言霊使いの掟
文字数 650文字
肌に熱いものが感じられて、ふと身体を見渡せば、うっすらと煙が立っています。
祭文の意味と豹真の力は、そこで分かりました。
火の立つや、火の立つや、一・二・三・四、炎立つ……。
何もないところに火を起こす。
たぶん、そのキーワードは「ほむら」……。
その時思ったのは、僕が父に言霊を鍛えられてきたように、豹真も亡き父親から同じように育てられてきたのだろう、ということです。
そうなると、自分の身体に火が点きかかっていることの恐怖よりも、またそうしている豹真への怒りよりも、むしろ同情や憐れみのほうが強く感じられました。
しかし、それが豹真に伝わるわけはありません。
「使え! お前の言霊! 大火傷するぞ!」
きな臭い匂いの中で、僕は叫びました。
「やめろ! 言霊使い同士は闘っちゃいけないって、知らないのか?」
それが僕たちの掟です。互いに傷つけあって、共倒れにならないための。しかし、豹真はそれを軽く笑い飛ばしました。
「そんなもんがあったかもしれんな。俺はずっと一人でこうしてきたから関係ない」
ぞっとしましたが、聞かずにはいられませんでした。
「言霊使いでない人にまで?」
楽しそうな笑い声が返ってきました。心からの笑いだったでしょう。
「そうさ、バカはいくら傷ついてもいい!」
あの甲高く耳障りな声は、今になっても忘れることができません。豹真は舞い上がっていました。生まれて初めての、言霊使い同士の戦いに。
「さあ見せろ、お前の言霊! 使わなければ焼けて死ぬぞ!」
祭文の意味と豹真の力は、そこで分かりました。
火の立つや、火の立つや、一・二・三・四、炎立つ……。
何もないところに火を起こす。
たぶん、そのキーワードは「ほむら」……。
その時思ったのは、僕が父に言霊を鍛えられてきたように、豹真も亡き父親から同じように育てられてきたのだろう、ということです。
そうなると、自分の身体に火が点きかかっていることの恐怖よりも、またそうしている豹真への怒りよりも、むしろ同情や憐れみのほうが強く感じられました。
しかし、それが豹真に伝わるわけはありません。
「使え! お前の言霊! 大火傷するぞ!」
きな臭い匂いの中で、僕は叫びました。
「やめろ! 言霊使い同士は闘っちゃいけないって、知らないのか?」
それが僕たちの掟です。互いに傷つけあって、共倒れにならないための。しかし、豹真はそれを軽く笑い飛ばしました。
「そんなもんがあったかもしれんな。俺はずっと一人でこうしてきたから関係ない」
ぞっとしましたが、聞かずにはいられませんでした。
「言霊使いでない人にまで?」
楽しそうな笑い声が返ってきました。心からの笑いだったでしょう。
「そうさ、バカはいくら傷ついてもいい!」
あの甲高く耳障りな声は、今になっても忘れることができません。豹真は舞い上がっていました。生まれて初めての、言霊使い同士の戦いに。
「さあ見せろ、お前の言霊! 使わなければ焼けて死ぬぞ!」