川の流れと閃きと
文字数 550文字
ふと、その河原の広さが気になりました。川の幅に比べて、河原が広すぎるのです。
そこで僕は、「あの」と手を挙げてみました。まるで野外学習に来た小学生のように。
「何ですか」
そう答えた理子さんの口調は、たまたま虫の居所が悪かった引率の先生のように不愛想でしたが、僕は構わず尋ねました。
「この川はもともとこんなに細いんですか? 河原がこんなに広いのに」
しばらくの沈黙が重かったのを覚えています。
やがて、理子さんは「関係ないんじゃないですか」とつぶやいたうえで、こう答えてくれました。
「この川は、雪解けで水が増えても、こんなものです。でも、もともとはもっと水量が多くて、この河原一帯に流れていたらしいですね。今でも、大雨が降ると、河原は水に浸かります」
不愉快そうな口調が、そのときはたいへん不思議に感じられました。まるで、川の流れに責任があるのを追及されているかのような、そんな口ぶりでした。
しかし、川の増水をイメージしたとき、思い浮かんだ曲がありました。
質問されてから随分経っていたので、理子さんがきょとんとしたのも無理はありませんが、あのときの表情は忘れることができません。無表情で、声を押し殺したように話す理子さんに、あんなとぼけた顔つきができるとは思わなかったのです。
そこで僕は、「あの」と手を挙げてみました。まるで野外学習に来た小学生のように。
「何ですか」
そう答えた理子さんの口調は、たまたま虫の居所が悪かった引率の先生のように不愛想でしたが、僕は構わず尋ねました。
「この川はもともとこんなに細いんですか? 河原がこんなに広いのに」
しばらくの沈黙が重かったのを覚えています。
やがて、理子さんは「関係ないんじゃないですか」とつぶやいたうえで、こう答えてくれました。
「この川は、雪解けで水が増えても、こんなものです。でも、もともとはもっと水量が多くて、この河原一帯に流れていたらしいですね。今でも、大雨が降ると、河原は水に浸かります」
不愉快そうな口調が、そのときはたいへん不思議に感じられました。まるで、川の流れに責任があるのを追及されているかのような、そんな口ぶりでした。
しかし、川の増水をイメージしたとき、思い浮かんだ曲がありました。
質問されてから随分経っていたので、理子さんがきょとんとしたのも無理はありませんが、あのときの表情は忘れることができません。無表情で、声を押し殺したように話す理子さんに、あんなとぼけた顔つきができるとは思わなかったのです。