プロローグ
文字数 301文字
「神様、私に……勇気をください」
希望の光を失い、孤独の闇に閉ざされた病室で少女は祈る。
特に信心深いわけではない。ゆえにすがる神に名などない。
しかし絶望を前にした人々は藁にもすがる想いで名も無き神に祈るのだ。
──今も昔も変わらない。そしてこれからも。
幾度と無く繰り返されてきた自分勝手で都合の良い神頼み。
それは人類の繁栄と共に多様化し、もはやエゴの塊でしかなかった。
──神が運命に手を加える時代はとっくに終わった。分かっているのだろう?
少女の祈りが神に届くことはもうない。
だが人知れず、報われず、讃えられることもなく、命を賭けて神頼みを叶える者達が居る。
その人柱の名を《勇者》と言う。