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文字数 3,111文字
『幸い通行人の殆どは軽症で済み、重傷者も命に別状はないとのことです。
なお、暴走を続けた薬物中毒者は意識不明の状態で病院に――』
店内に設置されたTVが、つい先ほどの事件を生中継している。
琴吹駅近くの地下喫茶『ナインボール』。
客の顔ぶれはさっきまで共同戦線を張っていた者達だ。
サクト、ココナ、イズミの三人はウララにこの秘密基地(?)に案内されたのだった。
差し出されたオレンジジュースを吹き出しそうになるイズミ。
まさかこんなところでモテ期が到来しようとは……。
そこに助け船のように空気をリセットする新たな来客が訪れた。
ここぞとばかりに主導権を取り戻すため、怪傑の勇者が立ち上がった。
叢雲商会のサラリーマンをやってます。
もう一人は残業が残ってて今日は多分来れないと思う。
途中で召喚した二人は転勤で遠くに居るんだ。
クエスト中に会ったらその時改めて紹介するね。
……このメンツの中には居ないな。
あの時すれ違った人物は関係者じゃないのか?
山田さんのパーティーに居るもう一人の人物はまだ見てないけど……。
あくまでエンカウントするのは勇者であって、仲間は勇者が居ないところではエンカウントしない。
勇者がエリア内に不在だった可能性もあるが……。
今はこの場に居ないけど、祝日や朝と夜の琴吹市でエンカウントすることがあったら、あともう二組居るかな。
一組は大学生グループ、もう一組は君達と同じ高校生グループだよ。
学校は離れているんだけど、それぞれの勇者がこっちで寝泊まりしているからね。
ああ、例のレベル4の勇者のことを知りたいんですね。
山田さん達は実際会ったことないんですよ。
私も一度しか会ったことないんですが。
彼も変身すると顔が見えなくなる系なんですが、制服がそんな感じだったと思います。
ソロで名前すら教えてくれなかったし、レベル4も自称なので本当なのか……。
ただレベル4と言われても頷ける強さでしたよ。
そうですね、サクトさんの火力とマスターの戦い方を併せ持った感じ。
しかもスキルを3種類持ってましたよ。
聖剣スキルと氷属性系のスキル、もう一つは精神操作系?
敵を操るような技を持ってました。
一同の表情が凍り付く。
恐らくタブーにしている情報だろう。
だが最も知っておかなければならない情報だ。
禁煙らしい。
把握しているだけで6人。
それが俺達大人が守ってやれなかった子供達の数だ。
ゲームオーバーとなった者は心不全という形で突然死が実装される。
当然司法解剖などはされない。
そもそも事件性がない場合、ほとんどの突然死は心不全で片付けられるからな。
その中に埋もれちまうのさ。
それを聞いて降りたくなったら、まずは俺のとこに相談に来い。
お前達なら大丈夫だと思うが、決して勇者を逆恨みしてやるなよ?