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文字数 3,154文字
扉を蹴り開け、屋外に飛び出すサクト。
そこは彼が通う私立神須賀高校の校舎屋上だった。
直線距離で50メートル以上。
並列する校舎の屋上も繋がっているためそれくらいの距離は稼げる。
その先に待ち構えているのは天使像を模したモンスター。
一定距離を保ち距離を詰めてくる性質を利用しここへ誘導したのだ。
今のサクトと天使の間に高低差は殆ど存在しない。
距離は調整するが高低差を保つというルーチンが存在しないことに気付いたのだ。
ブロークンエンジェルの攻撃
天使が矢を引き絞り攻撃態勢に入る。
しかしサクトは臆さず真っ直ぐ天使に直進した。
クエスト名にも攻略のヒントが隠されていることに気付いたサクトは、敵の攻撃軌道も完全に把握していた。
高速で放たれた矢を胸の前に構えた杖で防御しながら、スピードを緩めることなく一直線に距離を縮めていく。ブロークンエンジェルは攻撃モーション中に移動出来ない。
その後、狙っている標的との距離を一定に保とうと移動するが、その移動速度は遅い。
つまり、距離を取られる前にこの直線50メートルで決着をつけようというのだ。
校舎から遠ざかる天使を追い、サクトは屋上から飛び出す!
天使に飛びかかり、杖の先端をその顔面に押し付ける。
ゼロ距離からの魔法攻撃。
クエストクリア
奇跡を現実に実装します
先程までとは打って変わり、多数のノイズが入り混じった街の喧騒がサクトを取り囲んだ。
呆然としているサクトの前で、風のイタズラが前を歩く女子生徒二人組のスカートを吹き上げる。
当たり前だが変わったところはない。
まるでサクトを待っていたかのように駆け寄ってくる。
思わず後ろに誰か居るのかと振り向く。
心の中でセルフツッコミをしながら、見覚えのない美少女の行動に挙動不審になるサクト。
いわれのない罪悪感がサクトを襲う。
――こういう時はアイツの力を借りるか。
悶々と悩み続けた午前の授業が終わった昼下がり。
狐顔のクラスメイト、四十万(しじま)ハルにお供え物を差し出す影浦サクト。いつの間にか噂の当人が後ろに佇んでいた。
全滅した時点でクエストの結果が反映される……
こんなことしちゃいけないって分かってたのに……死にたくなくて、怖くなって、すがる思いで影浦くんを強制的に仲間に入れたの!
弱虫でごめんなさい!
この契約はエンディングを迎えない限り破棄することは出来ない。
だから次からはクエストが始まったらすぐに逃げて欲しい……。