図星というのか何というのか

文字数 403文字

 さて、その日の練習は、それまでとはうって変わって調子よく終わりました。
大人たちが上機嫌の町内会長と帰った後、僕はそれとなく理子さんを探しましたが、あなたはいつの間にかいなくなっていました。
 一方の豹真はというと、施錠された公民館の前でまだ理子さんを探していた僕を呼び止めました。
「探してるのか、刀根理子」
 僕は答えませんでした。胸はドキリと鳴りましたが、僕の気持ちを教えてやる義理などありません。
 帰ろうとすると、豹真は僕の手から傘をもぎ取りました。
「何するんだ!」
 相手にしないつもりが、つい怒鳴ってしまいました。豹真はあのいやらしい笑いを浮かべて、傘を返しました。
 それを差して帰るのが何だか癪に触って、僕はその場から動きませんでした。代わりに豹真が、自分の傘を差して行ってしまいました。
 少し距離が開いたところで、背中を向けた豹真の声が聞こえました。
「好きなんだろ、刀根理子が」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

檜皮和洋(ひわだ かずひろ)

 父と共に不思議な力を秘めて流浪する少年。頭はそこそこ切れるが引っ込み思案で、自分も他の人も傷つけるまいという思いから、重大な決断からはつい逃げてしまう。

 しかし、追い詰められたときに発する力は、大気をも震撼させる。

樫井豹真(かしい ひょうま)

 超自然の力と屈折した思いを秘めた、小柄ではあるが危険な少年。冷酷非道に見えるが、心のうちには自分の力への誇りと、同じ力を持つ者たちへの熱い思いが秘められている。

刀根理子(とね りこ)

 冷淡な言葉の裏に、激しい上昇志向を秘めた少女。自分には厳しいが他人にも厳しく、年長者にも妥協しない。

 物静かだが。判断は早く、行動力にあふれている。時機を捉えれば、最小限の手間でやるべきことをやり遂げる

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み