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文字数 2,834文字
普段は利用する者がほとんど居ない旧校舎の時計塔。
昼休みに集まる時はよく利用していたのだが、今日は七夕イベントで女生徒の出入りが激しい。
いつもの屋上から旧校舎方面を見下ろすココナとイズミ。
サクトが少し遅れて到着した。
しかし一人ではない。部外者を一人連れている。
今まで散々助けてもらっておきながら、あまり乗り気じゃないココナの様子に一瞬違和感を覚えるサクト。
たぶん、もう一人の勇者がこういうキャラクターだったことにショックを受けただけなのだろう。
かく言うサクトも正直、こんなチャラチャラした関西野郎に負けていたとは思いたくなかった。
アドレス交換をしているココナと乙森を尻目に、サクトは委員長に声をかけた。
――クエストエンカウント
ココナがクエストを受注し、世界の時間が凍結する。
すぐさまアプリのステータスを確認する。
クエスト:ブラックオアホワイト
タイムリミット:01:59:40
参加プレイヤー:5/5
ココナ LV3 HP 100%
サクト LV3 HP 100%
イズミ LV3 HP 100%
カナセ LV1 HP 100%
ココナが躊躇った理由が分かった。
乙森カナセはレベル4の勇者ではなく、パーティーの一員になりたかった一般人だったのだ。
そしてアドレス交換してると思いきや、4人目のパーティーメンバーとして加入の手続きをしていたのだ。
サクトの絶望している様子から同じ勘違いをしていたことに気付くイズミ。
多少違和感を感じたものの、乙森の加入を止められなかったことを悔いる。
こうなってしまっては後の祭り。
教えられた通りスマホを操作する乙森カナセ。
薔薇のエフェクトに包まれ、彼の学生服が弾け飛ぶ。そんな普通女子の反応とは対照的に食い入るように見つめるココナ。
サクトの視線に気付いて我に返る。
バキューンと、銃に変化したスマホを向ける乙森。
彼はアイドルのような衣装に身を包む美少女ハンターに変身していた。
よく見るとシンメトリーに反転しメイクアップされているものの、顔はそのまま。
イケメンと美女は紙一重ということなのだろう。
しかし彼が女になったことを証明する、たわわに実った膨らみがポヨポヨと揺れていた。
とは言うものの、ウララやミナコに会ってなかったら危なかったかもしれない。
こういう変身もアリなのかよ。
性同一性障害……とはまた違うのだろうか?
よく分からないが本人が開き直っているのならそれに合わせてやるだけ、サクト以外の二人もそう思ったようだ。
そんなことよりもっと大事なことを確認しておかなければならない。
委員長が言うのももっともだ。
普通は夢か幻か、疑いから始まるものである。
バイセクシャルの特権か。