冷酷な罠

文字数 458文字

 ヤカンでお茶を出すための火をかけていた、カセットコンロのボンベが破裂しましたね。
 あのとき、周りには誰もいなかったので怪我人はありませんでしたが、近くに遭った新聞紙に引火したので、役場から職員が駆けつけて消火器を掛ける騒ぎになりました。
 町内会長さんが平謝りに謝り、町の大事な行事ということで神楽そのものにお咎めはなかったようですが、その日の練習は中止になりましたよね。
 あの後、カセットコンロを持ってきた大人が町内会長さんに大声で怒鳴られていましたが、あれは故障したものを使ったせいではありません。
 こう言えばもう、察しはつくでしょう。
 やったのは、豹真です。
 当日用のアンプまでは設営できないので、横笛の音は、僕たちが練習しているそばで豹真がラジカセから流していました。
 理子さんには聞こえなかったかもしれませんが、あの時、豹真はとあるプロ野球チームの応援歌を口ずさんでいました。
 
  ……夢を、ほーむらン……。

 爆発は、その瞬間でした。豹真は、歌の文句に混ぜて「ほむら」を使ったのです。
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登場人物紹介

檜皮和洋(ひわだ かずひろ)

 父と共に不思議な力を秘めて流浪する少年。頭はそこそこ切れるが引っ込み思案で、自分も他の人も傷つけるまいという思いから、重大な決断からはつい逃げてしまう。

 しかし、追い詰められたときに発する力は、大気をも震撼させる。

樫井豹真(かしい ひょうま)

 超自然の力と屈折した思いを秘めた、小柄ではあるが危険な少年。冷酷非道に見えるが、心のうちには自分の力への誇りと、同じ力を持つ者たちへの熱い思いが秘められている。

刀根理子(とね りこ)

 冷淡な言葉の裏に、激しい上昇志向を秘めた少女。自分には厳しいが他人にも厳しく、年長者にも妥協しない。

 物静かだが。判断は早く、行動力にあふれている。時機を捉えれば、最小限の手間でやるべきことをやり遂げる

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