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文字数 3,153文字

大人にも勇者アプリのプレイヤーが居たなんてビックリしたよぉ。

ただ経験の割にはレベルは頭打ちのようだな。


気付いてるか?

委員長はあの戦いでまたレベルアップしてるぞ。

たった2回で私達と同じ!?


イズミちゃん凄い……。

こういう極端な例はレベルアップ条件のヒントになるな。


とりあえず大人の方がレベルアップが遅く、学生の方が早い傾向がある。

ウララさんは戦い慣れてたがまだレベル2、今判明してる唯一のレベル4プレイヤーも学生だしな。

イズミちゃんが一番早くて、ウララさんが一番遅いんだ……。


二人の大きな違いは……

おっぱいだな。
それしか思いつかなかった。



レベルアップすればスキルが強化されるので攻略がしやすくなる。

高難易度クエストに挑む前に出来るだけ強化しておいた方がいいだろう。

ただ予定調和のように少しずつ遭遇するクエストの難易度が上がってるのは偶然だろうか?


クエスト難易度は願いの内容に比例する。

高難易度ほど遭遇率が下がるのも、偶然と片付けるにはおかしな話だ。

サクトはどうもその辺が引っ掛かっていた。



ココナが用意してくれたオムライスを食べながら、二人は今日の出来事のおさらいを続ける。

他パーティーと交流出来たのは大きな収穫だが、新たに得た情報はいいことだけではない。


沢山のプレイヤーと知り合えたし、みんなで協力し合えばもう仲間を増やす必要ないかも。

ココナはメグムの最後の忠告を気にしているようだ。

無理もない、本当にこれがデスゲームだと第三者の口から聞かされたのだから。

メグム達が口裏合わせて嘘を言ってるようには見えなかったが、一応裏付けは取っておく必要があるだろう。


ココナパーティーの仲間枠はあと一つ残っているが、より慎重な選択が迫られる。

他パーティーと共同戦線を張るのなら、ココナが言う通り無理に仲間を増やす必要はない。


問題は強制エンカウントするレッドクエストだ。

パーティーメンバーのようにエンカウントしていない他の勇者パーティーを召喚することは出来ない。

クエストが始まった時点でそれぞれの勇者がクエストエリアに存在していなければ共同戦線は張れないのだ。


不意打ちエンカウントはパーティーを強化するしか根本的な解決策はない。

ただ赤色に変化する前のイエロークエスト情報を持っている場合は、積極的に情報交換することで準備は出来る。

すでにウララから要注意クエスト情報は受信済みだ。

みんないい人で良かったよね。

きっとレベル4の勇者もいい人だよ!

それはどうだろうな。

ウララさんはいい人っぽいが、そう簡単に人を信用しない方がいいと思うぞ。

サクトくんは人を疑り過ぎだと思う……。
現実は報われない、落ちもないクソゲーだからな。
どうして今のサクトくんはそんな風に考えるようになっちゃったんだろ……。

でもウララさんのことは信用してるんだね。


やっぱり告白されたから?

いや、告白じゃないだろ、アレは!


からかわれただけに決まってる。

あー赤くなった。


ウララさん凄くスタイルいいし美人だもん。

男の人が惹かれるのも分かるよぉ。


でもイズミちゃんを泣かせたらダメだよ?

おまえ、いい加減そのネタしつこいぞ。


お互い何とも思ってないから!

分かってるよぉ。


そうなったらいいなって私の願望……。

本当に分かって……

ココナの表情が一瞬陰ったことに気付くサクト。

嘘をついてる時とは全く別の表情だ。

どうやら本気でくっつけたいと願っているのかもしれない。

ただ俺がココナにその気にならないよう、遠ざけようとしているだけには見えない。


大穴だが……委員長が付き合いたいと思ってて単純に友達として応援してるのか?

その場合、俺もよくある鈍感系主人公だったってことになる……。

委員長がツンデレヒロイン……、思い返せば思い当たる節が出て来たぞ。


ダメだ、今すぐこのラブコメ思考を止めないと!

自惚れるな、俺。気持ち悪い。

委員長が俺に惚れる要素なんてないのに、そんなご都合主義展開があってたまるか!


その線はない。

分かったな、俺?

イズミを思考の外に追いやるサクト。

……ご馳走様。


まぁ、美味かったぜ。

オムライスを完食し、照れ臭そうに感想を述べる。

女子高生らしいチョイスだったが、お世辞抜きで普通に美味しかった。

何だかんだでココナは女の子としてスペックが高いことを再認識した。

えへへ、ありがと。


雨もやんだみたいだし、服用意するね。

丸洗いすると乾かすのに時間がかかるため、部分的に漬け込んで洗うことにしたココナ。

ズボンにドライヤーを当てながら股間部分の匂いを嗅いだり、揉んだりして湿り具合を確かめる。

おい、やめろ。その仕草!

後はアイロンでなんとかなりそう。

もうちょっと待っててね。

ふふふ、なんだかお嫁さんみたい。


あ、あれ……?

急に涙が溢れてきて戸惑うココナ。

ダメだよ、ココナ。

サクトくんに気付かれちゃう。


もっと上手く笑わないと……。







ただいま……。

お兄ぃぃぃ遅いっ!


可愛い妹がゲームに行き詰まって、健気に待ち続けてたのにっ!!

いや、知るかよ。

ほら、早く!

お兄ぃの部屋のTVにつなぎ直して準備も万全だよ!

だからなんでお前は5年生にもなって兄貴の部屋に勝手に入るんだ……。

ぐいぐいと兄の背中を押し、階段を上らせるヒメリ。

サクトとヒメリは2階の隣通しの部屋なのだが、絶対進入禁止の妹の部屋に対し、兄の部屋は妹に侵入され放題な理不尽仕様となっている。

あれ……?

お兄ぃからオムライス作ってくれそうな女の匂いがする……。


無駄に鋭い妹であった。

おかーさんっ!

お兄ぃがアサガエリしたぁぁぁ!!

待て、このマセガキ!

意味分かってんのか!?

叫びながら飛ぶように階段を下ってく妹。


いや、飛んだ。

ゃあ

派手な音を立てながら転がってく。

すぐにけたたましい鳴き声が家中に響き渡った。

うわぁぁぁぁぁぁん!

骨折れたぁぁぁぁぁ!!

んな大袈裟な……。

ちょっと近所迷惑でしょ!

お兄ちゃんが妹泣かしてどうすんの!

俺のせいじゃないし!


……ちょっと見せてみろ。

いやぁぁぁ痛いぃぃぃ!

死ぬぅぅぅぅぅ!!

あ、これ折れてるわ……。

すぐに救急車を呼び、妹は救急病院へ運ばれていった。


ヒメリはサクトにも付いて来てとダダをこねていたが、母親のゲンコツで押し黙り、サクトは一人留守番することになった。

リアル妹はやっぱ可愛くないよな。

わがままだしうるさいしすぐ泣くし。


しかも勝手にエロ本漁るし!

またベッドの下のエロ本の位置が変わっている。

隠れてコソコソ見てるのは知ってるが、お年頃なので叱ったりはしていない。

とんだムッツリスケベ妹である。


だが学校では猫を被っており、あれでも結構モテるのだ。

趣味がゲームなので男子と話が合いやすいのだろう。

あいつのせいで妹ものは絶対タブーだからな……。

別に興味もないが。

サクトが年上好きというココナの発言はあながち間違っていない。

リアル妹が居るからその反動かもしれないが。


――いや、まだ忘れられないのか。


サクトにも優しくて面白い憧れのお姉さんが居た時期がある。

遠い昔の話だ。


そのお姉さんは今はもう居ない。

TVに映ってるゲーム画面はボス戦で止まっていた。


パーティー戦のアクションなのだが、主人公以外は基本オートで動く。

もう一つコントローラーがあれば、いつでも二人プレイが可能。

すでにコントローラーが二人分用意され、一緒にプレイする気満々だったのだ。


年上に構ってもらいたい気持ちは分からなくもない。

だからって仲間の名前に実の兄の名前付けるか?

ブラコンかよ。


……仕方ない、帰って来るまで付けっぱなしで置いといてやるか。

入院ってことはないよな?

気持ち悪いのであえて口には出さないが、なんだかんだで可愛いとこがある妹である。

小学校を卒業するまでだろうが……。


結局もろもろの検査のために一晩だけ入院することになり、妹はその日帰って来なかった。

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登場人物紹介

影浦《かげうら》サクト


目立つことを嫌い、日陰人生を歩み続けるムッツリ根暗男子高生。2年1組。

何でも理論的に考えそつなくこなすが、リアルでは上手く行かない場合も多い。

ただ「ゲームはプログラムを裏切らない」と、ゲーム業界ではネットでも結構有名な上級者。


ロールは「爆音の魔術師」。スキルは「フレイムワークス」。

煌咲《きらさき》ココナ


キラキラしているが、影であざといと虐められてる天然女子高生。2年5組。

女友達はおらず、男友達も作ろうとしないが……。


ロールは「光の勇者」。スキルは「クラウソラス」と「ヘブンズゲート」。

四十万《しじま》ハル


サクトとは腐れ縁の狐顔のクラスメイト。

情報屋として学校でこっそり商売をしている。

内藤《ないとう》イズミ


サクトのクラスの委員長。

正義感が強く真面目な優等生だが、得体の知れないものに対しては極度のビビリ。


ロールは「鉄壁の騎士」。スキルは「アイアンメイデン」。

影浦《かげうら》ヒメリ


サクトの妹。小学4年生。構ってもらいたいマセガキ。

ゲームが大好きで意外と同級生男子にモテる。

星見《ほしみ》ウララ


喫茶ナインボールに出入りしている占い師のお姉さん。

勇者メグムのパーティーメンバー。

サクトの学校の教師に兄が居る。

至宝《しほう》メグム


喫茶ナインボールに入り浸る探偵のおっさん。

実は勇者の一人で、複数の勇者グループをまとめるリーダー的存在。

皆川《みながわ》ミナコ


喫茶ナインボールでアルバイトしてる医学部女子大生。

ウララとは仲が悪い。

玉井《たまい》クロウ


喫茶ナインボールのマスターで勇者メグムのパーティーメンバー。

喫茶店は夜はバーになり、勇者コミュニティーの溜まり場となっている。

山田《やまだ》ヒデオ


妻子を持つ叢雲商会のサラリーマン。中年のベテラン勇者。

パーティメンバーは同じ会社員だったが、二人は転勤になった。

西条《さいじょう》ネネ


ココナのクラスメイトでイジメグループのリーダー的存在。

ココナを相当恨んでいるが理由は不明。


乙森《おともり》カナセ


ココナのクラスメイト。生徒会会計で叔父は理事。

世話焼きで困っている人をほっとけない。しかし裏目に出る事もしばしば。

御門《みかど》トウヤ


サクトの高校の生徒会長。3年生。

鞘家《さやか》クロエ


サクトの高校の生徒会副会長。3年生。

本瓦《ほんがわら》リリカ


サクトの高校の生徒会書記。1年生。

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