより藤友君すごいね。僕はそんなこと全然考えてなかったよ」
藤友君はちょっと嫌そうに頬づえをついて遠い目をする。
「……いろいろ考えておかないと、死ぬからな」
えっ重い。藤友君は顔を上げて隣を向き、ふぅ、と長い息を吐く。
「2人ともなにしてるのー?」
話に夢中になってて気が付かなかったけど、僕らの隣に坂崎さんが立っていた。
「アンリはこれから飯か?」
「そうだよっ」
「じゃあ向こうで食おう。プリンやるから」
「えっほんとっ? いくいく」
藤友君はデザートだけ残ったお盆を手にとる。魚の骨だけが皿の端によせられている。藤友君は食べ方が奇麗だ。
「東矢、行き詰まったら、前提をひっくり返せ。思い込みで間違うことはままある。それから、何故こんなことになっているのか、理由を考えるといい」
理由は廃墟探索じゃないのかな。
「あとはそうだな……リスクを取るときはそれが本当に見合うリスクか考えたほうがいい」
「はーやーくぅ」
「ハイハイ」
そう言って、藤友君は坂崎さんをつれて別の席に向かった。
坂崎さんに僕が事件を調べてることをバレないように配慮してくれたんだろう。
◇
僕は部屋に戻ってすぐにナナオさんに電話をかけて、藤友君の考えを話した。
藤友君がすごいっていう話になって、明日は腕があったと思われる場所を探すことになった。
今のところ、手がかりがあるのは、3本目の『くまにゃん』さん、4本目の『でりあさんの彼氏』さん、5本目の『神津ペッカー』さん。
3本目の『くまにゃん』さんは、テレビで報道された映像と、掲示板の写真を見た人の断片的な情報が検証されて、神津の雑居ビルの路地と特定されていた。
4番目の『でりあさんの彼氏』さんは掲示板の書き込みから、おそらく『でりあ』さんがキーロさんを拾ったニ東山のふもとのコンビニの駐車場。
5番目の『神津ペッカー』さんは、LIMEに助けを求めたとき位置情報を残していたし、テレビで路地も映ってた。
そういえば、と藤友君からLIMEを見せてほしいと言われていたことを伝える。ナナオさんたちは送信しようと奮闘していたけど、やり方がわからないという話になって、明日見せてもらうことにした。
それから、キーロさん以外の人の体格を聞いた。
今も生きている2人、『サニー』さんは155くらいの小柄な人。『よっち』さんは170くらいでとくに痩せても太ってもいなかった普通っぽい人。
亡くなった人は、順番で。
最初の『みちとし』さんは170くらいの少し太った人。次の『でりあ』さんは160くらいに見えたけど、ヒールというか、底が厚めのスニーカーをはいてたからはっきりとはわからない。1番やせてた。
3番目の『くまにゃん』さんは165くらいのやや細めの人、その次の『でりあさんの彼氏』さんは175くらい、大柄で結構ガタイがよかった。最後の『神津ペッカー』さんは180くらいあったけど、男にしては線が細くてなんか性格も軽そうな人だった、とのこと。
早速この情報を藤友君にメールで飛ばす。
明日は10時半に神津駅で待ち合わせて、『くまにゃん』さんの腕があったところを探すところから始めることになった。
◇
その日、妹は自分の代わりにキモオフにでかけた。
たまたま立ったキモオフの掲示板に初めて参加表明したが、その後に、抜けられない予定ができた。
どうしたものか考えていると、妹が興味深げに話しかけてきた。
自分も妹も怖いものが好きで、たまに深夜に車できもだめしスポット巡りをしている。
まあ、公開募集のキモオフだ。妹が行きたいというなら勝手に行くだろうしと思ってスレを見せた。
それが生きてる妹を見た最後だった。