皮肉と居直り
文字数 507文字
僕は、帰り際に豹真を呼び止めました。
「何であんなことやったんだ! あのおじさん関係ないだろ!」
豹真はしれっと答えたものです。
「俺は人助けをしたつもりなんだけどな」
まかりまちがって雷を呼んでしまっても困るので、なるべく冷静に話しかけたつもりだったのですが、さすがに怒りがこみ上げてきました。
「誰が助かったんだよ、誰が!」
お前がさ、と鼻先に突きつけられた人差し指を、手の甲で弾くように押しのけると、豹真は口元を歪めて笑いました。
「あのまま行けば、町内会の皆さんの時間を食いつぶし、刀根理子にはバカにされ、役場に来る人の前で午前中いっぱい、いい晒しものだぜ」
そんなのは言い訳だと思いましたが、ここまでしゃあしゃあと言い抜ける豹真を追及するだけ無駄です。
だから僕は、努めて冷静に言いました。
「来年は君がお世話になるかもしれない人たちだってこと、忘れないようにね」
毎年交代なのだから、いかに小柄とはいえ、お鉢が回ってくる可能性は充分あるのです。
この皮肉が通じたのか通じなかったのか、豹真は僕をおいて駐車場を駆けて行きました。
こう言い捨てて。
「来年も、この調子で切りぬけてやるさ」
「何であんなことやったんだ! あのおじさん関係ないだろ!」
豹真はしれっと答えたものです。
「俺は人助けをしたつもりなんだけどな」
まかりまちがって雷を呼んでしまっても困るので、なるべく冷静に話しかけたつもりだったのですが、さすがに怒りがこみ上げてきました。
「誰が助かったんだよ、誰が!」
お前がさ、と鼻先に突きつけられた人差し指を、手の甲で弾くように押しのけると、豹真は口元を歪めて笑いました。
「あのまま行けば、町内会の皆さんの時間を食いつぶし、刀根理子にはバカにされ、役場に来る人の前で午前中いっぱい、いい晒しものだぜ」
そんなのは言い訳だと思いましたが、ここまでしゃあしゃあと言い抜ける豹真を追及するだけ無駄です。
だから僕は、努めて冷静に言いました。
「来年は君がお世話になるかもしれない人たちだってこと、忘れないようにね」
毎年交代なのだから、いかに小柄とはいえ、お鉢が回ってくる可能性は充分あるのです。
この皮肉が通じたのか通じなかったのか、豹真は僕をおいて駐車場を駆けて行きました。
こう言い捨てて。
「来年も、この調子で切りぬけてやるさ」