春を告げる歌声
文字数 595文字
翌朝、公民館に向かった僕は、通り道のあちこちにある桜の枝で、つぼみが膨らんでいるのに気づきました。
もうすぐ咲くのだ、と思うと気が軽くなり、僕は自然と走り出していました。
おかげで、公民館に早く着きすぎてしまったことといったら!
それほど肌寒くもなくなった朝の空気の中で一人ぼっちでいると、そこへいつものトレパンにヤッケ姿の理子さんがやってきました。
昨日はどうも、と挨拶しても返事がありません。背中を向けて、僕のほうを見ようともしないのです。何か怒っているのかと思いましたが、もうそれほど気にもなりません。僕も春の色に染まりかかっている朝の空を見上げていました。
町内会長さんは、なかなかやってきませんでした。無言のまま二人で立っているのも気づまりで、何か話しかけようかと思い始めたとき、理子さんが鼻歌を歌っているのが聞こえました。
理子さんが、鼻歌なんかを。
思わず振り向くと、理子さんも僕をちらっと見たところのようでした。慌てて目をそらしましたが、理子さんも多分、そうしたんでしょう。
勇気を振り絞って聞いてみました。
「それ、なんて曲ですか?」
曲名は答えずに、理子さんは詞を付けて歌い始めましたね。
英語でしたが単純な歌詞だったので、聞いただけでだいたいの意味は取れました。
つらく寒い冬の果てに、春の陽が差してくる。
四字熟語で言えば、「一陽来復」。
もうすぐ咲くのだ、と思うと気が軽くなり、僕は自然と走り出していました。
おかげで、公民館に早く着きすぎてしまったことといったら!
それほど肌寒くもなくなった朝の空気の中で一人ぼっちでいると、そこへいつものトレパンにヤッケ姿の理子さんがやってきました。
昨日はどうも、と挨拶しても返事がありません。背中を向けて、僕のほうを見ようともしないのです。何か怒っているのかと思いましたが、もうそれほど気にもなりません。僕も春の色に染まりかかっている朝の空を見上げていました。
町内会長さんは、なかなかやってきませんでした。無言のまま二人で立っているのも気づまりで、何か話しかけようかと思い始めたとき、理子さんが鼻歌を歌っているのが聞こえました。
理子さんが、鼻歌なんかを。
思わず振り向くと、理子さんも僕をちらっと見たところのようでした。慌てて目をそらしましたが、理子さんも多分、そうしたんでしょう。
勇気を振り絞って聞いてみました。
「それ、なんて曲ですか?」
曲名は答えずに、理子さんは詞を付けて歌い始めましたね。
英語でしたが単純な歌詞だったので、聞いただけでだいたいの意味は取れました。
つらく寒い冬の果てに、春の陽が差してくる。
四字熟語で言えば、「一陽来復」。