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文字数 2,958文字
クエスト:恵みの雨と焦がれる太陽
タイムリミット:01:56:30
参加プレイヤー:2/2
ココナ LV2 HP100%
サクト LV2 HP100%
校舎の4階くらいの高さはあるだろうか。
大樹のモンスターだが、そのシルエットは女性的で腰のくびれや胸まである。
ただ頭はアフロのように葉が生い茂っており、サタデーナイトフィーバーな昭和テイストを思わせる。
強引に視界を覆っていたココナの両手を引きはがし、窓からモンスターを撮影し情報を取得する。
アポロドライアード LV3 HP100%
時間が停止している無関係の人間は戦闘に巻き込まれて怪我をしても元に戻るのだが、かと言って無視して傷つけるのも気分のいいものではない。
よく見ると校庭のあちこちに不自然な草が生えている。
スキャンしてみると、その一つ一つもモンスターのようだ。
マンドラボムE LV1 HP37%
アポロドライアードの方から説明するぞ。
ドライアードってのは女性の姿をした木の精霊だ。
男を誘惑して木の中に引きずり込む。
その中と外界では時間の流れが異なり、一日閉じ込められたら外では何十年経ってたりするらしい。
まぁ早い話が浦島太郎だな。
アポロって冠名は有名な太陽神だな。
あいつの頭上だけ晴れてるのか、やけに明るいよな?
多分光合成による何らかの特殊能力があると思って間違いない。
アフロとかけてるだけかもしれんが……。
校庭に根付いた4階建てほどの巨木のモンスターは足がなく、その場から動き出す気配はない。
今までは小型のモンスターばかりだったが、この敵はまさにボスモンスターの風格だ。
サイズだけではない、そう思わせるもう一つのポイントが配下(?)のモンスターまで存在すること。
所々に点在する奇妙な草一つ一つが別モンスターであり、ぱっと見えるだけで10以上は生えている。
戦う前に気付けたのは幸いだ。
マンドラボムの方は多分マンドレイクが元ネタだろうな。
根っこが人の姿をしてて成熟すると自ら地面から這い出て徘徊する。
無理に引っこ抜いて叫び声を聞いた者はショック死するというのが通説だな。
ボムって言うくらいだから爆発するような気もするが……。
この敵の一番の注目ポイントは最初からHPが減っていること。
正確には回復中と言った方がいいか。
クエスト名から考えて雨でHPを回復、100%になると成熟して這い出てくると思う。
そして見えている草の大きさが現在のHPを反映しているようだ。
不揃いでバラバラだが、全部成熟してしまうと厄介だ。
俺達は火力は高いが攻撃回数に限りがある。
時間との勝負になるぞ。
って、聞いてたか?
マンドレイクの方は多分踏んだりしなきゃ無視していいと思う。
問題はドライアードの方だ。
雑魚から先に片づけるのがセオリーだが、さっき言ったように俺達は手数が少ない。
戦力が整う前に先に強い方を叩いた方がいいんだが……
相手はデカいが身体は結構スリムなんだよなぁ。
近付かないと当てれる自信がない。
1階に移動し、敵に気付かれないよう大回りして二手に分かれる。
ドライアードの正面を避け、左右から挟み撃ちする配置につく。
サクトは旧校舎方面から、ココナは体育館側から。
電話で最終確認を行う。
ずっと沈黙していたドライアードが動き出す。
上半身を捻りココナが居る方向へ向く。
さらに頭のアフロが光りだし……。
アポロドライアードは力を溜めている
スマホのスキャンモードでログを確認しながら飛び出すサクト。
魔法のロケット花火と爆竹を同時に点火する。
ロケット花火はドライアードに命中しなかったが目的は攻撃ではない。
二つの魔法の激しい光と音に反応し、上半身がサクトの方に向き直る。
すぐさま校舎を盾にして隠れるサクト。
半身だけ身を出して様子を伺いながら、ログも同時にチェックする。
アポロドライアードの攻撃
身構えるサクトだが、ドライアードの上半身はサクトの方を向いたまま微動だにしていない。
しかしその理由はすぐに身をもって知ることになる。
突如足元から無数の根が生え、サクトを包み込む。
それはすぐに球根のような丸い塊となり完全に閉じ込められる。
サクトは捕獲された
ログを確認したココナに動揺が走り、足がもつれてしまう。
顔に足が生えたような球根の追跡者が迫る。
さらにドライアードもココナが潜む体育館の方に向き直った。
2種のモンスターの視界は共有されているようだ。