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文字数 3,328文字
クエスト:トイレの神様
タイムリミット:01:55:02
参加プレイヤー:3/3
ココナ LV1 HP100%
サクト LV2 HP87%
どう考えてもテスト中にウンコ行きたくなった奴の神頼みだろ。
尻を狙って来たのも関係ありそうだ。
確かに緊急かもしれんが、こんなことに神頼みするとか……どんだけ切羽詰まってるんだ。
手遅れになる前にトイレ行けよ。
見損なうなよ?
そんなチート行為で俺つええしたってつまんねぇ。
むしろ後ろめたい十字架を背負い続けるだけだ。
自分の力で屈服させることに意味があるんだろうが。
ま、チートに頼る雑魚に後ろめたい気持ちなんてないだろうがな。
カメラで調べたモンスターはシステムログに表示されるようになる。
このゲームの攻略において、欠かすことの出来ない情報源だ。
ウォシュライムの攻撃
サクトに9%のダメージ
ウォシュライムはHPを回復している
ウォシュライム LV1 HP101%
勇者ココナの攻撃
ウォシュライムに75%のダメージ
急いで濡れた天井の跡を追う。
階段を登り4階へ。
湿った跡は女子トイレへと続いていた。
女子トイレの床一面がぬめっている。
スライムはここで一度床に落ちたようだ。
恐る恐る個室へと向かうココナ。
膝の力が抜けるサクト。
廊下から天然ボケ勇者にツッコミを入れる。
ガッと個室ドアの上端に手をかけるココナ。
しかし、その体勢のまま固まってしまった。
渋々スマホ画面でスキルリストを呼び出すココナ。
どうやらコマンドを覚えてないようだ。
スマホ画面から目を離した瞬間、ココナが叫んだ。
ウォシュライムの攻撃
すぐに振り向いたが、あまりに予想外の場所から攻撃されたため反応が遅れる。
触手がサクトの後ろの窓ガラスを割り、サクトを掴んで校舎の外へと放り投げた。
ここは4階。
当然普通なら落ちればただで済まない。
ダイナミックボンバーで落下速度を相殺出来るか?
いや、出来たとして導火線(詠唱時間)が長くて間に合わない!
ダメージはどれくらいHPで肩代わり出来る?
落下が始まる。
次の瞬間には地面に叩きつけられているだろう。
魔法少女が飛び出し、翼のついたステッキを差し伸べる。
サクトは反射的に手を伸ばし、片手でステッキを鷲掴みにした。
ステッキを失い自由落下していくココナ。
しかし不幸中の幸い。
その下には中庭の噴水池が……
――いや、違う。
噴水から触手が伸びる。
まるで腕のようにココナを捉え、四肢の自由が奪われた。
スライムは10メートル四方の池の水と一体化するように膨れ上がり、ワーム状となってとぐろを巻いていた。
もはや巨大なウンコである。
滞空させていたステッキの翼が突然消失し、サクトも落下する。
だが、すでに地面とは近く大したダメージは受けなかった。
これも一定時間で消える仕様らしい。
狙うはスライムの真ん中に埋まってる目玉のような部分。
恐らくアレがコアとなっているのだろう。
大きく成長したことでよく見える。
コアを中心に神経のようなものが張り巡らされ、それで身体を動かしているのだ。
杖の先端をコアへと向け、導火線が燃え尽きる。
しかしその一瞬、膝下までズリ下ろされたココナの純白の聖三角形に気付いてしまう。
火球が着弾し、爆風がココナのスカートをめくり上げる。
スライムを狙った火球はクリーンヒットに至らなかった。
強制的に目を逸らせたことで当てられず、さらに貴重な勇者コマンドを使ってしまったことを詫びるココナ。
しかし勇者コマンドを使っていなくても、注意が逸れたことで当てられなかっただろう。
哀しいかな、男のスケベ心。
天然ボケに付き合っててもキリがないので無視、サクトは攻略分析を始めた。
ログを確認すると、スライムのHPは3倍以上に膨れ上がっていた。
このままではまずい、制限時間内に倒せなくなってしまう。
ただでさえスキルには回数制限があるのに……。
スライムは水分を吸収して大きくなるようだ。
そしてダメージを与えて小さくなると水道管を通して移動出来る。
どこまで行けるのかは分からないが、回復している間は水場の近くに居ると考えて間違いないだろう。
時間が動き出したのではない。
時計塔の針がデタラメに動いているのだ。
ビッグベンとはロンドンにある有名な時計台のことだ。
旧校舎の時計塔はそれにちなんでビッグベンという愛称で呼ばれることがある。