人とは。悪魔とは。(4)

文字数 504文字

もしかしたら、シャッターの外には大勢の悪魔が居るかもしれない。

開ける音で悪魔が集まるかもしれない。

しかし、私の心の中に現れた卑怯な思考が、肯定化する。

郷珠が生贄になっているうちに、妻とレストランから出れば助かるのではないかと。

気が付けば、私は、シャッターに両手をかけていた。

シャッターの取っ手は、じとっと濡れている。

よく見ると、シャッターは、おびただしい水滴が広がり、結露していた。

ぐっと、力を入れて、シャッターを上へ持ち上げる。

結露で、ぎゅっと手を滑らせる。

ゆっくりと開けていく。

がらがらがらと小さな音が鳴る。

すうっと、涼しい風がシャッターの向こう側から入り込む。

半分くらいまで開けたところで、私は、シャッターをくぐった。

一つの部屋があった。

レストランと同様に木を基調とした部屋だ。

窓が一つ有る。

窓の外は、朝まだき、真っ白な世界が広がっている。

窓の下に灯油タンクが二つ並んであった。

私は、灯油タンクを見て、小さく頷いた。

部屋の中央には、食卓机がある。

その机の上には、何本も注射器が無造作に置かれている。

椅子は二つあり、どちらも倒れている。

部屋にあるクローゼットは、開きっぱなしで、床まで衣類が散乱している。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み