夜の息づかい(19)

文字数 520文字

「はは」

篠生は、何かに取り憑かれたかのように、むくっと立ち上がる。

「はは」

薄笑いしながら、ただ、立っている。

「はは、そうだよなー、死ぬよなー」

篠生の性格がまるで異なり、野蛮な言動が含まれる。

「シナモンだって、肝疾患のある奴が多量に飲んだら、どうなるかなんて簡単にわかる。だろ? なあ、婆さん」

篠生は、高圧的に、老婦へ言い詰め寄る。

老婦は、視線を左下にそらす。

「しらばっくれんなよ!」

篠生は怒鳴りながら老婦へ近づいた。

老婦は、身をのけぞって体を固くする。

篠生は老婦の胸ぐらを掴む。

「急性肝不全だよな、悪魔じゃねえよ」

篠生は今にも老婦を殴る勢い。

私は止めに入る。

「篠生! 落ち着け」

私は篠生に言う。

「黙っててください! こいつが、殺したんだ」

篠生は言う。

「何なの、急に、頭がおかしくなったんじゃない?」

老婦は高飛車に答える。

その声は、恐怖に震えている。

「正直に言えー!」

篠生は老婦の顔を殴った。

妻も止めに入る。

篠生は、妻を突き飛ばす。

老婆と娘は、目の当たりにしている。

私は再び止めに入る。

「邪魔だ!」

篠生は、私の頬を殴る。

それでも、私は止めに入る。

老婦は立ち上がり、両手でがむしゃらに抵抗する。

しかし、篠生の手加減の無い暴力には到底かなわない。
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