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文字数 2,608文字

星見先生の妹さんなんですね。


凄く……綺麗です……。

あら、ありがとうございます。


二人も凄く可愛いと思いますよ。

良かったですね、サクトさん。

星見先生はイケメンではないが不細工でもない。

顔が全く似てないので言われなければ気付かなかっただろう。

そういえばサクトくんは年上好きだったね……。

しかもスタイルいいし。

なぜ知った風な口で言う。

勝手に俺の設定を付け加えるな、ポンコツ。

確かにウララは運動をしているせいかスタイルがいい。

しかもシースルーな踊り子衣装に身を包んでることもありエロさが引き立つ。

ほんと、男って単純ね。

相変わらず委員長はツンツンしてる。

嫉妬からくる発言であれば可愛げもあるだろうが、彼女に限ってそれはないだろう。

潔癖な性格から心底軽蔑してるのだ。

初対面の人相手に随分だなおまえら……。


正直印象悪すぎて俺の方がドン引きだぜ。

まぁまぁ、年頃の女の子はこんなものですよ。

大人の余裕を見せつけるウララ。

これは色気を抜きにしてもウララに目移りしても仕方ないだろう。

さてと、コイバナは後でじっくり聞くとして、そろそろクエストの攻略を考えた方が良さそうですよ。

タイムリミットが短いことに気付いてますか?

言われて確認するココナ。

参加プレイヤーが多いせいで緩み切っていたのは言うまでもない。

ほんとだ、今までで一番短い。

レッドクエストは強制エンカウントするだけでなく、ハードモードになります。

モンスターが強化されることもあれば戦闘エリアが異常に広かったり、今回のようにタイムリミットが短くなることもあるんですよ。

モンスターが強化されるだけじゃなかったのか。
さらに同じ内容の神頼みをした人間が居ると、その分複数のモンスターがポップします。

複数モンスターがポップするのはそういう仕組みか。

そしてボス級のモンスターが必ず存在する……。

そういうことです。


他のパーティーと交流すると情報交換が出来て共闘も出来ます。

いいことずくめでしょう?

今後も協力し合いましょうね。

確かに情報が得られるメリットは大きい。

しかし共闘することにデメリットはないのだろうか?

神須賀高校のもう一人の勇者の行動が謎過ぎてどうにも引っかかる。

逆に私の方から聞きたいこともあります。

あなた達は短期間で高レベルになったようですが、何かコツとかあるのですか?

このゲームの最大レベルは5。

サクトとココナはレベル3、委員長ですらあの1回の戦闘でレベル2になった。

対するウララは知識の割にレベルは2。

もしかしたらデメリットはそこにあるのかもしれない。

こちらのパーティーは私以外レベル3、古参の山田さん達のパーティーでもみんなレベル3です。

正直頭打ちで困ってるんですよね。

今までにレベル4の人なんて一人しか見たことないです。


そういえば彼も神須賀高校の生徒だったのかしら?

サクトさんと同じ制服だったし……。

顔を見合わせるサクトとココナ。


間違いない、例のもう一人の勇者だ。

こんなところで情報を得ることが出来るとは。

あの、なんて名前の人なんです?

その話もクエストの後にしましょう。


私のパーティーが今、交戦開始したみたいです。

ログチェックをしていたウララが電話をかける。

彼女の武器は大きな鉄扇のようだ。

スマホが変化した鉄扇を耳に当て、パーティーメンバーとコンタクトを取る。

もしもし、今大丈夫ですか?

新しい勇者パーティーと合流したんですが、これから一緒に応援に行きますよ。


えぇ、初心者じゃありません。

すでにレベル3が二人も居ますよ。

なんか勝手に話が進んでるが、まぁいいか。

そのつもりだったし。


委員長、プレイヤーが8人も居るんだ。

流石にやれるだろ?

また馬鹿にして……!


逃げないし、戦う時はちゃんと役立ってみせるわよ!

そう強がっているものの、これから戦闘に行く流れとなり実感したのか、委員長の足は小刻みに震えていた。

大丈夫だよ、イズミちゃん。

みんなベテランみたいだし、今回は勉強させてもらうつもりでいいんじゃないかな?

……「内藤さん」から「イズミちゃん」に変わってる。


俺が居ない間に委員長と何があったんだ?

ウララを先頭に一行は駅から連なるデパートやショッピングモールを経由し、出来るだけ外に出ないように移動を開始した。

まだ他にもモンスターが居る可能性があるからだ。

余計な戦闘は避けたい。

ところでイズミさんはその恰好のままでいいんですか?
小走りで移動しながらウララはもっともな質問を投げかけた。
こいつは迂闊に変身すると後で困ったことになるんです。

良く分からないけど、変わったタイプの人みたいですね。


こちらの勇者と同じタイプかしら……。

……普段無口の癖によく喋るじゃない。

こいつ呼ばわりなんて何様のつもりよ。

美人の前で保護者面して気に食わないわね。

あら、山田さんから電話?


もしもし?

なんかみんなで助け合ってる感じ。

いいよね、こういうの。


やっぱり学校のもう一人の勇者ともコンタクト取ろうよ。

それはこのクエストの後でウララさんの話を聞いてから判断する。


変な奴だったら困るだろ?

変な方はどっちかしら。

何だよ委員長。

やたらと突っかかるな……。

別に批判したつもりはないわ。
え? そっちにも??

電話していたウララが突然足を止めたせいで、背後から抱き着くような形で衝突してしまうサクト。

反射的に突き倒さないようにしっかりと抱き留める。

ご、ごめんなさい。

ありがとうございます。


あ、いえ、こっちの話です。

実は新しい勇者パーティーと一緒に居るんですよ。

……何だよ?
後ろの2人が赤面してるサクトを凝視している。

イズミちゃん落ち着いて。


確かにサクトくんはスケベだけど今のは事故だし。

どさくさに紛れておっぱい触ったかもしれないけど。

別に何とも思ってないわ。


影浦くんが誰に鼻の下を伸ばそうと私には関係ないし。

ただ非常時に浮ついてるからイラっとしただけ。

……何とも思ってるじゃないか。
また微妙な空気になったのを吹き飛ばしたのは通話を終えたウララだった。

……思ってるより事態は深刻かもしれません。

見学させるとかお手並み拝見とか悠長なことを言ってられなくなりました。

山田さんも転勤した二人を召喚して交渉するようです。


どれくらい修羅場を超えてきたのか分かりませんが、戦力として協力いただいでもよろしいですか?

それまで笑顔を絶やさなかったウララが初めて鋭い眼光を放つ戦士の顔になる。

その顔を見てサクト達3人の心は戦闘モードにスイッチした。

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登場人物紹介

影浦《かげうら》サクト


目立つことを嫌い、日陰人生を歩み続けるムッツリ根暗男子高生。2年1組。

何でも理論的に考えそつなくこなすが、リアルでは上手く行かない場合も多い。

ただ「ゲームはプログラムを裏切らない」と、ゲーム業界ではネットでも結構有名な上級者。


ロールは「爆音の魔術師」。スキルは「フレイムワークス」。

煌咲《きらさき》ココナ


キラキラしているが、影であざといと虐められてる天然女子高生。2年5組。

女友達はおらず、男友達も作ろうとしないが……。


ロールは「光の勇者」。スキルは「クラウソラス」と「ヘブンズゲート」。

四十万《しじま》ハル


サクトとは腐れ縁の狐顔のクラスメイト。

情報屋として学校でこっそり商売をしている。

内藤《ないとう》イズミ


サクトのクラスの委員長。

正義感が強く真面目な優等生だが、得体の知れないものに対しては極度のビビリ。


ロールは「鉄壁の騎士」。スキルは「アイアンメイデン」。

影浦《かげうら》ヒメリ


サクトの妹。小学4年生。構ってもらいたいマセガキ。

ゲームが大好きで意外と同級生男子にモテる。

星見《ほしみ》ウララ


喫茶ナインボールに出入りしている占い師のお姉さん。

勇者メグムのパーティーメンバー。

サクトの学校の教師に兄が居る。

至宝《しほう》メグム


喫茶ナインボールに入り浸る探偵のおっさん。

実は勇者の一人で、複数の勇者グループをまとめるリーダー的存在。

皆川《みながわ》ミナコ


喫茶ナインボールでアルバイトしてる医学部女子大生。

ウララとは仲が悪い。

玉井《たまい》クロウ


喫茶ナインボールのマスターで勇者メグムのパーティーメンバー。

喫茶店は夜はバーになり、勇者コミュニティーの溜まり場となっている。

山田《やまだ》ヒデオ


妻子を持つ叢雲商会のサラリーマン。中年のベテラン勇者。

パーティメンバーは同じ会社員だったが、二人は転勤になった。

西条《さいじょう》ネネ


ココナのクラスメイトでイジメグループのリーダー的存在。

ココナを相当恨んでいるが理由は不明。


乙森《おともり》カナセ


ココナのクラスメイト。生徒会会計で叔父は理事。

世話焼きで困っている人をほっとけない。しかし裏目に出る事もしばしば。

御門《みかど》トウヤ


サクトの高校の生徒会長。3年生。

鞘家《さやか》クロエ


サクトの高校の生徒会副会長。3年生。

本瓦《ほんがわら》リリカ


サクトの高校の生徒会書記。1年生。

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