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文字数 2,428文字
窓の外を眺めながら四十万ハルが呟く。
授業が終わり帰宅部の帰る時間。
通り雨だと思っていた空模様はより一層崩れていた。
勇者部を校舎屋上でひっそり行っているのには二つの理由がある。
一つは鍵が壊れていることを知られておらず、人目につかず二人きりになれること。
もう一つは上からクラブ活動や帰宅する生徒を広域撮影でチェック出来るから。
そうやって毎日勇者カメラを覗きながら、クエストやプレイヤー情報を集めているのだ。
しかし他のパーティーのプレイヤーはスキャン出来ない仕様なのか、例の勇者は映ったことがない。
堅物の委員長に用もないのに話しかけるのは、彼くらいだ。
なぜか委員長は焦っているようだ。
冷汗が頬を伝う。
貢物を要求するハル。
そう、彼はこういう人間だ。
誰にでも話しかけるが友達は少ない、その理由がコレだ。
挟まれているサクトは空気を読んで逃げだすことにした。
委員長趣味悪すぎ……。
クラスで空気同然だったが故にあることないこと言いたい放題だな、おい。
その騒めきの中にいつの間にかココナまで含まれていた。
教室の入り口で立ち聞きしていたようだ。
こういう時俺はどういう顔をすればいい?
笑えばいいのか?
――ドンガラピシャァァァン!!
思考をかき消すように、突如激しい轟音と振動に襲われ照明が一斉にダウンする。
びびったぁ!
騒然とする教室。
俺達のことはすっかり忘れられ、落雷の話で持ち切りになる。
助かった……と言いたい所だが。
俺は半泣きで震えている委員長に抱き着かれていた。
もうテンパリ過ぎて脳がはち切れそうだぜっ!
クエストエンカウント
突如システムメッセージがアナウンスされ、世界が一瞬赤色に染まる。
赤色クエストに遭遇したのだ。
何はともあれ脳の処理が追い付かない。
とりあえずメンタルリセットしてクエストに専念しよう。
一時停止されたこの世界では、基本的にプレイヤーとモンスターしか動けない。
しかし止まっている人間も物理干渉を受ければ慣性に従う。
抱き着いている委員長の重みをしっかり感じながらそっと壁際に移動させる。
――こんな顔してる委員長は初めて見たが、雷が怖いなんて可愛いところあるじゃん。
などと思いながら、怪我をさせないように丁寧に座らせていく。
力の抜けた人間は重く感じるらしいが、座らせるだけでも難しい。
――ちょっとお尻や太腿に触れるが許せ。
ただ雷が怖かっただけじゃなかった。
泣いてた本当の理由を理解してさらに困惑するサクト。
その一部始終をずっと固唾を飲んで見守っていたココナの一言。
黒ずくめのとんがり帽子にマント、スマホは杖へと変化する。
ココナもコマンドを実行する。
脱力した姿勢のまま、光に包まれて魔法少女に変身するココナ。
しかし変身プロセスの一部始終をうっかりサクトの前でさらけ出してしまった。
サクトと違って下着に至るまで全身フルチェンジのココナは、一瞬全裸になってしまうのだ。