日御子(ひのみこ)の祝詞
文字数 545文字
もちろん、慣れない昔の言葉の羅列をいきなり声にしろと言われて、できるものではありません。
怪我の功名というのか何というのか、結局「なんじ」の「んじ」は呑み込んで、「な」でつっかえてしまったのですが……。
何が起こったのか分からない上に赤っ恥をかかされ、おろおろしている僕。
そのうえ、紹介されたのは、目の前で僕をじっと見ていたあなたでした。
折り畳みのパイプ椅子に腰かけている、真っ赤なトレパンに白いトレーナー、その上にどぎついピンクのヤッケを羽織った姿はあか抜けないものでしたが、正直、うろたえました。
なぜかは、書けません。あのときの気持ちを表現できる適当な言葉が見つかりません。
今でさえできないのですから、その場で何も言えなかったのはしかたがありません。
そんなの言い訳、とお思いでしょうが。おそらく。
僕を更に追い詰めたのは、あなたの第一声でした。
「これで高校二年? 小学生の方がまだマシですね」
そう冷たく言うあなたはどう見ても僕より年下にしか見えなかったのですが。
「リコちゃん、それはどもならんて」
町内会長さんの情けない声で、であなたの名前が「とね・りこ」というのだと察しがつきました。「とね」を刀祢と書くのか、刀根と書くのか分かりませんでしたが。
怪我の功名というのか何というのか、結局「なんじ」の「んじ」は呑み込んで、「な」でつっかえてしまったのですが……。
何が起こったのか分からない上に赤っ恥をかかされ、おろおろしている僕。
そのうえ、紹介されたのは、目の前で僕をじっと見ていたあなたでした。
折り畳みのパイプ椅子に腰かけている、真っ赤なトレパンに白いトレーナー、その上にどぎついピンクのヤッケを羽織った姿はあか抜けないものでしたが、正直、うろたえました。
なぜかは、書けません。あのときの気持ちを表現できる適当な言葉が見つかりません。
今でさえできないのですから、その場で何も言えなかったのはしかたがありません。
そんなの言い訳、とお思いでしょうが。おそらく。
僕を更に追い詰めたのは、あなたの第一声でした。
「これで高校二年? 小学生の方がまだマシですね」
そう冷たく言うあなたはどう見ても僕より年下にしか見えなかったのですが。
「リコちゃん、それはどもならんて」
町内会長さんの情けない声で、であなたの名前が「とね・りこ」というのだと察しがつきました。「とね」を刀祢と書くのか、刀根と書くのか分かりませんでしたが。