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文字数 2,030文字
神須賀高校の象徴とも言える旧校舎の時計塔は水力式だ。
時間が止まっているこの世界では干渉しない限り、噴水の水は氷のように固まったままだし飛沫も落ちてこない。
しかし水力時計が動いているということは……。
その中央では大蛇のように成長したスライムがとぐろを巻いて鎮座している。
ダメージは見受けられない。
それもそのはず。
先の大爆発はモンスターを狙ったものではなく、給排水設備を破壊するためのものだからだ。
サクトとココナが地上の逃げ口を塞ぐように立ちはだかる。
しかしサクトは周辺の給排水設備の破壊にスキルを使い果たしていた。
ここから先は勇者の仕事だ。
ココナが真面目な顔でサクトを見つめる。
スライムがゆっくり貯水槽から這い出て、攻撃の間合いを測り始めた。
講堂内を逃げ回る二人。
しかし細くなった触手がどこまでも追いかけてくる。
たまらず外に飛び出す二人。
細く伸びて追いかけてくるスライム。
左右に分かれる二人。
しかしスライムも二手に枝分かれし、ツインヘッドのヒドラのような姿となってなおも追ってくる。
ステッキが見つかってもココナが居なければ倒せない。
反転し、スライムの胴をくぐり抜けて救援に向かうサクト。
いや、止まったというより凍りついたのだ。
白く凍結した体組織が広がっていき、やがてスライムの全身を覆ってしまう。
パリパリと音を立て触手が砕け散る。
サクトに自由が戻った。
見当たらないと思っていたらスライムの肉体に食い込んでいた。
すぐさまスライムの上を駆け上がり、蹴り砕くようにステッキを取り出すサクト。
スライムの表層が少し溶け始めている。
神経だが血管だがよく分からない組織も脈動を始めた。
ココナにステッキを投げつける。
しかしサクトはノーコンだった。
慌てて拾いに走るココナ。
その後姿を見送ったサクトは鼻血を出して倒れた。
光の刃を生み出し、スライムの本体と思われる目玉を一突きにするココナ。
――キィィィ………ン!!
ステッキから光の刃が消失する。
ウォシュライムに356%のダメージ
――パァァァァン!
半冷凍のスライムの肉が弾け、吹き飛ぶココナ。
みすぼらしく縮み、ひょろひょろになったスライムが再び逃走を図る。
目指す先には花壇に水を巻いている用務員の姿。
その手にはジョウロではなくホースが握られている。
復活したサクトがココナに走り寄る。
言われるがまま、聖剣を発動させバトンを渡すココナ。
すでにスライムはホースの中に入り始めている。
――ダメだ、間に合わない!
スライムが何かにつっかえている。
神経の尾部に絡んでいた白い物体のせいで詰まってしまったのだ。
一閃!
光刃が消失すると同時に純白の聖三角形がハラリと地に墜ちる。
クエストクリア
奇跡を現実に実装します