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文字数 2,142文字

クエスト:境界線上の暴走者

タイムリミット:00:52:10

参加プレイヤー:8/8


ココナ LV3 HP100%

サクト LV3 HP100%

イズミ LV2 HP100%

参加プレイヤーが8人!?

俺達が3人だから少なくとも他に2パーティー以上居るのか。

モンスターは駅の中まで二人を追ってくることはなかった。

落ち着いたところでアプリから情報収集を始めたサクト。


ココナとはすでに連絡を取り、モンスターとまだ遭遇していないのならその場を動かず隠れていろと指示をした。

ただ集まるために無駄に勇者コマンドを使う必要はない。

仲間に絶対順守の命令を下す勇者コマンドは、いざという時の切り札になる。

合同クエストは初めてですか?

一緒に逃げてきた別パーティーのウララが落ち着いた様子で尋ねる。

どうやら彼女にとっては珍しいことではないようだ。


人口密集地を拠点としているため、他の勇者と一緒になる確率は上がる。

それはエンカウント率が高くなることも意味してそうだが……。

琴吹市は激戦区なのかもしれない。

いや、正確には初めてじゃないが……


一緒に戦うのは初めてです。

こちらのパーティーも3人なので残り2人。


多分山田さんのパーティーですね。

……交流のあるパーティーなんですか?

山田さんのところも社会人チームで、この時間帯はよくご一緒するんです。

本当は4人居るんですが残り2人は転勤になったらしくて、ピンチの時しか呼ばないそうです。


そちらは学生チームですか?

同じ学校の同級生です。

ふふ、いいですね。青春してそうで。


女の子は誘いましたか?

残念ながら両方女です。

おや、モテモテですね。

上手くいってなさそうなのは、もしかして修羅場ってたり?


お姉さんで良ければ相談に乗りますよ?

リアル職業柄、そういう相談もよく聞きますし。

そんなんじゃないです。


どっちも全くウマが合わないし……。

……もしかして年上が好みとか?


ちなみに私もフリーですよ♪

さっきからチラチラとウララの顔を伺っていたことに気付いたようだ。

直視出来ないのは男子高生には刺激的な衣装だからだろう。

可愛いなぁ、とウララは思ったのかもしれない。


もちろんそれもあるが、サクトは別の意味でウララの顔が気になってるのだ。

神須賀高校に家族が居ませんか?

ああ、神須賀高校の生徒さんでしたか。


お察しの通り、神須賀高校の星見先生は私の兄ですよ。

これでパズルのピースがひとつハマった。

星見先生は格闘技マニアで様々な有段者だ。

ココナのスカウトリストにも登録されていて、彼は武闘家タイプだった。


華奢だが妹である彼女も格闘技をやっていてもおかしくはない。

しなやかで引き締まった肉体から察するに相当強そうだ。

先生は勇者アプリを知ってるんですか?

先生もスカウト可能になってましたよ。

えっ、そうなんですか?


流石にこんなこと家族にも話したことないです。

そもそもお互い一人暮らししてますから、会話する機会もめっきり減りましたし。


そうですか、あの兄が……。

感慨にふけるウララ。

仲間枠が余っているのなら誘おうと考えてるのだろうか。

もし良かったらそちらのパーティーに参加するよう説得しましょうか?

こういうことって中々説明しづらいし。

きっと頼りになると思いますよ。

いえ、ウチは同級生だけにしようって決まりなんで。

サクトが勝手に決めたことだが、こういうことは対等で言いたいことを言い合える立場同士の方がいいという考えからだった。

それに先生が加わってしまえば主導権を握られてしまうだろう。

サクトは純粋にこのデスゲームを楽しみたいのだ。

じゃあ他のパーティーに売り込もうかしら……。
ご自身のパーティーには誘わないんですか?

フルパーティーは勇者を含めて4人となっている。

つまり3人パーティーのウララのチームも一枠余ってることになる。

いえ、こっちはすでにフルメンバーでして……。


お恥ずかしい話、もう一人とは仲違いしてる状態なんです。

大人の世界は色々あるんですよ……。

緊張感がなく明るく振舞っていたのはサクトの前だったからかもしれない。

ウララのチームはサクト達よりよっぽど深刻な問題に直面しているようだ。

良かったら連絡先交換します?

お互い情報を共有出来た方が助かると思いますが。

それは願ってもない、むしろこっちから頼みたいことだった。

いくらゲームが得意な彼にも情報は必要だ。

ネットで検索することも出来ないし繰り返し自由に実験出来るわけでもない。

いつも命をかけたぶっつけ本番なのだ。

ただリアルコミュ力に少々自信がないサクトはどう切り出していいか迷っていたのだった。

サクトくんが美人のお姉さんをナンパしてる……。
不潔だわ……。

なぜかそこにココナと委員長が現れた。

マップの位置情報を頼りに移動してきたようだ。


ココナは魔法少女に変身済みだが、イズミは自分で動けなくなるためまだ変身していない。

おまえら……

待機してろって言っただろ!

ほら、やっぱりやましいところがあったでしょ?


煌咲さん、こういう男と付き合っちゃダメよ。

男の人が浮気するのはただのスケベ心だから。


本心はイズミちゃん一筋だから信じてあげて!

話がかみ合ってない上にその設定まだ引きずってるのかよ……。
あらあら、やっぱり青春してるじゃないですか。うふふ。
くそ、誰か俺の話を聞いてくれ……。
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登場人物紹介

影浦《かげうら》サクト


目立つことを嫌い、日陰人生を歩み続けるムッツリ根暗男子高生。2年1組。

何でも理論的に考えそつなくこなすが、リアルでは上手く行かない場合も多い。

ただ「ゲームはプログラムを裏切らない」と、ゲーム業界ではネットでも結構有名な上級者。


ロールは「爆音の魔術師」。スキルは「フレイムワークス」。

煌咲《きらさき》ココナ


キラキラしているが、影であざといと虐められてる天然女子高生。2年5組。

女友達はおらず、男友達も作ろうとしないが……。


ロールは「光の勇者」。スキルは「クラウソラス」と「ヘブンズゲート」。

四十万《しじま》ハル


サクトとは腐れ縁の狐顔のクラスメイト。

情報屋として学校でこっそり商売をしている。

内藤《ないとう》イズミ


サクトのクラスの委員長。

正義感が強く真面目な優等生だが、得体の知れないものに対しては極度のビビリ。


ロールは「鉄壁の騎士」。スキルは「アイアンメイデン」。

影浦《かげうら》ヒメリ


サクトの妹。小学4年生。構ってもらいたいマセガキ。

ゲームが大好きで意外と同級生男子にモテる。

星見《ほしみ》ウララ


喫茶ナインボールに出入りしている占い師のお姉さん。

勇者メグムのパーティーメンバー。

サクトの学校の教師に兄が居る。

至宝《しほう》メグム


喫茶ナインボールに入り浸る探偵のおっさん。

実は勇者の一人で、複数の勇者グループをまとめるリーダー的存在。

皆川《みながわ》ミナコ


喫茶ナインボールでアルバイトしてる医学部女子大生。

ウララとは仲が悪い。

玉井《たまい》クロウ


喫茶ナインボールのマスターで勇者メグムのパーティーメンバー。

喫茶店は夜はバーになり、勇者コミュニティーの溜まり場となっている。

山田《やまだ》ヒデオ


妻子を持つ叢雲商会のサラリーマン。中年のベテラン勇者。

パーティメンバーは同じ会社員だったが、二人は転勤になった。

西条《さいじょう》ネネ


ココナのクラスメイトでイジメグループのリーダー的存在。

ココナを相当恨んでいるが理由は不明。


乙森《おともり》カナセ


ココナのクラスメイト。生徒会会計で叔父は理事。

世話焼きで困っている人をほっとけない。しかし裏目に出る事もしばしば。

御門《みかど》トウヤ


サクトの高校の生徒会長。3年生。

鞘家《さやか》クロエ


サクトの高校の生徒会副会長。3年生。

本瓦《ほんがわら》リリカ


サクトの高校の生徒会書記。1年生。

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