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文字数 2,567文字
ココナに両手で視界を塞がれているサクトの心が躍る。
好みのタイプでなくとも委員長は美人の類に入る。
やはり変身シーンも見てみたいという衝動は少なからずあった。
肌の露出はまるでなく、表情すら見えない。
女であることさえ分からない全身フルプレートの武骨な騎士がそこに佇んでいた。
鎧の中からくぐもった委員長の声が響く。
サクトの場合は杖だ。
しかし騎士の手には何も握られておらず、どこかに盾や剣がマウントされているわけでもないようだ。
マンドレイクが2年1組の教室に侵入していた。
いち早く気付いたサクトがコマンドを詠唱したが、彼の魔法は発動までにタイムラグがある。
ロケット花火が発射され、迫り来るマンドレイクに命中する。
――チュドォォォン!
2年1組の教室が大爆発した。
教室の窓際に居たため、壁ごと校庭まで吹っ飛ばされたようだ。
ダメージを受けたがまだ戦える。
散り散りになった仲間を探すため周囲を見渡すサクト。
しかし凄惨な光景に思わず目を背けた。
動けない委員長の脇から抜け出し、ココナがステッキを構える。
ココナと委員長に群がるマンドレイク。
さらにドライアードも標的をロックし、そのアフロの葉が光り出していた。
ステッキから竜巻が発生しマンドレイクを包み込む。
そのまま風を鞭のようにしならせて、ドライアードの頭上目掛けて吹っ飛ばす!
ドライアードのアフロが爆発し、光が弱まった。
指示を出しながらダッシュするサクト。
二人が引き付けている間に懐に飛び込むつもりだ。
アフロが爆発するたびに光が弱くなる。
ココナは四つん這いの騎士の前で仁王立ちになった。
シュールな光景だった。
直立不動の鎧がペットボトルロケットのように飛んでいき、頭からドライアードの口に突っ込んで蓋をした。
直後、ドライアードの幹から光が漏れ出し、膨れ上がって燃え始める。
悶え苦しむように胴体を大きくくねらせるドライアード。
迫り来る巨大な上半身にサクトは反射的に飛び乗った。
それは偶然だったがその隙を見逃すサクトではなかった。
へそに当たる窪みに杖を突っ込み、ありったけの魔法を点火させる。
大爆発と共に内部から燃え広がり、あっという間にドライアードは火だるまになった。
炎上によるスリップダメージがドライアードの体力を削っていく。
そして巨木は動かなくなった。
クエストクリア
奇跡を現実に実装します
気が付くと、委員長はサクトに抱き着いていた。
慌てて飛びのく。
さっきまでのコスプレ姿ではない。
二人共普段の学生服姿だった。
ちょっと影浦くん、委員長びしょ濡れになってるじゃない!
さっさと窓閉めなさい!
晴れ間が見え始め、運動部が整地を始めている。
グラウンドの傍らでは園芸部員が作物の状態を確かめていた。
やれやれ、一時はどうなることかと。
まさか彼なしでレベル3を乗り切るなんて。
せっかく手塩にかけて育ててるのに、人の島を荒らすのはやめてよね。
焦る気持ちは分かるけど、次ちょっかい出して来たら……
潰すよ?
Quest4:鉄の女 ――END
Next Quest:勇者の集い