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文字数 3,440文字
引くよりむしろ興奮するサクト。
傍らに落ちてるエロ本が余計想像を加速させた。
ばちこーん。
グーパンがサクトの顔面を襲った。
全身鎧の武骨な騎士に変身するイズミ。
それに触れていたココナは……。
NPC扱いの人間は何が起きようと、クエスト終了後には元通りになっている。
わざわざ助けに行くのは特に意味のない無駄な行為だ。
不意打ちだった。
自分が指名されるとは思わなかったし、名前で呼ばれた事も。
サクトがココナをフった。
どう考えてもココナがフラれる理由が分からない。
もしかして、すでに好きな人が居たとか?
そこまで考えてから今はそんな時じゃないと、頭を切り替える。
まるで導かれた推測から逃げるように。
盾で炎を防御しながら二人でリビングに向かう。
心なしか火の勢いが強くなった気がする。
ハルを背負うサクト。
二人を庇うように盾を構え、ゆっくり進むイズミ。
四つん這いになって盾を背負う形になっているイズミ。
相当の重力がかかっているはずで、それはその下で一緒に圧し潰されてるサクトにも伝わっていた。
ただその圧の中心は、イズミのバストを通してサクトの顔面に伝わっている。
幸か不幸か、ビキニアーマーがズレて密着部分は柔らかい。
イズミの汗がサクトにも伝わる。
サクトとイズミは瞬間移動を受け、バランスを崩して倒れ込んだ。
パーティーメンバーを強制的に勇者の元へ召喚したのだ。
幸い、偶然二人の間に挟まれていたハルも一緒に飛んで来た。
ゴォッ!!
突如、炎が勢いを増し、避難部屋を取り囲むように燃え広がった。
火の手が迫ってくる。
全員で抱き合うように、中央でハルを踏み台にしたカナセが銃を出来るだけ高く掲げて、回復の雨を降らせる。
ほぼ裸同然のイズミはみんなに肌を密着させているような状態だ。
真っ赤になりながら必死で羞恥とも戦う。
ほんとだ。
スキルリストにはこの技一つしかなかった。
乙森だけどあんた達が知ってる乙森じゃないしぃ。
二重人格って言うの?
あたしは彼の意識がない時しか現れない女の人格。
そうねぇ、カナコって呼んだら?
念願叶ってやっと女の身体手に入れたわぁ。
よく分かんないけどぉ、あたしずっとこの世界に居たいかも。
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新たなクエスト動画が配信されました。
女神の声が男のスマホより発信される。
動画を視聴した後、男は低評価をタップした。
そしてすぐにアプリを閉じようとしたが、気になる発見をしてその手を止めた。
クエストレベルも低く、レベルアップ出来るほどの票数を集めた者はいない。
しかし……
初めて投票したか、勇者殺害ランキング1位の憤怒の魔王。
奴がこのクエストを作ったのか?
投票した相手は……影浦サクト?
確か怠惰が推していたパーティーだったな。
私だ。
ふっ、どうせ泊まり込みだっただろう?
わざわざこんな時間にかけてくるという事は、それだけの情報を手に入れたからだ。
憤怒の手がかりを掴んだ。
何と言ったか……そう、ココナと言う子供勇者の中に関係者が居る可能性が高い。
怠惰の正体も検討がついているのだろう?
あの探偵を使って探らせろ。
くれぐれも嫉妬に見つからんようにな。
始末はこちらでやる。
なぁに、証拠を残さずに消す方法などいくらでもある。
ただ素性を調べるだけでいい。
お前は今どこに居る?
罠だろうが構わん、餌に喰い付けばいい。
必ず尻尾を掴んでやるぞ。